10 更に経験者に学ぶ
「また、お願いすると思います!」
結局、依頼目標の五匹のゴブリンのうち四匹はハゲ頭が倒した。
結果として手に入ったのは、差し引き1,000Gの報酬とハゲ頭から仕入れた情報。
「おう。そんときゃヨロシクな」
さて、次は、と。
◆
「魔法はね、使う人間を選ぶの。どんな時も冷静に対処できる、そう言う人間じゃないと上手く扱えないわ。
自信がないなら止めたほうが自分のためね」
彼女はメレーナ。
ギルドに居た中で一番高額な魔法使いだ。
彼女を雇用し、先程と同じ様にゴブリン退治である。
目的はもちろん情報。
「なるほど」
「使い方を間違えると、味方を巻き込む。ちゃんと力の配分を考えないとMP切れになる。ただ振り回していれば良いだけの武器とは違うの」
「勉強になります」
厚化粧でごまかしてはいるが、そこそこの齢だろう。
しかし、ゴブリンを一撃で火だるまにし消滅させる程の実力者だ。
そして、コーダと同じく、首に入れ墨が入っている。
「魔法は、火、水、風、土の四系統。ま、どれか一つ、多くても二つに絞ったほうが良いわね」
「何故です?」
「数多くとっても使いこなせないからよ」
熟練度的な問題か。
「ちなみにメレーナさんのオススメは?」
「火ね」
「どうして?」
「派手だからよ」
なるほど。
ちなみにこのババアがペラペラと喋っているのには訳がある。
耳聡くコーダから俺の事を聞き出していたらしく、町を出るなり情報料を要求されたのだ。
ま、払ったけど。
「それぞれどんな特徴が有るんですか?」
「水は、氷で攻撃する魔法が多いわね。綺麗よ」
「ほう」
「土は地味ね。岩を飛ばしたり、岩で防いだり、落とし穴を作ったり」
「ほう」
「風は、矢から守る魔法とかしかなくてあまり使う人はいないわね」
不遇魔法か。
「でもね、昔、風の魔法使いの大賢者が風を身にまとって空を飛んだって言う伝説が有るわ。
雷も操れたかしら?」
……何!?
ちょ、やめて。そんなことされたら俺のLP9の価値が大暴落しちゃう!
「まぁ今は使える人は居ないから、眉唾ものだけど」
「他に魔法って無いんですか?」
「あとは、古代魔法って言う失われた魔法。それと竜魔法。封印された禁呪とかが有るわ。あとは、伝説の魔王の力とか。もちろん、どれも誰でも使える訳じゃないけど」
「それは、どうすれば使えるんですか?」
「教える訳無いじゃない」
「えー、教えて下さいよ」
「それより、ほら、ゴブリンが出たわよ。一匹くらい仕留めなさい」
「あ、はい」
結局、肝心の所は教えてもらえなかった。
次はもう少し金を積んでみるか。
◆
「そうだ。回復魔法じゃ無くした部位は再生できない」
三人目。
回復魔法の使える人、ということで選んだジェーチと言う名の弓使い。
彼も首に入れ墨。
これはもしや奴隷の印なのか?
「方法はあるんですか?」
「そうだな。聖職者が使う神聖魔法なら出来るな」
神聖魔法か。
しかし。
「聖職者、というと、それなりの修行が必要?」
「そうだ」
「ですよね」
「まあ、寄付をして教えてもらうって手もあるがな」
「寄付、ですか」
全ては金か。
世知辛い世の中だ。
「ま、安い額じゃないけどな。聞いた話だと」
「それはそうですよね」
「そういう訳だから、深手を負う前にとっとと逃げるのが正解だ」
「なるほど」
命は金より重い。
彼らはそう言う生き方をしてきた連中だ。
ま、間違ってないと思うけど。
「とは言え金もそれなりに大事だ。ほれ、前からカネヅルがやって来たぞ。俺は後ろから援護するから適当に引きつけろ」
「了解です」
ゴブリンが三頭やって来る。
俺は槍を手に慎重に近づいていった。
◆
そうやって、依頼をこなしつつ傭兵から情報を得る。
その結果、レベルとギルドランクが上がり、レベルは4に、ギルドランクはΓになった。
◆
夜の日は、配達の依頼で周りの島を飛び回り金を稼ぐ。
ギルドランクのアップとともに、同時に受けれる依頼の数も4つに増え更に効率よく金を稼げるようになった。
昼の日は、適当な討伐依頼を受け、傭兵から情報を得る。
◆
「強い敵? そりゃ間違いなく不死者だな」
再び、情報を得るべくハゲ頭を雇う。
「不死者?」
「ああ。あいつらに普通の武器は効かねぇ。魔法もな」
「魔法も?」
「高位の神官様が神聖魔法を使ってやっと退治できるような代物だ。ただ、まあ滅多にお目にかかるもんじゃない。あいつらが出てきただけで国が滅ぶような代物だ」
「国が?」
「ああ。そういう話がいくつも転がってる。たから、不死者が出ようものなら連合軍を組んででも追い払う。ま、ここ数十年はない話だが」
ふむ。
ラスボス的な?
まさかね。
◆
「港の存在しない島が幾つかあるの。その一つに、ピクシスって島があるわ」
「ピクシス?」
「かつて、この世界で初めての王国があったと言われる島よ」
ババアには金を渡し、情報を買う。
「その島に古代魔法が眠っている。そう言われているわ」
「でも、港が無いんじゃ行けないですよね」
「そうなの。でも、お金は返さないわよ」
いえいえ。十分価値のある情報です。
俺は行けそうですからね。
とは言え、一人だと危ないだろうな。
◆
「タウルスには、闘技場がある。たまに闘技大会が開かれるな。まあお前には当分縁のない話だろうが。
トリアングルム・アウストラレには、きれいな湖があってな、水着を着た連中が羽休めによく訪れる。
クラデルには、旨い酒がある。いくら飲んでも二日酔いにならないいい酒だ。
アウリガには、カジノがある。そして、夢がある。
ヴィルゴには、男が喜ぶような店がいっぱいある」
あちこち行って回ったという弓使いから、島々の特徴を聞いているわけだが主に、呑む打つ買うの話ばっかりだ。
ま、ところどころ参考にはなる。
しかし、男が喜ぶ店かぁ……。
どうすればこの体で喜べるだろうか……。
◆
夜は配達業で稼ぎつつ島々を見て回る。
そして、再び昼が訪れる。
◆
「これか? 奴隷の証だよ」
首のタトゥーを指しながら、ハゲ頭が苦々しい顔をする。
今まで雇った三人が三人、同じ紋様の入れ墨を入れているのだ。お洒落という事は無い。そう思い聞いてみたのだが。
「万が一、契約に反したら、こいつが燃え上がって胴と首を切り離す」
そいつは物騒だ。
「まあ、自業自得、ボヤいても仕方無いんだがな。
……実はな、ギルドの仲間でよく一緒に仕事してた女が居てな」
いや、聞いてないから。
勝手に身の上話始められても困るんだ。
「そいつは、女手一つで子供育てながらギルドの荒仕事をこなしててな。
ある時、高価な宝石の配達の依頼を受けた。
そしたらよ、その依頼の途中で女が言う訳だ。
息子が攫われて脅されている。宝石を持っていかなければならないってな。
涙ながらに訴えるのが堪らなくてなぁ、結局宝石は俺が盗んだ事にした。
その結果がこれだ」
そう言って、誇らしげな表情を浮かべやや遠い目をするハゲ頭。
アンタ、多分騙されてるぜ。
◆
「下の世界? アンタ変な事に興味持つのね」
変な事とはどう言う事だろうか。
「下には何も無いわ」
「何も無い?」
「そう。そしてそれを確かめた人間も居ない」
確かめた事が無いのに何も無いと言う。
何だそれ。謎掛けか?
「毒の海があって、その風に飛空艇が捕らわれると二度と浮かぶ事が出来なくなる。
これは、飛空艇乗りの言い伝え」
「飛空艇乗りの」
「飛空艇乗りは、バカばっかりだからアテにならないけどね。
自分の命を顧みない様なバカばっかり」
何かを含んだ様なババアの物言い。そして遠い目。
もう、過去語りは結構ですんで。
◆
「そりゃ、飛空艇を買う事だ!」
弓使いにこの世界の楽しみ方を聞いてみた訳だが。
「飛空艇で自由に空を駆け、未知の島でお宝を漁り、美味い酒を飲んで良い女を抱く。
どうだ! 一緒に行かないか!?」
行かないかって、アンタ奴隷だろ?
◆
結局、五日程この島で過ごした訳だがそろそろ潮時かもな。
奇妙な冒険者である俺に、傭兵達は有りもしない淡い希望を抱き始めている様に見える。
これ以上懐かれる前に去るとしよう。
情報は十分集まった。
その情報も活かさなければ意味が無い。
さらば。
プラエキプア。
露天風呂は中々の眺めだった。
飯はあんまり美味く無かったけど。
ハルシュ Lv.5
筋力値:7
魔力値:7
敏捷値:7
装備:
【アイアンスピア】
【革鎧】
セットスキル:
├[1]【飛行】Lv.1
├[2]【槍】Lv.1
├[3]【回復】Lv.1
├[4]【観察眼】Lv.1
├[5]【夜目】Lv.1
└[6]【離脱】




