告白の答え
ボクの心臓は破裂してしまうのではないかと激しく鼓動を繰り返し。
差し出した右手はうっすらと汗じみ始め。
下を向く顔なんかはもう信じられない程熱い。
でも、心は何故かうきうきしていた。
我ながらおかしいと思う。
初めての恋――一目惚れをしているとはいえ。
断られた時の事も頭に思い浮かぶのに、変わらず心は踊っていた。
これは恋愛どころか恋心を抱いた事さえなかったボクでさえ知っている恋の症状。
こんなに胸は暖かいのに体は烈火のように熱い。
心の熱を包み込む物だとしたら、体の熱は自分自身を燃やして活力に変えているようにも思えた。
相手が好きという自分を自ら燃焼せて得られた恋の活力は現在進行形で、高まりを続けていた。
断られてもいい――。
ただ、彼女が好きなんだ――。
それを伝えたい――
例え振られてもこの気持ちは変わらない――。
でも、それは振られたらボクの胸の中に一生秘めておく物――。
いくら相手が好きでもそれだけじゃダメなんだ――。
ボクは相手にも僕を好きでいてもらいたい――。
それが本当の意味のお付き合いだし、一方的な恋慕は歪でいつかひずみが出ると思えた。
ボクは彼女の心が欲しい。
例え受け入れられても出会ったばかりの男に、心を傾けてくれるわけがないけど。
分かっていても求めてしまう。
恋は盲目と言うけれど今ならその意味が分かる。
ボクの初めての恋の心は僕の体に自由を奪う。
ボクの体は彼女が好きって気持ちで支配されたんだ。
それはとても幸せで気分がよい体験だった。
恋のすり鉢で静かに自分の全てを擦り合わせ、彼女への想いを募らせるような時間が過ぎていく。
もう時間の感覚が分からなかった。
長い時間が過ぎたようにも思えたし、短い時間だったかもしれない。
体の感覚は全くあてにならず。
体は恋の心で燃えゆく。
言い知れない時が過ぎた――。
――右手にひんやりとした感触が染み渡る。
そのひんやりとした物にボクの熱が流れていく。
ひんやりした物は段々と熱を帯び熱くなって――。
ボクは驚いて目を見開き右手を見る。
右手に見えたのは右手を挟み込むように握る褐色の両手。
誰かなんて決まっている。
ボクは彼女の柔らかさな腕の曲線を上に辿った。
彼女は――。
「――よろしくお願いします。私の旦那様」
笑う彼女はとてもきれいで魅力的だった。
ボクはその笑顔を見てさらに彼女を好きになる事が出来た。
僕の最初で最後の初恋と初告白はこうして終わり。
僕たちの道はこうして始まったんだ。




