ピクティア
私はピクティア。
人間世界でいう所のランプの魔人なんかをやっている。
これまでの敬意は語るに涙というほどでもなくて。
人間世界で言う所の成人の儀。
一人につき原則願い事は二つ、計百個の願いを叶えれば魔人界に帰れると言う。
どこかで聞いた事のあるような行事だ。
私はこれまで五十人のご主人様の願いを叶えてきたけど。
でも、まだ終わりじゃない。
最後となるはずだったご主人様が願いを譲ったのだ。
確かに願いの譲渡は可能だけど、実際に使う人に初めて出会った。
人間は強欲で滅多に人のために願いは使わないというけど。
そのご主人様自分に願いよ他者の願いを取ったのだ。
考えついてもそうできる事じゃない。
願いを他者に叶えてもらう権利は誰しもが望む物。
夢は自分で叶えるが最良だけど。
世の中そう簡単じゃない。
それは誰しもが知っていて魔人である私だって叶えたい夢がある。
奇跡や魔法があっても願いをずっと手中に収められるとは限らない。
魔法も奇跡だって限界がある。
魔法が使える魔人族なら誰でも知っている事だ。
誰しも願いを叶えたいし夢を手中でずっと捕えたい。
そんな権利を五十人目のご主人様は手放した。
魔法は人間界の事柄なら大体の願いを叶えられるのに。
私も不思議に思って説明はしたけど、自分の願いより相手の願いを叶えてほしいといって権利を譲ったのだ。
そのチャンスを譲られた最後のご主人様。
人間界で叶える最後の願いはなんだろうとランプの中でずっと考えていた。
そして――現状。
『僕と結婚を前提としてお付き合いをしてください』
私は初対面の異性に告白をって――えぇえええええええええええええ!?
予想外だった。
予想外すぎた。
こんなに予想なんてできるわけがない。
結婚とは女の子の憧れ。
女の子なら誰しも一度は憧れを抱く人生の一大イベント。
お付き合いとは結婚した時の相性を確かめる前哨戦。
そ……それを直球で求めるなんて……。
ど……どうしよう。
男子というよりも男の子という感じの似合う可愛い見た目のご主人様。
そんな子が漫画なんかでしか見たことない告白を私にしているのだから。
女の子として考え深く考えてしまう。
「な……なんで私なんですか?」
動揺する私は何とか言葉をひねり出した。
でも、私は彼の気持ちを疑っていたわけじゃなかった。
本当になんで私なのかが疑問だった。
その力強い返答は今でも耳に残っている。
「一目ぼれです!」
たった一言。
その声には確かな感情がこもり、映画やアニメでみたどの告白より力強い。
私の返答は決まり掛けていたけど。
私はあえて魔法を使った。
その魔法は相手の心の状態を見透かす魔法。
これは恋に失敗したくない女の子の気持ちから生まれたともいえる魔法。
ちょっと卑怯な気がするけど。
願いとしてかなえる以上、判断を間違えばお互いに傷ついてしまうのだ。
これぐらいなら恋の神様だって許してくれる気がする。
私は魔法を使う。
その日私は最後のご主人様――空の心を見透かした――。
すこし変わった私達二人の出会いは――。
予想外の方向に転がる事になる――。
結果で言えば私どこまでいっても女の子だった――。
愛する人を求める一人の女の子だったのだ――。
掴んだ感じがあるのに結果は振わず。