出会いと告白
「…………」
ボクは無言でパタンと携帯を閉じた。
これはある意味正しい行動だと思えるけど。
僕は気付かなかったんだ――。
この意味不明メールが僕の始まりだって事を――。
「何か届いてる」
ボクが家につくと見慣れた緑のポストに茶色の何かが投函さえている。
母さんの仕事の大半は海外での仕事だからオミアゲと称して様々な物を送ってくるので、僕の家のポストは少し大きめだ。
そんなポストに茶色い何か。
とりあえずそれを取り鞄から鍵を取り出し玄関を開け家に入る。
遠目から見たら新品のレンガに見えそうな包装紙に包まれた何かを眺めてみるけど。
どこにも宛先は記載されていない。
茶色い包装紙は丁度レンガ一ブロックほどの大きさと形で中身は予想が難しい。
ボクが玄関先の廊下で包装紙を破こうとすると携帯がプルル。
あっ……そういえばマナーモードにしてなかった。
うちの学校は電源を切っているなら形態の持ち込みは可。
まぁ形態の意味を成していないけど持ち込みがだめよりはいくらかマシ。
そんなことを考えつつ携帯を開き画面を確認着信を取った。
「…………母さんこれなに?」
「ふふふふふ、空、あなたへのプレゼントよ」
「プレゼント?」
これが? 一見配達された小包の類に見えなくもないけど。さっきから宛先を探しているけど欠片もなくしっかり紙に包まれている。わざわざこれを置きに来たってこと……昨日電話が来た時は日本から飛行機で一日かかる場所だっていたったけど。どうやってだ?
「あんた恋が知りたいって言ってたじゃない。だから私からのプレゼントよ。
ああ、でも恋愛ゲームで我慢しろなんて残酷な事言う気はないから、包みを破ってみなさい」
「包みを……」ボクは茶色包みの端を摘まみ破る。
恋とは何だろう。
恋心とは何だろう。
恋と言えば時に甘酸っぱくビターチョコのようにほろ苦い――らしい。
心が感じる甘酸っぱさ。
ほろ苦い大人の味。
恋は心で味わうというけれど。
未だ恋を心で味わう感覚器官を持たないボクには完全に未知の領域。
古今東西様々な物語に登場し、多くの人を虜にする恋愛劇。
その作品作風は多岐に渡り、学生同士、社会人同士、そこそこ年月を重ねた大人同士。さらに同性物。果ては人外なんてものもある。
共通するテ―マは同じでも人が違えば立場が違えば多種多様のそれぞれの魅力的な色めきを見せる。
それがボクが知りたい恋という物――心の色めき。
当然、物語のほとんどの物は想像の産物の作り話だけど。
想像の産物だからこその魅力もある。
人間は自分にない物を求め。
自分が知らない物を知りたいと思う。
これは人間なら誰しも大小はあれど持っている感情でボクの場合は恋と言う感情というわけで。
その求める存在がこの茶の包みの中にあるといのだから。
期待感で指に力が入る。
でも――中身は予想外の物だった。
「なにこれ?」
「何ってランプよ。ランプ」
茶色の包み紙からできてきた物は、一見水差しにも見えるランプ?
見た感じ本格的カレー屋さんのカレーを入れる容器によく似ていた。
色は金色で艶があり装飾はないけど高級感を感じさせるもので、
ランプ――光源としては少しばかり高級なセレブリティ感じる明らかに、一般庶民を自称するボクと釣り合わない物だった。
「さあ――空、ランプを三回擦ってみなさい。彼女を呼び出すのよ」
擦る? 呼び出す? 深まる謎。
ボクは三回ランプをゆっくり擦る。
疑問がなかったわけじゃない――。
行動の意味を分かっていたわけじゃない――。
でも、なんだかドキドキした――。
新しいクラスに初めて行くようなドキドキとも――。
何か新しい発見をする前兆のようなドキドキとも――。
悪戯を仕掛けた時の幼い頃のドキドキとも違う――。
不思議なドキドキ。
そして手に伝わるひんやりとした感触。
ランプの表面は思ったよりすべりがよく。
対した抵抗もなく三回指が往復する。
――暫しの沈黙。
数呼吸ほどの間を置いてだろうか。
鮮やかな紫の煙が噴き出したんだ。
僕は驚いて手に持っていた携帯とランプを放り上げた。
紫の煙は瞬く間に僕の視界を満たす。
僕は忘れないこの光景を――。
紫の煙は見かけと違って煙たさは全くなかったけど。
満たされた煙の中に人影が一つ。
煙がはれかけるとその人物は言葉を放つ――。
「私は魔人ピクティア――」
初めて出会った彼女はとても魅力的だった――。
ボクの心には求め続けた物が灯る――。
「願いをどうぞ。ご主人様――」
その日ボクは求め続けた物を得た――。
「私に叶えられる願いを一つだけ叶えましょう」
心に求め続けた灰色の世界の色めきを――。
ボクの体と口は自然と動いた。
「ぼ……僕と結婚を前提としたお付き合いをしてください!」
ボクはあふれる想いを抑える事がその時出来なかった。
ボクはその日生まれて初めて恋をした。
ランプから現れた不思議な少女――ピクティアに。
ボクの灰色の世界はその日から色めき得て僕の本当の人生が始まった。
今思えばずいぶん重い告白と共に……。