母さん
「やっほ! 空! 我ながらナイスタイミングね!」
そこにいたのは僕の母親青五恵実。
相変わらずのラフな服装に見慣れた黒髪のセミロング。
肌や髪の毛はいつもと同じく艶やかで手入れをほとんどしていないとは思えない。
母さんを見た人からを嘘だとよく言われた物だが、母さんはとてもずぼらで『身だしなみは相手に不快に思われない最低限でいいのよ』と言われて育てられた。
実際母さんが身だしなみに時間を使っていたのは朝以外見たことがない。
休日ではぼさぼさ頭で過ごしていたし嘘はついていないようだ。
そんな母さんがなんでここにいるんだろう?
後一か月は帰らないと前メールしてきたけど。
それに対し母さんは年の割に小奇麗な顔を緩ませピクティアさんに近づき。
「ランプの魔人のピクティアさんよ。自己紹介は済ませたかしら?」
そう顔を綻ばせながら言葉を放つ。
ランプの魔人――その言葉が引っかかる
そういえば大事な事を……ってピクティアさんランプから出てきたよね。
自分で魔人って名乗ってた気が……。
ピクティアさんに出会った瞬間あんなことになったから忘れていたけど。
あれはトリックだとかには見えなかった。
それより魔人ってなんだ?
当然ランプの魔人は知ってるけど。
魔人という初耳のワード。
それを意にかえさず母さんはニヤニヤした顔を崩さずピクティアさんに話しかけた。
「ピクティアさん。この場にいるってことは、空が何か願ったはずよねどんな願いなの?」
その言葉にピクティアさんは頬を染め顔を小さな手で隠し、もじもじながら答えた。
「結婚を前提のお付き合いをお願いされました」
ピクティアさんの言葉に未来は動きを止めた。
僕の目から見てもショックを受けたように見える。
幼なじみの初恋人(結婚を前提)だからな、ショックは大きいか。
「あらま! やるわね空! 今夜はお赤飯(解凍)ね! 予定をかなり前倒しにして帰ってきた意味があったわ!」
母さんが顔を喜びで綻ばすと、魔人? ピクティアさんの背中をぽんぽんと叩き「うちの息子をお願いね」と上機嫌で語り掛ける。
母さん赤飯を炊くのはわかるけど解凍というのはちょっと……母さんのこんな時でも手を抜こうとする癖は直してほしい。
こういう時は母親らしく嘘でも赤飯を炊くぐらいの手間を惜しまないでもらいたい。
そんな中ピクリとも動かなかった未来が突然動き出し、あらん限りの声を発して。
「えっ? 何よそれ~~~~~~~~~!?」