初修羅場
「未来、せめてチャイムならしてから入れって言ってんだろ」
「ごめん、ごめん、私とあんたの仲じゃない」
悪びれる様子もなくずかずかと部屋に入る未来。
全く黙っていれば短髪美少女ポジだって狙えるっていうのがもっぱら噂なのに。
でもこのさばさばした性格が一部で受けているらしい。
まぁ、彼女の男受けの話は今はいいとして彼女とは幼い頃からの幼なじみで気心の知れた仲だけど。
料理はからっきしで彼女が料理を作ると劇物としか形容できない一品ができあがる。
いろんな意味で危険だから、料理を作ってくれる彼女の両親が何かの用事で不在だと、僕が料理を振舞う(強制)事が習慣となっていた。
そんなわけで来たのだろうけど。
今は無理だ。
未来が来ることは完全想定外で二人分しか作っていないし、ピクティアさんと鉢合わせして何か問題があってもな。
幼なじみの片割れに恋人ができると漫画なんかじゃ確実に一悶着ある物だし。
まぁでも未来が僕をそうゆう目で見てるわけがないけどトラブルは少ない方がいい。
そんな僕が口を開くよりさきに未来が先手を取る。
「あら、オムライスが二人分出来てるじゃない。よく私がくるってわかったわね」
「これはお前の分じゃないよ。とりあえず今は帰ってくれ」
正直な考えを述べる僕。
しかし、未来はぽかんとした表情で僕を見つめている。
夕食を定期的にご馳走になっている幼なじみが二人分の食事を用意していていえば、自分の分だと勘違いするのも当然か。
未来に夕食をたかられ始めてもう5年以上たっている。
(いい加減料理を覚えればいいのに)と頭に何度目になるか明からない言葉が浮ぶ。
まぁ教えても毎回入れたがる隠し味が絶望的にセンスがないから、それさえ直せば。
味噌汁の隠し味に餡子とか何を考えてんだと心の底から思ったもんだ。
でもきっと隠し味入れるよな――未来はそういうやつだ。
「なにおかしなこと言ってんの? アンタが料理を振舞う相手なんておばさんか私ぐらいじゃない。まさか噂の三人の少女の一人でも現れたの?」
そう言って未来は「まさかねー」とオーバーに肩をすくめる。
未来の呆れ加減の指摘に僕は少し驚く。
未来はこれっぽっちもそんなことを思っていない加減がひしひしと伝わってくるが、指摘は正解で彼女とお家デート? 中のなのだ。
何が何でも未来には帰ってもらわないといけない。
とりあえず未来に近づき肩に手をかけ後ろに向かせ押し出す未来が何か騒いでいるがそのまま玄関まで押し出す予定だ。
未来の背を押しているとガラガラと戸を開ける音が響く。
方向的にお風呂場しかない。
鉢合わせルートは避けなければ、そう考え未来の背を押す手に力がこもり始めると。
スタスタ足音が聞こえてくる。
未来は僕の態度に困惑の色を隠せないようだ。
現在未来は玄関近くまで押し出すとに成功している後少しという所で。
「空さんお風呂あがりました。ありがとうございますパジャマかしてくれて」
玄関に掛けている時計の音が大きく聞こえる。
僕何と説明すれば。
未来茫然。
ピクティアさんは体から湯気が立ち上り僕のパジャマを着ている少しぶかぶか加減が可愛い。
この状況に顔に疑問符を浮かべているような表情だ。
「空……このエキゾチックな美少女は誰」
わなわなと未来が震える。
どうやらショックを受けているみたいだ。
嫌な予感がひしひしと感じる。
「……僕の彼女です」
「本日より空さんとお付き合いする事になったピクティアです。よろしくお願いします」
ピクティアさんが礼儀正しくぺこりと頭を下げる。
その動きは美麗な物で礼儀作法は、バッチシなようだ。
ここまで完璧に挨拶すればいくら未来でも怒らないだろうと思っていると、未来は僕の襟首をつかんできた――なんで?
「空! 私という者がありながら~!?」
「えっそれどういう……」わけが……わけがわからない。
僕の困惑を他所に未来は僕の襟首を前後に激しく揺する。
一体なんだよこれ。
それに未来が熱っぽく言葉を放った。
「空のにぶちん! 分かんないならわかんなくていいわよ!」
未来がさらによくわからない事を言いだす。
「私という者がありながら」
「にぶちん」
何故かその未来の言葉が胸に引っかかる。
でも違和感の原因がさっぱりわからない。
こんな事は初めてだ。
そう揺れる頭の中で考えていると勢いよく玄関の戸が開かれハイテンションな声が飛ぶ。
「空やったわね! 初修羅場じゃない! この場は私が預かるわ!」
「母さん」そこには僕の母さん青五恵実がいた。
「やっほっ! 空、帰ってきたわよ!」
悪くはないけどまだまだ納得がいかん。
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