ユニコーン
ぼくは、ユニコーン。
白い馬の身体に、ライオンのように長い尾、オスヤギのように立派なあごひげと、そして額には真っすぐに伸びた長い角をもっているんだ。
ぼくは、過去と未来と、さまざまな世界を駆けていく。休むことなくひづめを鳴らしながら走っているぼくの周りでは、いろいろな時代の風景が流れていく。些細な出来事から、歴史を揺るがすほどの大きな出来事まで、生まれては無限に増えていく。決して消えることはない。
ぼくが見てきた世界では、誰もがひだまりのように温かで、優しい輝きを放っていた。そんな場面に出会ったとき、ぼくは何だか嬉しい気持ちになる。その時は決まって、ぼくの自慢の角がきれいな黄金色に輝く。
そして今、ぼくの目の前を五つの光景が駆け巡る。
とても古い時代で、生まれた小さな命があった。
彼女は、その国に暮らしていたみんなから祝福されて生まれてきた。生まれて来られないかもしれないという、大きな試練を乗り越えて。そんな彼女が放つ輝きは、とってもきれいだった。これからどんな大人になっていくんだろう。考えるだけでわくわくする。
とても遠い時代で、新しい星へ向かう男の子と女の子がいた。
生まれた星を離れ、未知の困難が待っているかもしれない状況でも、二人はいっしょに手をつないで前へと進もうとしていた。温かな手と手が生み出す輝きには、ほのかに希望に満ちあふれていて、この二人ならきっと共に乗り越えられると思った。
地球という青く美しい星で、女の子は小さな宇宙人と出会った。
彼女は、四季をその宇宙人とともに過ごした。地球の豊かな大地で育まれた彼女たちの友情は、何物にも代えがたいほどに輝き、美しかった。いつの日か、美しくよみがえった青い星が二人を再びめぐり合わせると、ぼくは心のどこかで信じている。
どこか心の温まる、とっても熱い戦いが繰り広げられていた。
ふたりの男の子が、温泉という狭い場所で熱い戦いを展開させていた。この戦いをしているときの男の子たちの表情は、どこか楽しそうでもあった。きっと、戦いの勝敗よりも大事なものがいっぱいあったのだと、そう感じさせるほどの輝きが二人から見ることができた。
世界の片隅で、ひっそりと暮らすキツネの親子がいた。
彼らは、冬の厳しい自然の中でも、時に助け合い、時に成長しながら生きていた。降り積もる雪の中に見えたほんのり温かな輝きは、長い冬を越え、いつかまた訪れる春を前に新しい輝きを見せるのだろう。不思議とそう思わせられた。
ぼくの角が黄金色に輝く。目の前に温かな輝きを見ることができたから。
時にめでたく、時にふわふわ、のんびり、アツアツ、ひえひえと。すれ違った光景から見て取れた優しい灯りは、きっといつまでもぼくの記憶に残り続けるだろう。
ぼくがこれまで目にした世界の光景は、時に心を温かくさせるようなものもあったけれど、中には辛く、悲しくなるようなものもあった。そんな光景を見たとき、ぼくは少しだけ立ち止まり、高い鳴き声を上げる。その世界の光景に、一筋の希望がさすことを祈りながら。
そして、ぼくは今日も、いろいろな世界の光景を目に焼き付けながら、その中にある希望の灯を求めてひづめを鳴らす。また再び、ひだまりのように心温まる瞬間を求めて。
ぼくは、ユニコーン。
過去と未来と、さまざまな時代を駆けていく。これからも、ずっと――