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空の向こう

こちらも友人の作品を直してみました。

僕は空が大嫌いだ。

他の何より空が嫌い。青空は嫌いで、星空はもっと嫌い。どこまでも続いていく青空が嫌いだから、隠してくれる曇りの日や雨の日は好きだけど、宇宙まで見えそうな星空を隠してしまうので、やっぱり曇りも雨も大嫌いだ。

空から射してくる光だって嫌いだ。

僕たちのことなんて何も知らないで、ただ毎日咲き誇る様に輝く太陽を見ると、僕はいつだって死にそうな心地になった。

暗闇の夜も嫌い。

何にもない空間にたった一人取り残されてしまった気分になって、また死にそうな心地になった。





冷めきってしまったコーヒーを、ソッと音を立てないように置く。

コーヒーは苦い。昔からそう。大人になれば分かるようになるのだと思っていたけれど、『大人』になった今でも、苦いものは苦い。何も変わらなかった。

なんとなく空を見ていた。窓越しに見える青はどこまでも澄んだ色をしていて憎らしい。そういえば、君の瞳も美しい青だった。今日の空は君と同じ色をしている。憎らしいけど、どこか愛しかった。

君は空が大好きだった。いつだってその美しい空色の瞳で、空を、宇宙を見上げていた。太陽の光で、月の光で、果ては光なんてない暗闇の夜でも、空を見つめる君の瞳は他の何よりもキラキラと輝いていた。

僕はその輝きが、君の作るパイよりも好きだった。いつまでも君の隣で、君の空色が輝いているのを見ていたかった。


君は空へ行くのが夢だったっけ。いつか自由になって空を飛ぶのだと語る君は、とても嬉しそうな笑顔で、知らないうちに僕も笑顔になって二人でもっと笑ったのを覚えてる。忘れられない。

僕は君の語る夢を愛していた。もちろん君も。夢を叶えて欲しいと思っていた。

やがて僕たちは大人になって、君は宇宙(そら)へ行くことになった。

君の夢が叶った時、僕は涙を流した。夢が叶ったことが嬉しかった。でも、それだけが理由じゃないことを心のどこかで理解していた。涙はいつまでたっても止まらなかった。


「行ってきます。」なんて、今までにみたことの無い飛びっきりの笑顔。

僕も、負けないよう、涙を溢さないように笑顔で「いってらっしゃい」

再会の約束はしなかった。

だからだろうか。君と話をすることは二度となかった。

君は帰って来なかったのだ。君の大好きな空の向こうで、君は消息を絶った。

悲しみは僕の心に根をはり、一生癒えない傷となった。


今思えば、どこかで気付いていたのかもしれない。それでも、気付かないふりをして君を見送ったのだ。

君は今なお、あの空を旅しているのだろうか。

君は空が大好きだったね。だから、帰りたくなくなったの?

今、君は幸せなのだろうか?いや、幸せなんだろうな。

永遠にあの空から帰ってこない。

君は空になった。




空なんて大嫌いだ。

青空には君の瞳が重なって、星空は君の旅する宇宙を思わせるから。

でも、雨や曇りは君を見失ってしまいそうだから嫌い。

太陽は君を焼いてしまわないだろうか。暗闇は、君に孤独を感じさせないだろうか。

空なんて見たくなかった。

でも、もしもあの空の向こうに君がいるなら、君があの中で幸せなのだとしたら、その空は、きっと悪くはないのだろう。


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