八雲くんと夏目くんと、たまに誰かさん。その3。
八雲くんと夏目くんと、たまに誰かさん。その3。
八雲 「……」
夏目くん 「……」
鏡花姐さん「……うふ☆」
八雲 「……夏目。このお兄さん、だれ?」
夏目くん 「鏡太郎さんだ」
鏡花姐さん「ちょっと、ナッくん! 呼ぶ時は『鏡花姐さん』って教えたでしょ!」
夏目くん 「そうだった。鏡花姐さん」
八雲 「……姐さん?」
鏡花姐さん「初めまして! 君が八雲くん? 話はナッくんから聞いてるわ!」
八雲 「ナッくん? 夏目がナッくん? い、いやそれより何より……。鏡花、お姐さんは……その」
鏡花姐さん「あらやだ怯えちゃって! かわいい!! ナッくん、ちゃんと紹介して☆」
夏目くん 「ゼミの先輩の鏡花姐さん。柔道部のエースだ」
八雲 「へ、へえ……。大きいですもんね」
鏡花姐さん「190センチかしら。小さいころから柔道やっていたから筋肉もついちゃって。でも体は男だけど心は乙女よ! よろしくね! 八雲ちゃん☆」
八雲 「よ、よろしくです……。柔道ってすごいですね。得意技とかあるんですか」
鏡花姐さん「あるわよ~。なんだと思う?」
八雲 「……寝技?」
鏡花姐さん「ぶぶ~。違うわよ~」
八雲 「そ、そうですね。違いますよね。はは。じゃあなんだろう」
鏡花姐さん「足払いからの寝技への連係プレイ」
八雲 「結局寝技かよ!」
鏡花姐さん「やだ。うれしい! やっと突っこんでくれたわ。八雲ちゃんったら緊張してガチガチなんだもの」
夏目くん 「緊張じゃない。怯えているだけだ」
鏡花姐さん「あら、そうなの。オネエは初めて? あ。敬語じゃなくていいわよ。堅苦しいのはキライだから」
八雲 「う、うん。あの、俺、そっち系の人はみんな女の子らしい格好を好むと思ってた。鏡花お姐さんは外見がまんま男の人なんだね」
鏡花姐さん「あら、可愛い恰好は好きよ? でもねえ、体型がねえ。なんせ190センチでしょ? 合う服がないのよ」
八雲 「合う服があったら着るんだ……」
鏡花姐さん「八雲ちゃんはいいわね。小さくて細いから」
八雲 「やめてよ! 俺が気にしていることを!!」
鏡花姐さん「なんで? その体格なら可愛い服を着放題よ? そうだ八雲ちゃん! お買いものに行きましょう! お姐さんが見たててあげる!!」
八雲 「見たてるってなにをー!? 俺はいい!! 夏目を連れて行ってよ!!」
鏡花姐さん「ナッくんはダメよ~。顔は綺麗だけど、でかすぎるわ。いくつだっけ?」
夏目くん 「184センチ」
鏡花姐さん「ほら。これだけ大きいとサイズを見つけるのが大変よ。その点八雲ちゃんは~、うーん。165センチないくらいかしら?」
八雲 「あるよ! 165.3センチだよ!!」
鏡花姐さん「ほら、やっぱりちっちゃい~」
夏目くん 「違うよ! 鏡花お姐さんは165ないと思ったんだろ!? 俺、ちゃんとあるからね!!」
鏡花姐さん「……八雲ちゃんかわいいっ! そんな小さい、どうでもいいところにまでこだわるなんて!!」
夏目くん 「本当にどうでもいいな」
八雲 「どうでもよくないわー!! 二人ともでかいからそんなこと言えるんだ!!」
鏡花姐さん「そうね」
夏目くん 「そうだな」
八雲 「!! ……おまえらなんてキライだ~!」
鏡花姐さん「まあまあ、八雲ちゃん。そんなに怒らないで。わたしね、本当に君が羨ましいのよ。 ……だって、わたしがいくら望んでも女の子の服を着るのはムリだから」
八雲 「! ……鏡花お姐さん」
鏡花姐さん「わたしもできるものなら、八雲ちゃんみたいに華奢な男の子になりたかった」
八雲 「鏡花お姐さん、ごめん! 俺、無神経だった」
鏡花姐さん「ううん。いいの。わがまま言ってごめんね。そうよね。八雲ちゃんは可愛い服なんてイヤよね」
八雲 「そんなことないよ! 俺なんかが着て鏡花お姐さんの心が少しでも晴れるなら」
鏡花姐さん「よーし、よく言った!! 男に二言はねえな!! そうと決まればいくぞ!! 八雲!!」
八雲 「へ? お姐さん……?」
【八雲くん、鏡花姐さんにひょいと肩に担がれる】
八雲 「うわぁああ~!? なになに!? どうなってんの!? 夏目! 夏目~!!」
鏡花姐さん「というわけで、ナッくん、ちょっと八雲ちゃん借りてくわね~」
夏目くん 「了承した」
八雲 「おいこら! 何が了承しただ、夏目バカ!! わわっ! 高い高い!! ちょっ、落ちる、落ちるってば!! ぎゃあ~!! 夏目覚えてろ~!!」
鏡花姐さん参上です。そして退場です。