八雲くんと夏目くんと、たまに誰かさん。その2。
八雲くんと夏目くんと、たまに誰かさん。その2。
八雲 「はあー」
夏目くん「ため息をついて、どうした」
八雲 「このゲームのヒロインがなかなか落とせないんだ。どこで選択間違えたんだろ」
夏目くん「フラグが立たないってやつか?」
八雲 「夏目、いつの間にゲーム用語を!」
夏目くん「おまえがいつも隣で「フラグが立った、フラグが立った」ってゲーム機に向かって騒いでるから覚えた」
八雲 「よし! 今度これ貸してやる! 『どんとこいメモリアル☆』を!!」
夏目くん「いらない」
八雲 「なんでだよ! 俺のお勧めヒロインは田山ちゃんだ! 手品が得意な黒髪美少女だ!」
夏目くん「やらない」
八雲 「おもしろいのに。俺はおまえと田山ちゃんについて熱く語り合いたいのにー」
夏目くん「おまえの趣味をとやかく言うつもりはない。傍から見ているとちょっと引くが、言うつもりはない」
八雲 「言ってるよ! 冷めた目と口で言ってるよ! ギャルゲーをバカにするなよ!!」
夏目くん「してない。俺がバカにしているのはおまえだ」
八雲 「そうか。いや! 俺のこともバカすんなよ!」
夏目くん「納得したり否定したり。忙しいヤツだな」
八雲 「おまえのせいだろ! よし、いい機会だ! よく聞け! 俺がおまえにギャルゲーの凄さを講義してやる!」
夏目くん「抗議する」
八雲 「誰がうまく返せっつった! 聞けって言ってんだろ!」
夏目くん「ゲームは中学くらいまではやっていたが、今はほとんどしないから別に聞かなくていい」
八雲 「そういえば、おまえがやっているところ見たことないな。なんで? 昔はやってたんだろ」
夏目くん「一度やったら大抵すぐにクリアするからつまらなくなった」
八雲 「……一度やっただけで、すぐクリアできるの?」
夏目くん「できる。ゲーム内容の傾向と対策さえ把握できればそんなに難しいことじゃない」
八雲 「そこまで言うならこの田山ちゃん攻略してよ! 激ムズモードだけど、できるよな!」
夏目くん「いいけど。おまえより先にクリアしていいのか?」
八雲 「いいよ! 夏目がそこまで言うならぜひとも攻略するところを見せてよ!!」
夏目くん「激ムズモードってことは簡単なものもあるのか?」
八雲 「あるよ! この別のセーブデータはイージーモードのだね」
夏目くん「そのイージーモードってやつを少しやっていいか」
八雲 「いいよ」
【夏目くん。ゲームプレイ中】
夏目くん「クリアしたぞ」
八雲 「早い!豪語するだけはあるな! じゃあ激ムズモードに入る?」
夏目くん「いや、それもクリアした」
八雲 「……は?」
夏目くん「だから、その激ムズモードをクリアした」
【夏目くん。八雲にゲーム機を返す】
八雲 「ほ、ほんとだ……! 結婚してるっ!! 初めて見るエンディングだ!!」
夏目くん「激ムズモードは最初の所で選択を間違えると、たぶんアウトだな」
八雲 「最初の所って、海? 学校? 本屋?」
夏目くん「学校。そこの選択肢が異様に細かかったから」
八雲 「確かに多かった。でもそんな初期でミスったら終わりなのかー」
夏目くん「学校編の選択の順番は③、②、①、①、①、②、①、③、③、②、①、①、①」
八雲 「覚えてんの!? どんな記憶力だよ!」
夏目くん「やったことは覚えてる」
八雲 「夏目! 夏目! 今の順番もう一回言って!!」
夏目くん「なんでだ?」
八雲 「メモるから!! 俺も結婚する!!」
八雲くん、語弊があります。