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【2‐12】愛しのお兄様は私が守るのです!

「ふん、口ほどにもない。まぁそれも仕方ないがな。私の妖口咆震を喰らい無事でいたものなど数えるほどしかおらん――まぁいいこいつは生かしておくと厄介そうだ今のうちに……死ね!」


――シュン!


「な、なに!?」


「……悪いですがお兄様をやらせるわけにはいかないのです」

 

 私は魔神の腕が振り下ろされた瞬間お兄様の目の前に移動しその腕を取りました。


 それにしても全く、この腐れ魔神ときたら――愛しのお兄様を手に掛けようなどと……絶対に許してはおけませんね。


「き、貴様は後ろで控えていた、ば、馬鹿な! なぜ動ける!」


 何故と言われましてもね。初級魔法関係には回復魔法もありましたし、その中には状態異常を治すのも当然有りました。

 それをちょっと改良してどんな状態になっても回復できるようにしておいただけです。


「くっ! 放せ!」


 お兄様を手に掛けようとした骨の右手……こんなもの放っておくわけにはいきませんね。


「判りました。それでは――放してあげますよ!」


「ぐ、ぐおおぉおおおおああっぁあ!」


 煩い魔物ですね。ちょっと骨ごと右腕を粉砕したぐらいで大袈裟な。

 それにまだ三本残ってるでしょう?

 一本失ったぐらいでぎゃーぎゃー喚くのなんて男らしくないですね。

 

 あぁでも男かどうかわかりませんが……まぁ糸でみると雄表示ですね。

 まぁこの口調で雌だったら気持ち悪いですが。


「き、貴様よくも! よくも私の腕を! 許せん!」


「放せというから切り離して上げたんじゃないですか。折角いうことを聞いてあげたのに文句をいうなんておかしな方ですね」


 私はしれっとした顔でいってやります。

 まぁでも結果的にお兄様とピクスィーが気絶していて助かりました。

 お兄様には申し訳ありませんが、地球に戻るのだけは嫌なので――


 まぁでもその心配はなかったですね。糸で調べると、こいつの力ではこの世界であれば自由に行き来できますが他の世界までは無理そうです。

 ちなみに妖口咆震というのは魔力を込めた咆哮で、魂さえも凍てつかせ意識を失わせるとか。


 ただ命までも奪うまでの代物ではなかったようです。

 尤もお兄様の命を奪うなどされては私はどうなるかわかりませんけどね。

 正直この異世界ごと破壊してしまうかもしれません。


「き、貴様! この私に向かって! 絶対許さんぞ! 本気を出そうと思えば貴様など――」

「本気? 本気というとレベル7200での本気ということですか? 全くその程度で随分偉そうですね。たかだがレベル7200で」


 私は腕を組み侮蔑の表情でロデムに言い捨てます。


「た、たかがだと、くっ! そもそも何故貴様私のレベルがわかる!」


「私鑑定をもってますので」


「馬鹿言うな! 鑑定で私の能力は測れん!」


 そういえばそんな事も書いてましたね。本当に面倒な方です。


「私の鑑定は特別なんですよ。それぐらい察して下さい」


「……くそ、なんなのだ貴様は! しかもなぜそのレベルをみて平然としていられる!」


「だからその程度のレベルだからですよ。私もっとレベルが高いので」


 なっ!? と魔神が絶句してます。そんなに自信があったのですか? 全くどれだけ自意識過剰なのか。


「私よりレベルが高いだと――う、嘘をつけ!」


 三本の手の指を突きつけてこないで下さい。鬱陶しいです。


「嘘ではありませんよ。だって私のレベル72無量大数ですから」


「……は? 無量大――何をわけのわからないことを……」


 ……あぁそうですか。そもそも無量大数が何かもわからないのですね。

 全くこれだから魔物は……


「レベル720,000,000,000よりうえって事ですよ。これでわかりますか?」


 はぁ!? とまた素っ頓狂な声を上げましたね。


「くっ、くくく、あ~~はっはっは! こいつはとんだお笑い草だ! て! ふざけるな! 嘘をつくならもっとマシな嘘をつけ!」


 何か笑い飛ばされましたね。桁が大きすぎて信じてはもらえない感じですか。

 まぁ冷静に考えればわからないこともないですけどね。

 正直この力がどれほどの物か私自身そこまで理解できているわけではありません。


「……まぁいい。少々油断して腕を一本取られたが、もう容赦はせん。本気を出せば貴様のようなハッタリ野郎に負ける私ではないのだ!」


「はぁ? 油断して腕を一本取られるってどれだけ馬鹿なんですか? それもう油断っていいませんよね? 馬鹿も馬鹿、超馬鹿ですよね? てか私女ですからそもそも野郎ではないですね。あぁそうですか。馬鹿だからそれもわからないんですか? 流石耳の代わりにへんてこな翼生えてるだけありますね。趣味も悪いしキモいし更に馬鹿だなんて本当救いようがありません」


「殺す! 絶対に殺す! もう苗床になんてせず私自ら殺してやる! この魔神一の技の貴公子といわれた私を怒らせた事を後悔してくれるわ!」


 うわ、カッコ悪いですね。技の貴公子とか、それ絶対に馬鹿にされてますよね?

 それに後悔してどうするんですか? いえある意味間違ってませんけどね。


「喰らえ! 妖牙列風刃!」


 て、なんか耳の代わりの翼が激しく動き始めましたね。

 かと思えば同時に大量の風の刃が生まれこっちに飛んできます。

 

 全くこんなものお兄様にあたったらどうするつもりですか。

 ついでにピクスィーにも。


 仕方がないですね。

 私はそれを避ける事無く、全て視認し、拳で次々と弾き返していきます。

 

 私に掠ることも無く明後日の方向に飛んでいった刃は、スパスパと洞窟内の壁に切れ込みを入れていきますね。

 なるほど中々の切れ味のようですが私には効きませんね。


「ば、ばかな……私の得意としてる技の一つが――」


 得意? これがですか? いやほんと大した事ないのですが……


「一応いっておきますが、私貴方のレベルに合わせてそうとう自分の能力を抑えてますからね? 今ので本気とか言われると流石にちょっと、興ざめもいいとこですよ?」


 私がそう宣言すると、胴体の口を半開きにしたまま、更にもう一つの口も金魚みたいにパクパクとさせていますね。


「あぁそれと――」


 私はそういったあと、脚で目の前の空間を斬り裂き、その勢いで大量の風の刃を生み出し魔神に向けて放ちます。

 先ほどやられた妖牙列風刃というのを真似してみたものです。

 ちなみに威力はこの技の貴公子さんがやったものより一〇〇倍ほど上です。


「ぐぅ、ぐっぁああぁあああぁあ!」


 魔神は残った三本の腕で正面を庇うようにガードしましたが、それでも中々の切れ味ですね。

 魔神の体中から紫色の血が吹き出ています。

 気持ち悪いです。


「ば、馬鹿な! この私の妖牙列風刃が!」


 信じられない、といった様子で言ってきてますが大した技じゃないですからね本当に。


「くっ! だがまだ私には一〇〇〇を超える技がある! この技の貴公子ぐはあああぁあ!」


 そんなの全て見ている時間なんてありません。 呑気に喋っている魔神の横に移動して脇腹に拳をめり込ませます。

 というか簡単に拳で身体を貫いてしまいました。

 

 レベル合わせてるんですけどね。まぁ魔力とかを一点に集中させて回転を加えると威力が数千倍にまでアップするわけですが。


 まぁいいです。もう面倒なので終わらせましょう。どっちにしろお兄様を憂いな目に合わせようとしたこいつは滅さなければ気が済みません。


 私はまず左側の骨の腕を私の両の腕でロックし、体ごと回転させて捻じり切ります。


「ギョギョオオォオオ! 私の、私の腕がぁ!」


 更に踵落としの要領でもう一本の左腕も切り落としました。


「ヒギィイイ!」

 

 喧しいですね。まぁいいです。せっかくですので最後の一本は剣に魔力のコーティングを施した後で微塵切りにします。


「ふぉおごおおおおおぉお!」

 

 で、尻尾を切り落として妖牙列なんとかを使った耳代わりの翼も切断し、胴体の顔に拳を隙間なく乱打し、ボコボコにして顔かどうかの判別もできなくしてあげます。

 あ、ついでに本体の顎も砕きました。


「ア、グァ、ヒュギ、グォウ、ぎゅる、じ――で」


 今更そんな懇願するようにいわれても知りません。

 どうせ生きていたってこの世界の迷惑にしかならないのですから――


 私は魔神に向かって手のひらを広げそして魔力を込めます。

 初級魔法を改良して手にした魔法――折角ですので試させていただきますよ。


「滅しなさい――爆!」


 私が発動の言葉を口にした直後、魔神の胴体が風船のように膨らみ、そして文字通り爆発して粉微塵に吹き飛びました。


 ふぅ、これで終わりですね。予想以上に大したことありませんでしたね。

 まぁいいです――て、うん? 魔神は完全に消え去りましたが地面にあの額に込められていた黒真珠が転がってますね。

 

 鑑定してみると――ふむ、どうやらこれも魔金の一種のようですが……まぁいいです。

 ギルドにもっていくとしましょう。


 さてっと後は愛しのお兄様とピクスィーを起こすとしましょうか――

 

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