【2‐6】どんなにレベルが高くてもお兄様程ではありません
私達の食事の邪魔をしてきたガーグィンとかいう男を糸で探ってみましたが……思ったよりステータスが高いですね。それに英雄とか雷神とか妙なスキルをもっていますね。
それにしても雷神とは一体――で、説明によると自由に雷を操れる力みたいですね。
そのまんまでした捻りがないですね。
フェロモンは常に発動してるみたいで本人が制御してるわけではないようですが、これで女性に好かれやすい体質になってるようです。
私にはさっぱりききませんけどね寧ろ不快です。
まぁそれはそうと、そろそろなんとかしないといけませんが――
「君はあれかい? もしかして僕に勝てるとでも? だったら考えを改めたほうがいいな。それに僕だって出来ればこんなところで事を荒立てたくない。素直に彼女の事は諦め給え」
「嫌だ。それにミサキは僕の妹だ。諦めるも何もない」
「まだそんな愚かな事を! 何が妹だ! この穀潰しが――」
――パシィイイィイイン!
快音が食堂内に鳴り響きます。その場の全員が目を丸くさせます。
「ミサ、キ?」
「はいお兄様。申し訳ありませんいい加減我慢の限界でした」
私はこの失礼な男の頬に思いっきりビンタを食らわしてやりました。
本当は全ての力を開放してから行いたかったのですが、仕方がないのでレベルは低いままですが――それでも頬は赤くそまり、ガーグィンは頬に手を添え両目を大きく見開いてます。
そして肩をプルプルと震わせ、何か幽霊でもみたかのような愕然とした顔ですっかり口も閉じてしまいました。
そしてかと思えば肩を落とし、腰を折り、そして木質床に両膝を付けガックリと項垂れました。
「なぐ、られ? 僕が、じょ、せい、に? ママにも、なぐら、れ、た、こと、な、な、なな、ない、ななないの、に――」
何やら妙な事をブツブツいってますね。まさか一発ビンタをくれてやっただけでここまでショックを受けるとは思いませんでしたが――
「が、ガーグィン様! しっかりしろよ! 大丈夫だ! こ、こんな女にガーグィン様の素晴らしさが判るわけないんだよ!」
「アンナ。とにかくガーグィン様を一緒に運びますよ! さぁガーグィン様! お気をしっかり!」
そういって取り巻きというか、馬鹿女ふたりが両脇から同じく馬鹿男を抱え、そして立ち上がらせ食堂から出ていこうとします。
漸く変な連中とさよなら出来るのは嬉しいのですが、アンナという女がしきりにこちらに顔を向け睨めつけて来ましたね。
覚えてろよ! とも捨て台詞を吐かれました。まぁ三下のいうことなんてすぐ忘れて差し上げますが。
「いったい何だったんだあいつら……」
ピクスィーが唖然とした顔でいってますね。
でも貴方、確かガーグィンというのに褒められて頬を赤くしてましたよね?
「ふたりとも大丈夫?」
するとお兄様が私の事を心配して声を掛けてくれました。
あぁそこまで私の事を――生きててよかったと心から思います。
「はいお兄様のおかげで助かりました! 流石お兄様です! お兄様を前にしては流石の歴代の英雄も流石! と言わざるおえません!」
「う~ん、でも最終的にはミサキの手で解決しちゃった感じだね」
「そんな! 私があのような輩に意を決して手を挙げれたのもお兄様あってこそです!」
「うん、でもミサキが絡まれてるというのも気づけなかったし……」
お兄様……愛しのお兄様が目を伏せて寂しそうに――判っておりますお兄様は心優しいお方。
ですから自分が何も出来なかったとつい自分を攻めてしまわれるのですね。
本当はそんな事ございませんのに、お兄様がいるからこそ私は――
「お兄様あまりご自分をお攻めにならないで下さい。私は、私はお兄様がいてくれたからこそこの世界でもやっていけるのです。それにお兄様は何度も私を助けてくれたではないですか」
私は膝を落とし、お兄様の手を取り、その優しさを湛えた両の瞳を見つめ思いの丈をお話致します。
「ミサキ――うん、ありがとう」
あぁお兄様が! お兄様が私にお礼を、私の為にその笑顔を――敬愛すべきお兄様……今なら、今ならもしかして――
「ゴホン、あのさ別にラブラブなのはいいけど場所考えてくれないかな?」
はっ! つ、つい自分の世界に、というか! 今は最高にいい雰囲気だったのに! なんで邪魔をするのですか!
私は思わず立ち上がり、ピクスィーを振り向いて睨めつけます。
「な、なんだよそんな目で」
「まぁまぁ皆さん。何はともあれ大事にはならずよかったですよ。さぁそろそろ席について食事でもいかがですか? 後ろの方もこのままでは準備が出来ませんし」
ジョンが軽く微笑みながら私達にいってきました。
て、後? と! いつの間にか給仕の方が食事をもって立ってましたね。
「あ、ごめんなさい! ミサキ早く席についてしまおうよ!」
「そ、そうですわね!」
「いや、そんな慌てなくていいからさ」
恰幅のよい給仕の方が微苦笑を浮かべながら遠慮がちに返してきました。
とは言えやはり悪いですし直ぐに席に戻ります。
「というかこっちの方こそ何か悪かったね。本当は何かいったほうが良かったのかもしれないけど」
「いえいえ、こちらこそ揉め事を起こしてしまったようで申し訳ありません。あの状況じゃ近づけないのもわかりますし」
ジョンは大人な対応で、給仕の方が気落ちしないよう告げてあげました。
確かにあの状況では中々割っては入ってこれなかったでしょうしね。
「こっちも普通の客なら文句のひとつも言うんだけど、何せS級冒険者だろ? 下手に口出すのもね……」
給仕の方はそういって一つ息をつきます。そういえばS級冒険者でしたね。しかしS級ともあろうかたがアレですか。実力はともかく性格に難がありすぎます。
「それにさぁ、あれいい男だろ? おばちゃんいい男には目がないんだよね~」
私達の席に食事を置いた後おばさんが身をくねらせながらいいました。
……まぁいいですが、あんな男より明らかにお兄様の方が確実に勝ってるのですけどね。
「あぁそれで料理はちょっと冷めちゃったかもしれないけど、それはごめんね、それじゃあごゆっくり~」
……何か最後にちゃっかりそんな事をいいながら、踵を返して去って行きましたね。
まぁいいですが――
そして料理が並べられた後は、それじゃあいただきますか、のジョンの声で夕食を頂きました。
ただやはりあの連中の事があってあまり美味しくは頂けませんでしたね――全く折角異世界の街に辿りつけたというのに初日から腹ただしいことです。
「それでは皆様今日はこれでお休みなさいませ」
食事を終え二階に上がると挨拶をし部屋に戻ることとなりました。
今日はいろいろありましたからね。
ラリアも重そうな瞼を擦って凄く眠そうです。旅の疲れも出てるのでしょう。
「どうでもいいけど、あんたら朝になったら同じベッドに寝てましたなんて事ないよねぇ?」
リックエル親子が部屋に入り、私達もといったところで、ピクスィーがからかうような目でそんな事をいってきました。
でもそれは――勿論そうなれば、それによく考えてみると今お兄様とすごくいい雰囲気な気も致します。先ほど食堂でお兄様がいってくれた言葉などは、兄妹ではとてもいいあらわせないような……ふふっ、うふふふ……
「え~そんな事あるわけないよ~ミサキは僕の妹だし~」
……え?
「でもさっきの雰囲気はただの妹って感じでも無かった気がするけどな~僕は~」
そ、そうです! そんな只の妹だなんてことは!
「うんそうだね。ミサキは大事な妹で家族だよ~だから守って上げなきゃとは思うんだ~家族として兄としてね!」
……お兄様が拳を強く握りしめてそう、宣言、してくれました……家族として、と。
「それじゃあまた明日ね。お休み~」
「あ、あぁお休み~」
お兄様が手を振りながらあっさり部屋に戻られました……
「……うん、まぁ大変そうだけど頑張ってな」
ピクスィーに肩を叩かれ同情してるような目を向けられ、そして彼女も部屋に戻りました――
うぅお兄様――その日私は枕を涙で濡らしました……
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