【2‐5】お兄様と私は紛れも無く兄妹です!
私はお兄様に先ほどの件を伝えました。
流石のお兄様も驚いておりましたが、一応は助けて頂いたので大丈夫とも伝えました。
「そうだったんだ……ごめんね気づいてあげられなくて」
「そんな! この位置からは水差しのある位置は確認しにくいので仕方ないです! お兄様のせいではございません!」
それにお兄様からでは背中側にあたりますし、背中に目でもなければ判りようがありません。
「う~ん、でも助けてもらったならちゃんとお礼をいわないと」
「それならば私がちゃんと申し上げましたので」
相手がどう捉えたかは知りませんが、一般的なお礼は行ったつもりです。
「はぁ? あんた一体何いってるんだい! あんなのがお礼だなんてふざけたこと抜かしてんじゃないよ!」
……なんかガーグィンという男の胸に身を寄せながら、アンナが刺のある声でいってきましたが、正直何を言ってるのか理解に苦しみます。
「私は自分なりにお礼を申し上げたつもりですが、何か問題がありましたでしょうか?」
「大アリだね! あんな適当なお礼で済まされると思ったら大間違いだよ! いいかい! ガーグィン様に助けて頂いたなら本来その場で跪いて靴を舐め、地べたに頭を擦り付けて涙ながらに感謝の言葉を述べそれから直ぐに立ち去って二度とガーグィン様のお手を煩わせない為に国を出るのが常識ってもんだろが!」
とりあえず貴方の頭がおかしいというのは判りました。
「アンナ何を馬鹿な事をいっているのですか」
「あん? なんだよクリス何か文句があんのかよ?」
何か神官衣の女が横から口をはさみましたね。それが気に入らないのかアンナが目を尖らせて声を返してます。
ふむ、とはいえこっちの方は少しは良識があるのかもしれません。
伊達に神官衣を身にまとっているわけでは――
「大アリですよ。貴方の考えは間違ってます。いいですか? 本来ガーグィン様に助けられるような低劣な愚民は、その場で自らの四肢を磔にし、どうか私の身をその手で燃やし魂ごと貴方様の清らかな笑顔で浄化させてくださいと懇願すべきなのです」
前言撤回です。揃って病院に行ってきて下さい。この世界に病院があればですが。
そんなふたりをジト目で見ていると、そのガーグィンが前に出てきて、また髪を掻き揚げました。うざいです。
「いやぁなんかごめんね。ふたりとも僕に対する愛が深いばかりに少々過激な事を言ってしまいがちなんだ。でもそれも僕への愛が故さ許してやってくれよ」
「そうですね。では許しますので、もう席に戻って頂けますか?」
本当にこっちは折角の食事なのにいろいろ台無しです。そもそも、もう食事もきていいはずなのですが、よくみると後ろのほうで給仕の方がこちらを見つめたまま固まってます。
来るにこれないって状況なのですね。本当に厄介です。
「てめぇ! またガーグィン様に失礼な態度を!」
「ふふっ、これはもう燃やすしか無いですね……うふふ、火、火、めらめら、うふふ……」
本当に煩わしいふたりですね。というか神官衣の方は危なすぎです。貴方は本来癒やすポジションですよね? なんで燃やすのですか?
と、思ってたらがーグィンが両手を振り上げるようにしてふたりを制しましたね。
「どうやらふたりとも誤解が止まらないようだね。そうだこうしよう。君を僕の席に招待しよう。それで解決だ」
「はい?」
最早言っている意味が判りません。何の脈絡もありません。頭に豆腐でも詰め込んでるのでしょうか?
「あの~ミサキを助けて頂いてありがとうございます」
あまりにぶっ飛んだ考え方のガーグィンに呆けていると、いつのまにお兄様! 隣に立った凛々しいお兄様が、わざわざこんな頭のネジが一本飛んだような男の為に頭を下げました。
「お兄様! 何もお兄様がそこまで……」
「え~でもミサキが助けてもらったならちゃんとお礼をしておかないと」
「……誰だ君は?」
「「はい?」」
お兄様と私はふたり揃って同時に声を上げました。お兄様と声が揃うなんて天にも上り突き抜けて大気圏を突破しそうな程幸せです!
て、言ってる場合じゃないですね。
この男、何か難しい顔してお兄様を見下ろしていますが失礼なやつです。
「僕はミサキの兄だよ宜しくね」
「ミサキ……そうか君はミサキというのか。うむ君にぴったりな美しい名だ!」
この男にそんな事を言われてもさっぱり嬉しくないですね。
「僕もミサキの名前は好きだよ~」
はぅ! す、好き!? お、お兄様が私を、は、はうん!
「いや……この状況であんた何そんな幸せって顔してんの?」
何を言われようと幸せは幸せなのです。
「……君はさっきから何なんだ? このミサキという娘の事を馴れ馴れしく」
「え? でも妹だから――」
「嘘をつけ」
「え?」
お兄様が目を丸くさせます。当然ですね。私も折角の夢心地の気分が台無しにされた気分です。
「貴様とこの娘は全く似てないではないか。こんな似ていない兄妹がいるはずがないだろう」
「そんな、こといわれても」
「貴方! さっきから流石に失礼ではありませんか! お兄様は私の大事な大事な愛すべきお兄様です!」
全く思わず声を荒らげてしまいました。
「いいんだよそんなに無理しなくて」
「はい?」
「判ってる。僕にはもう判ってるよ」
判ったならとっとと回れ右して私の目の前から消え失せて欲しいのですが。
「きっと君はこの男に奴隷として買われたのだね」
「……流石に何を言われているのか理解に苦しみますが」
「無理しなくてもいいのだよ。今は表立っての奴隷のやり取りは禁止されてるが、それでも未だ裏でそういう取引が行われていることは耳にしている」
「いや、ですから――」
「大丈夫! 判ってる! 判ってるよ! 君はきっと隷属の魔法でお兄様と呼ぶよう、絶対に逆らわないよう強制されてるんだね?」
くぅ、この男全く話を聞くつもりないですね!
「ちょっとあんたいい加減にしなよ。第一この兄妹が奴隷関係なはずないだろ」
ピクスィーがたまらず横から口を挟んできました。流石にこの言動に嫌気がさしたのでしょうね。
当然です。少なくとも私はお兄様さえいなければこの男を今すぐ魂ごと消し去ってました。
「ミニマイト……そうか君もこの男に隷属化されてるのだね……」
「はぁ? 何いってるんだよ僕は」
「判ってる! 判ってるとも! 君みたいな可愛い子なら奴隷にしたいと思う輩がいてもおかしくない」
「え? 可愛い?」
いや! 何そこで紅くなってるのですか!
「……ガーグィン様の趣味にとやかく言う気は毛頭ないですが、流石に男の娘に手を出すのはどうかと……」
何か不安そうにあのクリスとかいう女がいってますが問題点はそこではないでしょう!
「何を言ってるんだクリス。この娘はどうみても女の娘だろ」
「え! マジで!」
女戦士も下品に驚いてますが……いやピクスィー、なに、にへらっ、て顔を綻ばせてるのですか?
「あの、横から申し訳ありませんがそろそろいい加減にして頂けませんか?」
ジョンが立ち上がり、このガーグィンというわけのわからない男を見据えながら言ってくれました。
流石のジョンさんも、不快の色がその表情に滲み出ています。
「それにそのお二人は私と娘が危ないところを助けてくれたお方です。貴方がいうような奴隷等という関係では――」
「貴様が奴隷商人かぁあああぁあ!」
「えぇえええぇえぇえ!」
何を言い出すのですかこの方は!
「とんでもない男だ! このような綺麗な娘や可愛らしいミニマイトの女の娘をこんな男に売りさばこうとは! 僕の目の黒いうちは絶対にそんな事はさせない!」
「ちょ! 何いって! 私は別に奴隷商人などでは――」
「誤魔化しても無駄だ! 顔を見ればそれぐらい――」
「パパを虐めるな!」
あ、ラリアが立ち上がって、可愛らしい瞳をキツくさせて……
「き、貴様! こんな愛らしい娘まで奴隷として売りさばくとは! 外道が!」
「私の娘ですこの娘は!」
「嘘をつけ! そうかよしそうか! 判った! こうなったら君たちは皆この私が引き受けよう! こんなゲスでどうしようもない奴隷商人とそれを買おうなどという不届き者から開放し幸せにしてあげるよ」
くっ、この男本当に話を聞いてないですね! いい加減――
「さぁ一緒にいこう! 大丈夫、隷属の事は心配しなくてもクリスなら解除が出来る!」
「て? はぁ! ちょ手を放して!」
「おい! 僕は別に奴隷じゃ!」
この男いきなり私とピクスィーの手首を掴んで! なんなのですか、これじゃあさっきの男と変わりません! いい加減に――
「やめろ!」
え? お兄様? お兄様が私を掴んでいるこの男の腕を掴んで……わ、私の為に……
「ミサキは僕の大切な妹だ。それにピクスィーだってもう大事な仲間だ。おかしなことばっかいってないで嫌がってるんだから放せよ!」
大切――大切な、お兄様が私を、大切で愛しくて誰にも渡したくない二度と離したくない、愛しくて切なくてそんな風に――ふぁ!
「貴様は意地でもこの娘達を奴隷から開放する気がないと、そういうのだな?」
「お前の言ってることが僕にはさっぱり理解できないよ、とにかく放せ」
「お、おい、なんかやばいんじゃねぇの? 呆けてる場合じゃねぇって」
はっ! お、思わぬ告白についぽ~、としてしまいました。
しかも私の為にお兄様がこの男と一瞬即発の雰囲気に……なんて事でしょうか。
というかこの男、身の程知らずもいいとこなのですが、そこまで自信があるって事は能力が高いのでしょうか? ちょっと見てみますか。
ステータス
名前 サーガ・ガーグィン
年齢 22歳
性別 ♂
称号 女に優しい英雄
レベル 865
物攻 658
魔攻 850
体力 800
魔力 928
敏捷 1018
精神 1800
永続スキル
雷神の加護
アビリティ
フェロモン




