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【2‐1】お兄様の前では水の都も噴水も形無しです


 馬車がいよいよ目的の街エクシスの前に到着しました。


 そこで私達はジョンに一旦促され馬車を降りました。


 この時武器は一旦馬車の中に置いておいてほしいと言われましたね。


 検問ではそういう決まりがあるのでしょうか。

 ただピクスィーはそのまま降りて行ってしまいましたが――まぁいいです。

 

 お兄様も素直に武器を外しておりますしね。


 その直後守衛と思われる人物がふたりやって来て幌を捲って荷の確認を行っております。


 ジョンの話では事前に中身を記載したリストを渡して、それと照らしあわせて確認してるそうです。

 

 因みに今回は途中で手に入れた素材もジョンは途中馬車に戻っていた時間も利用して記入しておりました。

 それらもしっかり提出するみたいです。


 まるでスーパーなどへの搬入みたいですね。

 ちなみにこの時は目的などもしっかり記入するそうです。

 

 厳しそうにも思えますが――実際はかなりの顔なじみなようで、ジョンも待ってる間は確認の守衛とは別の男性と談笑してますね。こちらは随分と厳つい顔をした方です。


 守衛で今積み荷をチェックしているのは、ふたりともチェインメイルを着て腰に長剣を差しもった男性です。


 頭にも鎖で編んだ半球状のヘルムをしてますね。腕には守衛であることを示す腕章が巻かれてました。


 今ジョンと談笑してる荷を確認している守衛とは色が違いますね。荷をチェックをしているのは緑、ジョンと話をしているのは赤で、しかもジョンと話をしている人物は鎧もチェインメイルではなく、もっとしっかりした感じの鎧です。


 恐らく彼がリーダーか隊長といったところなのでしょう。


 それにしても荷の確認には少し時間がかかりそうですね。


「やっぱり異世界といったら街を囲む壁だよね~ミサキ~」

 

「はい、壮観ですわねお兄様」


 お兄様がどこかワクワクした感じに、街の外郭を見渡すようにしながら目を輝かせています。


 今そこにある風景を慈しみ、しっかりと観察をし知識を潤すお兄様はやはり素敵です。

 きっとお兄様が見聞録でも書かれたなら、例え異世界であってもベストセラー間違いなしでしょう。


 それにしてもお兄様の言われるとおり確かに見事です。

 街を円状に囲む壁が厚みがありとても堅強そうです。


 高さは五階建てのビルぐらいはありますでしょうか? 今検問を受けている外郭門もその壁にそぐう大きさで、門の左右上部の壁には尖塔が佇んでおります。


 きっとそこにも守衛が配置されていて、外の様子を確認しているのでしょう。


 このエクシスの街というのは私達が抜けた森を一望できる丘の上に立っており、外壁の周りには堀が外側を囲むように設けられております。


 その堀は今は綺麗な水を湛えております。幅は二〇メートルほどあるようで、今は跳ね橋が掛かっています。


 この街の出入口は東西南北に一箇所ずつ、つまり四カ所に設けられているようですね。

 見るにかなりの規模の街ですからね。


「積み荷の確認終了!」


 守衛のひとりが力強い声で叫びあげました。

 どうやら終わったようですね。

 リストを隊長風の守衛に手渡し話をしております。


「ふむ、衣類関係や鞄は納品と……後はその他と書かれている魔金と素材これは――」


 そういって隊長風の男がチラリとピクスィーそしてお兄様と私を其々みやりました。


「ピクスィーがいるって事は彼らも冒険者ギルドに所属してるのかな? 初めて見る顔に思えるのだが――」


 どうやらこの方はピクスィーの事は知っているようですね。

 ただ当然ですが、お兄様と私の事は知るわけもなく、訝しげにジロジロとみてきます。


 するとジョンが微苦笑をうかべながら、実はと後頭部を擦り彼に事情を説明してくれました。


「……成る程、いやしかし馬車狩人に狙われるなど災難だったな」


「えぇ、ですがふたりのおかげで助かりまして――」


「うむぅ、しかし信じられないな。どうみてもまだ子供にしかみえんのだが」


 守衛の男はそういって、値踏みするような視線を向けてきます。

 失礼にも感じられますが、私がそう思われるならまだ仕方ありません。


 しかしどういうわけか、特にお兄様へ侮辱するような目を向けております。

 信じられませんね。この人の目は泥水のように濁っているのでしょうか?


「そのふたりの実力は僕もこの目でみたから確かだよ。何せシャダク相手でもあっさり倒し、ビグルネベンスィーツの蜜を手に入れる依頼にも一役買ってくれたんだ」


 今まで特に何も口にしてなかった彼女が、ジョンのフォローに入るように守衛に説明してくれました。

 そして私にちらっと顔を向け鼻をこすってみせます。


 まぁこれは素直に感謝すべきでしょうね。


「むぅビグルネベンスィーツが出たという話は聞いていたがな、実際にある以上信じるしか無いが、これがこんなに簡単に……しかもこのふたりがね……盗賊の件といい――」


「パパ嘘ついてないよ。お兄ちゃんとお姉ちゃん凄かったもん!」


 と、ここで更に小さな援軍が駆けつけてくれました。

 ジョンの傍にいたのですが、どうやらお兄様と私の事を気にかけてくれたようですね。


「おっとごめんよお嬢ちゃん。おじさんたちも仕事柄つい疑って掛かっちゃうんだ。別に意地悪してるわけじゃないからね」


 厳つい顔を目一杯緩ませて笑い、腰を屈めてラリアの頭を撫でました。


 確かに彼らも仕事ですから――そういう態度に出てしまうのかもしれませんね。


「まぁとはいえジョンの顔もあるしな。話を聞くぶんには冒険者ギルドにも登録するつもりのようだし、ジョンを身元保証人とすることで通行を許可しよう。但しミサキ・タカギ、ショウタ・タカギの両名は速やかに冒険者ギルドへの登録を済ませるように」






◇◆◇


「何か助かりました。本当にありがとうございます」


 お兄様がジョンに深々と頭を下げます。勿論私もそれに合わせて一緒に頭を下げました。


 するとジョンは、いやいやそんな、と頭を上げるよういってきました。


「私が勝手にやったことです。それにおふたりが信用に足る方なのはここまでで十分に判りましたので」


 本当にありがたい限りです。恐らくこの親子にあわず先にこの街に来ていたなら、怪しまれ入ることすら叶わなかったでしょう。


「まぁ保証人といっても、ふたりがここで何かトラブルでも犯さない限り問題ないしね。それに冒険者ギルドに属しちゃえばもうそれも関係がない」


「あ、そうだ! 冒険者ギルドにいかないとね~どこにあるのかな?」


 お兄様が誰にともなく疑問を口にしました。

 確かにこの街は初めてですから、いくら頭脳明晰なお兄様でもわからないですよね。


「冒険者ギルドはこの街の北東街区にあるんだよ。装備品を扱う関係の店舗もそのへんに集中してるのさ」


 なるほど、ピクスィーはこの街を中心に冒険者として活動してるみたいなので詳しそうですね。


 そして更にジョンの話ではこの街は区画が五つに分かれてるようです。


 北東街区はピクスィーがいっていたように、冒険者ギルドや装備関係の店が並んでいるようです。

 また冒険者専用の倉庫や賃貸の集合住宅等もあるそうです。


 そして北街区は最奥にはこの街を中心に界隈の村などを統治する領主が居住している屋敷があるようです。

 やはり領主というからには立派なものなのでしょうか?

 

 そして位の高い貴族などが居住するのもそのあたりだそうです。

 しかしやはり貴族の制度はあるのですね。


 北西街区には学園や図書館、教会等も設置されているようです。


「実はここの学園は一〇歳から入学可能でして、今回娘と同行したのはその入学手続きも必要だったからなのです」


 区画の説明の途中ジョンはこんな話もしてくれました。

 成る程、確かによくよく考えたらわざわざ小さな娘を一緒につれてくるのはおかしいかなとも思いましたが合点がいきました。


 ただ私には図書館のほうが気になりましたけどね。

 ジョン曰く、王都に比べれば規模は小さいけれどそれでもかなりの蔵書数であると、しかもその中には初級の魔法書などもあるようで、入館料は必要となるそうですが(この辺りは流石に私達のいた世界とは違いますね)これは見過ごすわけにはいきません。


 流石に今日はもう間に合いそうにないですが、明日には是が非でもいっておきたいですね。


 南西街区は商業関係がメインらしいですね。ジョンが商品を卸すのもここで、飲食店関係や宿などもここに集約されているそうです。

 

 そして南東街区は平民の居住地となっているようで、この街で暮らす人々が住む家屋や集合住宅が連なってるようです。


そしてそれらの説明を一頻り聞いた後、お兄様が話しの区切りを見計らって訪ねました。


「なんで冒険者の住居はまた別にあるの?」


 流石は慧眼優れしお兄様なのです。そこは確かにそう考えると気になりますね。

 何より今後お兄様と私の愛の巣を築く為には重要なポイントです。


「そりゃ私達みたいな冒険者は常に危険と隣り合わせ、そんな明日どうなるかもわかんない連中にまともな家主が部屋を貸すと思うかい?」


 ピクスィーが肩を竦めながらいってきました。

 成る程――確かにそうですね……


「これから冒険者になられるというおふたりには少々耳が痛い話かもしれませんが、確かにピクスィーさんのいうとおりで、更に冒険者はギルドの責任において街頭での帯佩(たいはい)も許可されてます――」


 なるほど。私達に武器を外してほしいといったのはその事があるからなのですね。

 ピクスィーが問題なかったのは冒険者だったからのでしょう。


 そういえば彼女は守衛に銀色の薄いプレートのような物をみせてましたね、あれが冒険者の証なのかもしれません。


「当然冒険者が部屋を借りるにして出歩く時や戻ってきた時は武器を帯びたままである事が多くなり、更に場合によっては魔物を倒した素材を持ち運んできたりもします。それを嫌がる人が多いのでどうしても冒険者お断りとされる事が多いのですよ」


「そうそう。宿なんかも冒険者お断り! ての結構多いしね。稼ぎも安定しないと言われてるし、まぁだからギルドが間に入る形でギルド周辺に冒険者でも借りられる建物を用意してくれてるのさ」


 そこまでピクスィーはいいましたが最後に、まぁでも部屋を借りるより宿で済ましてるのも多いんだけどね、とも付け加えました。

 

「ふ~ん、冒険者もなんか色々大変そうなんだね……」


 はっ! お兄様が眉目を落とし淋しげにいいました。

 もしかしたなら冒険者の待遇の悪さに嫌気がさしたのかもしれません。


「お兄様。もし気に入らない点があったならご無理をなさらず――」


「ううんそんな事無いよミサキ。それに一度決めたことだしお金は稼がないといけないしね!」


 あぁ……決意を新たに顔を引き締められたお兄様素敵です。

 

 それにしても私ときたらなんと浅慮な事を。

 お兄様が一度決めた事を覆すような脆弱な心をお持ちな筈がないのです!


「その意気その意気。それに冒険者は実力があれば稼げる仕事だしね。お兄様の力なら相当に稼げると僕は思うよ」


「確かにそうですね。実際いまここにくるまでにも盗賊退治に魔物退治これだけでも中々のものです」


 確かに……そうですね。魔物の素材に関しては後々ピクスィーと内訳を決めなければいけないですが、盗賊たちから手に入れたお金だけでも五〇〇〇〇ジルは超えてるわけですからね。


「まぁとにもかくにも話は明日って感じだね。もう店はどこもしまるし、宿を見つけて休もうよ」


 ピクスィーが微苦笑を浮かべながらいいました。

 確かにジョンの時計でも今は夜の7時。

 空を見上げると既に夜の帳が張られてきております。


 それでも魔法具による街灯がそこかしこで灯されているので、完全な闇には包まれませんけどね。


 ちなみに街の入口はこの時間に閉め出入りは一切できなくなるそうです。

 

 冒険者になるならしっかり覚えておかないと駄目ですね――

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