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【1‐11】どんな時でもお兄様の傍につくのが妹の努めです

 ジョンが見張りに立ち馬車に戻ってから暫くは、お兄様と私でラリアの話し相手となっておりました。


 基本的にはラリアから質問される事が多く、お兄様が回答に詰まる事もありましたが、そこは私が妹としてしっかりフォローさせて頂きます。


 そして合間合間には、こちらから質問をしたりもしてみました。


 その中で判ったのはリックエル親子の住む村は、だいたい人口が一〇〇人前後ということ。


 この世界の人口がどれぐらいなのかは判りませんが、雰囲気的にはそれぐらいが普通なのかもしれません。


 そしてこの国の名前がブラコシスタニア王国というのも判りました。

 国を統治してるのも王で、話を聞く限りは世襲制で世継ぎを決めてるようですね。


 と、そんな感じに話をしていると、ラリアが瞼を擦り始めました。

 そろそろ眠くなってきてるようですね。

 異世界の人々はお兄様や私のいた世界とは違い、寝るのは早そうな感じです。


「もう寝よっか?」


 ここは同じ女性の私から声を掛けます。馬車の中にはタオルケットのようなものも用意されているので、それに包まって寝る形です。


 気候的にも夜は涼しいぐらいなので問題はないでしょう。


「……お姉ちゃんと一緒に寝たいな」


「へ? わ、私とですか?」


 ラリアが大きな瞳でじっと私を見つめながら、お願いしてきました。

 少し戸惑ってしまいますね。それにどうせならお兄様と――勿論そんなはしたないことを自分からは申し上げられませんが。


「私ね、お姉ちゃんの事を見てるとお母さんを思い出すの~」


「え? お母さん?」


「うん……私のお母さんね、もう――」


 ラリアが寂しそうに俯きました。

 ……そういう事なのですか――きっと御父様がひとり一生懸命育ててきたのでしょうね。


 でもまだこの歳なら恋しくもなりますか――


「ミサキ~」


 お兄様が私に目で訴えてきました。そうですね……ここは――


「わかりました。今夜は一緒に寝ましょうか?」


「本当に! やったぁ~~~~」


 凄く嬉しそうにしていますね。ここまで喜ばれると私も引き受けた甲斐がありますが、それにしても今の寂しい表情はなんだったのか? と思えるぐらいではあります。


 やはりまだまだ子供ですね。


 そして彼女はタオルケットを被るようにしながら、私に向かってダイブしてきました。げ、元気ですね――


「お姉ちゃん、ぎゅううぅうううっ――」


 私の腰に必死に腕を回すようにして精一杯の力で抱きしめてきました。

 ふふっ、こういうのはやっぱり可愛いですね。


 もし私とお兄様に子供がいたらきっと――はっ! さ、流石にそれは気が早すぎでしょうか。

 

 ……そ、それはいいのですが、その後はラリアが私の胸に顔を埋めてきております。女同士ですので気にすることではないのかもしれませんが……


「むむっ! お姉ちゃんのお胸やっぱり大きい!」

「え? あ、ありがとうね」


「それに凄く柔らかいです!」

「え? あ、ちょ! やだ!」


 何か凄く揉まれてしまってるのですが――






「はぁ……はぁ……はぁ――」

「すーすーう~んお姉ちゃんおっぱい、気持ちいい――」


「ラリアちゃん寝ちゃったねぇ~」

「え? あ、はいそうですねお兄様」


 散々私の胸を弄んでラリアは眠りにつきました。えぇ子供のやることですからね仕方ないとは思います。


 でも――お兄様もまともに触れてくれた事のない、私の胸が……うぅ――


 というか、お兄様がなんか微笑ましいみたいな顔をしていってますが、結構その……中々えっちぃ事になってたと思うのですが、気にならなかったのでしょうか? 


 私はそこまで魅力がないとか……そんなお兄様の為に磨きをこのスタイルでもまだ……いえ、ここはむしろもっと声に艶をだした方が良かったのかもしれません。


 機会があれば試し――


「いやいやおふたりともすみませんね。娘に付きあわせたみたいで」


「いえいえ~ミサキも楽しんでましたし、すっかり本当の姉妹みたいに仲良くなってましたし~」


 ジョンはこちらの様子も気になって見に来たみたいですね。

 それにしても姉妹みたいとは……寧ろここは私達の愛の結晶みたいだと……まぁ流石に無理がありますか。


「そうですか。ラリアもきょうだいを欲しかってましたからね。それで嬉しかったのかもしれません。こればっかりは中々難しいですから」


 ジョンが少し寂しそうな顔を見せましたね。これはあまり触れないほうがいいでしょう。


「ところで外の様子は如何ですか?」


 話を変えようと見張りの状況を確認します。一応護衛の役目を請け負ってますしね。


「えぇ、静かなもんですよ。まぁ森から少し距離もありますし焚き火の効果も馬鹿には出来ませんからね」


「僕達は昼間赤茶色の狼と出会ったけど、あれは夜には出ないのかな?」


「赤茶色の狼というとマッドウルフですね。確かにあれは昼間にも現れることはありますが、それは大丈夫だったのですか?」


「はい。お兄様の迫力に恐れをなして逃げてしまいましたわ」

「あれはたまたまだよミサキ~~」


「いやいや。ショウタ様ほどのお力ならそれもわかります。あのマッドウルフは魔物ですが臆病なところもありますからね。一応夜の方が活発的に動きまわる魔獣タイプの魔物でもあります」


 ジョンが時折外の様子を確認しつつも、親切に教えてくれます。

 するとお兄様がタイプ? とジョンの話にご興味を持たれました。


 流石はお兄様。重要な点は聞き逃すことなく、しっかり確認をとられております。


 そしてジョンのその後の説明によると、この世界の魔物にはそれぞれタイプ、つまり分類があるようで、魔妖系・魔霊系・魔獣系・魔植系・魔虫系・魔爬系・魔粘系・魔器系・魔鳥系・魔水系・魔竜系・魔鬼系そして魔神系に分かれるそうです。


 全一三種類ですか。そういえばステータスの種族でもこのような名前が出ていたと思います。


「さっきいったドラゴンというのは魔竜系にあたりますが、このタイプは総じてステータスが高く一番弱いとされるコモンドラゴンでもCランクの冒険者パーティーが数多く集まって漸く倒せるレベルともいわれてます」


 そういってジョンが僅かに顔を顰めましたね。先ほどの件も気にしてるのかもしれませんが、出来れば関わりたくないという気持ちが見て取れます。


「後は魔鬼系も厄介ですね。巨人に似たジャイアントと呼ばれるものもこの部類に入りますが、それは体長は軽く三メートルを超え、下級のタイプでも小さな村なら壊滅させられ人々は全て食料にされてしまいます」


 今度は肩を震わせるようにして、ジョンがいいましたね。竜の時よりも下手をしたら恐れを抱いているようにも思えます。


 もしかしたら被害としてはそのジャイアントという物のほうがこの辺りでは大きいのかもしれません。


「巨人に似たというと巨人とは違うの?」


 そこに気づかれるとは流石ですお兄様!


「えぇ。巨人族というのも住んでいる地がありまして、本来の巨人族は寧ろ穏やかで場所によっては上手く人と共存していたリもするらしいですね。私もみた事はないのですが」


 へぇ、とお兄様が子供のように瞳をキラキラさせました。

 純真な気持ちをいつまでも持ち続けるお兄様はやはり素敵です。


「あの、ところで魔神というのは?」


 私は特に気になっていたことも聞いてみました。何せ言葉としては恐らく一番物々しい感じをうけますからね。


「え? 魔神をご存じないですか?」


 ジョンがキョトンとした目で聞き返してきました。

 ……失敗しました、どうやら魔神というのはこの世界ではかなり常識的なものなのかもしれません。


「え~と、昔聞いた覚えはありますがあまりよく思い出せなくて」


「あぁなるほど。確かにお伽話みたいなものですしね」


 ジョンは朗らかに笑ったあと説明してくれました。それによるとかつてこの大陸にも大魔神という人々に災厄を招く者がいたそうですね。

 この大魔神は魔物を生み出した元凶でも有り、その中でも特に力を持っていたものが直属の部下にあたる魔神だったそうです。

 この大魔神と魔神が率いる魔物の軍団は強大な力を持ち、この大陸中の国々を恐怖で震撼させたそうですね。


 ただ――まぁ有りがちなのですが、勇者と呼ばれる存在が突如現れ、この大魔神や魔神を打ち倒したとか。


 それが随分と昔の話のようで、今ではお伽話に近い物ですとジョンは笑ってましたけどね。


 その為に魔神というのは名前は残ってますが恐れる必要はないそうです。


「でも随分昔に魔物を生み出した元凶は倒されたのに、魔物はまだ現れるのですね」


「えぇ。これも伝承として残ってることで真実の方はまだつかめてないことも多いようですが、大魔神は、たとえ自分が死んだとしても決してその種が滅びないように高い繁殖能力を備えし魔物を作り上げたそうです。それも魔物によって繁殖の仕方も時期もバラバラなので、中々絶滅させるというのも難しいようなのです」


 更にいえば、とジョンは続けましたが、あのオークのように人間と手を結ぶ魔物も現れたり魔物を利用しようと考える組織も現れたりして、それらもこの世界から魔物が減らない容認になってるとか。


 ちなみにお兄様がオークはどうやって増えてるかと聞かれましたが、ジョン曰く、あまりに悍ましいので聞かないほうがいいし、出来れば話したくもないそうです。

 

 お兄様はそれで何かを察したのかそれ以上は聞きませんでしたし、私も正直なんとなくわかりますが、考えるだけで気持ちが悪いですね。


「それと後は魔物は私達が生きていく上では役立つ部分も多いというのも大きいかもしれませんね。魔物の身体で生成される魔金が私達の生活に欠かせない魔法具に変わっているのは確かですから」


 いい終えたジョンはなんとも微妙な笑顔を浮かべてますね。

 確かにこの短い間でも魔法具の便利さは十分しることが出来ました。

 しかしその魔法具を作るには魔物を倒した後に手に入る魔金が必須なようです。

 

 人に危害を加える魔物が人々の役に立つ道具に変わるというのは、なんとも皮肉なものですね。


「それでは私はまた見張りに戻りますね。皆さんは時間までゆっくりお休みください」


 話が終わると締めの言葉を述べジョンはまた馬車を離れました。恐らく焚き火の前に戻ったのでしょうね。


 因みに今の時間は夜の9時になる少し前ぐらいらしいです。お兄様や私の感覚だとそれでもまだ寝るには早いぐらいですが、見張りの事を考えれば休んでいたほうがいいでしょう。


「ミサキは寝ておきなよ」


「え? お兄様は?」


「僕はなんか目が冴えちゃってるからね。まぁ眠くなったら眠るよ~」


 お兄様……お兄様は間違いなく私に気を使っております。あぁ優しいお兄様――出来ればこのまま飛びついて私を抱き枕にしてゆっくりとお休みになって頂きたいぐらいです。


 実際見張りは私が少し頑張れば問題がないですしね。今も密かに糸を伸ばして周囲を確認してるぐらいです。


 でも――だからとここで私も起きています等といっては、逆にお兄様に気を使わせてしまうかもしれません。


「お兄様もしっかり休んでくださいね。何かあればジョン様が起こしに来るはずですし……」


「うん、そうだね。大丈夫だよ、僕ももう少ししたら休むから」


 ニッコリと優しい微笑みを浮かべて、お兄様が安心させようとしてくれているのが良く判ります。


 本当にお兄様は私にとって最高のお兄様です――なのでとにかく私は一旦瞼を閉じ眠るふりをすることに致しました。


 お兄様を思えばここでは寧ろ素直にいうことを聞いているようにみせる事こそが、内助の功というものでしょう。


 でも私は瞼を閉じていても糸を張り巡らすことは忘れません。イメージは結界のように、周囲に張り巡らせます。


 ただ伸ばせる長さが決まっているのでそこまで広範囲をカバーできないのが弱点でしょうか。まぁそれでも焚き火と馬車の近くで何かがあればすぐに気づけますけどね――


 

この章が終わるまでは明日から毎日1話ずつ更新致します。

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