山本のうっかり
・・・ピピピピピピピ
・・・うるせーな。
誰がセットしたんだよ・・・。
・・・俺だ。
出かけるのはめんどくさい。
このまま二度寝しよう。
・・・。
・・・小便してからにしよう。
トイレをしてから部屋に戻って布団に入っても不思議と眠くない。
時間は、9時5分。
「目、覚めちったな」
頭をポリポリ掻きながら色々考える。
出かけない理由を考える。
しかし無職期間の長い腐った脳みそではなにも思い浮かばない。
天気予報を見る。
埼玉は晴れだ。
東京はどうだろう。
晴れだ。
もちろんわかっているのだ。
埼玉が晴れなら東京も晴れだし、東京が晴れなら埼玉も晴れだ。
時計を見る。
9時10分。
「昨日決めたじゃないか!」
自分に気合をいれるように声に出した。
1階に下りて朝ごはんを探す。
母親には面接に行くと言った。
・・・喜んでいるようだ。
「受かってから喜んでくれよ」
罪悪感を感じながらトーストをかじる。
9時40分。
スーツに着替え玄関の前に立つ。
この瞬間は山本は狼になる。
息を殺し、耳を澄ます。
心臓がバクバクしているが山本は気にしない。
山本は外に出れない。
近所のババア達が井戸端会議をしているのだ。
・・・もう何分たっただろうか。
やっと声が聞こえなくなった。
山本は扉を開けた。
誰もいない。
勝った。
山本はそう確信した。
今日一日の達成感を感じていた。
外に出た瞬間、山本は絶望する。
いるのだ。
こちらに向かって歩いてくるババアがいるのだ。
井戸端会議が終わってゴミ捨てをして戻ってくるババアがいるのだ。
「あら山本君?久しぶりね」
そう声をかけてくるのはマー君ママだ。
マー君とは近所という事もあり家族ぐるみで仲良くしていた同級生だ。
山本がひきこもりがちになってからは会っていない。
―――もう何年ぶりだろうか。
「お、おはよう・・・ごございます。」
微妙に距離があった為、山本は声を張ったが聞こえたかはわからない。
マー君ママはなにかを言おうとしていたので山本は会釈をして早歩きで立ち去った。
歩きながら考える。
どこにいこうか。
知らず知らずのうちに足は駅に向かっている。
頭の中で誰かが言う。
「秋葉原に行こう」
駅につき山本は秋葉原までの切符を買う。
しかし考えてみるとSuicaにいくらかチャージしてあるので、切符を買う必要はないのだ。
俺ってつくづくうっかりだなと思いながら電車に乗り秋葉原へ向かった。




