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雑貨屋の彼  作者: 石ころ
4/8

四話目 正体

 私と、彼の出会いは何だった? 


 いつだった?

(そうだ、あの日は智春さんの命日で)


 どこでだ?

(智春さんのお墓の前で)


 私は何をしていた?

(私は手を合わせていて)




 私は、誰と、居た?

(私は叔父と叔母と一緒に来てて)




 彼は、誰を、見ていた?

(彼は)




 (彼は、二人を見ていた)




「ま、さか」


 そんなことあるのだろうか。だが、こんな偶然、存在するだろうか。


「これが、もし、本当だとしたら……」


 なんてことだ、納得がいく。しかもそれが自然じゃないか。なんでこんな簡単な事に気付かなかったんだ。


「彼は……」


百合子りりこ? どうしたのこんな所で」

「お、叔母さん!?」


 叔母が現れたことで一気に考えが吹き飛んだ。


「叔母さんこそ、どうしてここに!?」

「近くに友達の家があるの。遊びに行った帰りなんだけど……百合子は?」

「あ……、私も似た感じだよ。それで帰ってたんだけど、道に迷っちゃって」


 嘘はついていない。


「そうなの? じゃあ一緒に帰ろっか」

「うん。ありがとう」


 私たちは叔母の車に乗った。正直本当にありがたい。ここから家までは歩きだと一時間かかってしまうらしいから。


「どこに遊びに行ってたの?」

「えっと、この前見つけた雑貨屋さんに行ってたの。途中ナンパされちゃったよ~」

「ナンパっ!? もうそんなことされちゃう年頃なのねぇ」


 叔母は笑う。ナンパの理由が熱中症になりかけていたからだと伝えるとさらに笑った。


「叔母さんもナンパされた事ある?」

「あるわよ? でもすぐに敬太と智春が来て、『俺の女に手ぇ出すな』って!」


 本当に恥ずかしかったわと頬を赤く染める叔母。そんな事言われてみたい!


「それってどっちが言ったの? やっぱり、叔父さん? それとも智春さん?」

「二人が声を揃えてよ」

「どこの少女漫画っ!?」


 思わず声を荒らげてしまった。自分でも驚き思わず口を押さえたが、叔母も笑っていた。


「そうそう! 私も思ったわそれ! どこの幼馴染よって。もう恥ずかしくてしょうがないのに、二人それでケンカし始めたのよ? もう怒るしかなかったわよ!」


 少女漫画のシチュエーションに普通なら憧れるものだけど、現実になると別なんだな。


「なんて怒ったの? 私のために喧嘩しないで? 私を取り合わないで?」

「公園の真ん中で大声で喧嘩すんな非常識者共がぁ!」

「叔母さん口悪い!」


 ヒロインのセリフじゃないと言うと、叔母は私はヒロインじゃないわよと笑う。

 車内には二人の笑い声が充満していた。一頻ひとしきり笑ったあと、叔母はため息をつく。


「あの頃は、三人揃ってて、楽しかったなぁ」


 少し悲しそうな、寂しそうな声色でそう言うものだから、私は黙ってしまう。


「ごめんね、智春……」


 今度こそ泣きそうな叔母に、私は疑問をぶつけることが出来ずにいた。しかし、ソワソワしていたのが叔母に伝わってしまったらしい。


「百合子、何か聞きたいことがあるんでしょ?」


 言われてしまってはどうしようもない。私は重い口を開く。


「智春さんって、……どうして死んじゃったの?」


 運転している叔母の目は確かに前を見ているのに、どこか遠くを見ているように思えた。車はちょうど赤信号で止まる。


「智春は、私のせいで死んだの」


 エアコンの音が煩くなってきた。


「喫茶店で、結婚式の雑誌を拡げて、智春とお茶をしていたの。どんなドレスが似合うかなって」


 まるで己の罪を告白するようにゆっくりと、重く、深い声色で語る。


「途中男の子と手を振り合ったりして、可愛いね、あんな子が欲しいわね、なんて話をしている時だったわ」


 叔母は一旦言葉を止める。信号が青に変わったからだ。再び車を走らせる。その走りはこれまでで一番の安全運転かもしれない。


「私たちの席の所に、暴走車が突っ込んできたの。私は智春に突き飛ばされて助かったけど、智春自身は……」

「叔母さん」


 私は叔母を呼びかける。


「叔母さん、ほら前向いてよ! 危ないし!」

「そ、そうね。あぁ、そろそろ家ね」


 気付けば見慣れた道を車は走っていた。


「送ってくれてありがとう叔母さん」

「いいのよ。ついでだったしね」


 叔母は私の家の前に車を止めてくれた。私はドアを開け、叔母に挨拶してから出る。


「バイバイ叔母さん」

「じゃあね」


 私はドアを閉め、自分の家に入っていく。


「はあ……」


 家に入り、テーブルについた後、私は深くため息をついた。


「彼は、やっぱり……」


 私は今日手に入れた情報をそこらにあった紙に殴り書きしていく。

 彼の死亡原因、時期。成仏出来ない理由。一心不乱に書いていけばいく程、叔母が少し話してくれた智春さんの死亡原因と重なってくる。必然的に、成仏出来ない理由も見えてくる。つまりだ。彼の正体は。




「彼は、智春さんだ」




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