え?ミネヴァ?
ヒロインが出来ました
おいおい
エルフがいるぞ。しかも美女の。
ポカーンとしている俺の横でミントもポカーンとしている。
それはそうだろう。
オークになりたての俺ですらなにがなにやらわからない
「ミネヴァ…だよな?」
「火傷?目立つ?」
いや。このやり取りはもう良い。
鏡がないかと声をかける
ミントから鏡を借り受けミネヴァに渡すと頬に手を当てたままミネヴァもフリーズした。
「いったいどうなってるんだ…」
そう呟くとロンベールが話始める
「そういやあ旦那…この辺りに昔からある言い伝えですが…」
「なんだ?教えてくれ」
「へえ」というとロンベールは話始める
どうやらこの辺りには古くにエルフの村があったそうだ。
そこにセドと名乗る一人の魔法使いが訪れてエルフの娘に求婚した。
しかし魔法使いの禍々しい気配を感じたエルフ達は結婚に反対したのだが…
《娘を渡すか子々孫々消えぬ呪いを浴びるかどちらだ?》と迫った
しかしエルフはその嚇しに屈せず醜い姿になったとか。
「だからオラの村では、子供が悪さをすると「セドが来るぞ」って脅かすんだ」
(なんだそりゃ!!フラれた腹いせじゃねーか)
とも思ったが、もしやオーク一族って、そのエルフの子孫なのか?
ならばなぜ呪いがとけた?
もしかしたら…俺の蘇生呪文か?
今回の蘇生呪文はMPを大量に消費した
もしかしたら、強烈にかけた蘇生呪文で呪いを打ち消したのか?
ミントに聞いてみる
勇者だから詳しいだろう
返事は「よくわからない」という答えだった
しかし…ミントは続ける
「呪いが陰の力なら、蘇生は陽の力だから陽の力が勝ればあるいは…」
そうか。
陽の力で打ち消したのか
しかしチート能力を持つ、俺の総MPの半分を使ってやっと一人の呪い解除か。
これを村中の人間にそして子々孫々に続く呪いの魔力なんて桁違いである。
「まぁ色々あったけど呪いが解けて良かったな」
とミネヴァに声をかけた俺は気付いてしまった
オーク族の衣服は露出が高い事に。
不幸にも今、ここはオッサン率が高い。
目を閉じてもニオイだけでオッサンがいるとわかる程だ
というか、俺より先にオッサン達が気付いていたらしくチラチラチラチラ見てやがる
ロンベールに至っては股間を抑えて前傾姿勢だ。
俺はとっさに自分の服を脱ぎ、ミネヴァに渡す
《チッ》という舌打ちが聞こえたような気がしたが気のせいだろう
しかしミネヴァ美人だな
見とれている俺の横にミントが座り深々と頭を下げている
イッツ土下座だ
勇者が魔獣にそこまでするとは思わなかったが、ミントとしては思うところがあったのだろう。
「許してほしい」と頭を下げ続けるミント
その姿を困ったように見ているミネヴァ
暫く沈黙が訪れたのだがミネヴァの目が俺にヘルプを求めてきたので、ミネヴァも納得したのであろう。
俺はミントの肩を叩き声をかける
「謝るって勇気いるよな。よく頑張った」
顔をあげたミントはグシャグシャに泣いていた
「ごめ…だって…えぐっ…ごめなさ…」
金髪の美少女が台無しだ
…台無しだが、その涙にはなによりも価値があると思えた。
「さてと。ロンベール。俺達そろそろ帰るよ」
今日は疲れた。
MPも大量消費したし、早く帰ってベットに潜りたい気分だ。
「旦那。忘れ物ですぜ」
気を遣ってくれたのだろうか。
そこにはロンベールと愉快な仲間達が集めたであろう大量の牛○が籠から溢れださんばかりに積まれていた。
呆気にとられる俺に気付いたのか、私に手伝わせてほしいとミントが言い出した。
何度も断ったのだが、罪滅ぼしだと言ってきかない
謝罪の後に大量の牛○を運ばせるなんて
俺、性格悪そうに見えちゃうじゃん!!
そう思っていたが、ロンベールは笑顔でこちらを見てたので、悪者には思われていないみたいだ。
だが他にも断りたかった理由がある
魔獣の村に勇者を連れていくとか考えただけで恐ろしい
俺達は許したにしても他のオーク達は白い眼をするんじゃないか?
俺も中身はオークじゃないけど。
そんな心配をよそにミントとミネヴァは大量の牛○を背負って歩いていく
二人とも風にたなびく髪が美しいのだが牛○に巻き付きそうで俺はハラハラする
暫く経つとミネヴァもミントもすっかり打ち解けていた。
ミネヴァは○○の口紅が良いだの○○のドレスが似合いそうだと騒いでいる
無邪気な姿はとても勇者には思えない
今度ミネヴァに服あげるねなんて言ってたが、次も来るつもりなのだろうか?
そうこうしているうちに村に着く
ミントはオークが文明を持っている事に驚いている
魔獣は文明を持たないとでも思っていたのだろう。
そうこうしているうちに第1村人を発見
ミントの事とミネヴァの事をどう説明すべきか悩んでいるが、考えが纏まらないうちに近づいてきた
「ようミネヴァ!!いきなり綺麗になってどうしたい」
軽っ!!軽いよ!!
呪いが解けるってそんなものなの?
「ん…こちらの人間は?」
第1村人はミントを一瞥する
そうそう。そういうノリを期待…いや。
そういう反応が普通だよね
「客か?」
「え。ええ」
「そうか。ゆっくりしてけよ」
第1村人はミントと握手を交わし去っていってしまった。
他の村人もほとんどかわらない反応だがどういう事だろう。
ミントも呆気にとられている。
しかし心を決めたように口を開いた
「長老に会わせてくれないか?」
本来、オークの長老に勇者を会わせるのは禁忌だろう
もしミントが俺を騙していたら長老を失う事になってしまう。
しかし俺は承知した。
ミントが何をしたいか分かっていたし。
実はオーク村の長老はミネヴァの曾祖父だ。
ミネ爺なのだ。
会うのは簡単なのである。
長老の前に座ったミントは緊張しているようだ。
そう。
ギャルなミネヴァと血が繋がっているとは思えないくらいミネ爺は貫禄がある。
「人間の客人か?」
ミントの隣に座った俺は事の顛末を説明する
そしてミントは「身勝手なのは分かってますが今までの事を許してください」と頭を下げた
ミネ爺はニッコリ微笑む
「誤解がとけたのなら嬉しい。これで私と貴方は良き隣人となれる」
(えぇえええ!!ミネ爺!!懐深すぎだろ!!俺が女なら惚れてるぞ!!)
ミントの目がヤバイ…
年の差なんて障害じゃないわとか言い出しそうな雰囲気だった。
「ゴホン…ミネ婆は元気か?」
ミネ爺は既婚者ですよとさりげなくアピールするとミントの目が覚めた
(…危ねぇ)
「それよりミネヴァ…その姿はどうした?エルフの姿を生きて再び見れるとは…」
ミネ爺が涙目だ。
もしや…あのおとぎ話はマジだったのか?
セドという魔法使いが現れたのはミネ爺が子供の頃だったらしい。
内容はおとぎ話と変わらなかったが、セドという魔法使いが何者かは未だによくわかっていないらしいのだ。
ミネ爺は気を取り直したようにしたように声を出す
「さあ湿っぽい話はオークに似合わぬ!!村人を集めよ!!今日は一人のエルフと一人の隣人ができた良い日!!酒宴をやるぞ!!」
御意見御感想ありましたらよろしくお願いいたします