私とコウモリと従姉妹
……と前振りはしたものの、今回は四回目のコウモリの襲来について語りましょう。
四回目は私の従姉妹がお泊まりに来たときでした。ちなみにこのとき妹は陸上の選抜合宿にいっておりました。……あの子、運動神経抜群なんですよ。
50メール走6秒代でしたっけ? もう私の目にはあの子は宇宙人に見えますよ。
え? 私のタイム? 二桁ですがなにか?
こほん。
まぁ、この話は置いといて。コウモリという名の悪魔が来るまで私と従姉妹は居間でテレビをみていました。花も恥じらう女子高生がみていたのが、ゾンビ映画だなんて私はいいませんよ!
「きゃあっ!」
面白い場面がながれ、ふふふと笑いあっていた穏やかな時間は コウモリによって壊されました。ヤツはどこから現れたのか突如居間をすごいスピードで駆け回り始めたのです!
「なななななななにあれ?!」
軽いパニック状態になった従姉妹がそう問います。
「あー。コウモリだねぇ」
「コウモリ!?」
「うん。こーもり」
もうそのときはコウモリの襲来になれていたので最初こそ悲鳴をあげたものの、コウモリなんかより映画の続きが気になります。ジェスとアイネットはそのネギを一体どうするつもりなのでしょうか!? 手に汗握る緊張の瞬間です!
「いやいやいや。こーもり。じゃないから!!」
「だってコウモリだもん」
なんで否定するんでしょうか。コウモリだよ! 貴様がやつの何を知っているというんだ!!
「いや! そういう事じゃなくてね!? 怖くないの!?」
……ふっ。
私は従姉妹の肩に手を置いてニヒルな笑みを浮かべました。恐らく大人の色気がダダ漏れでしょう。
「怖い? はんっ。この私の辞書に怖いという文字はない」
「どうしようこの従姉妹どうしようもなくうぜぇ!」
従姉妹は私の手をばしっと払い落としました。痛。地味にいた。
そして口調がぞんざいになっています。
どーどー。落ち着いてー。本性出てますよー。抑えて抑えてー。
「まぁまぁ。よくあることだから。窓開けとけばその内出るって」
「慣れるくらいこの家コウモリでるのかよ!!」
うん。まぁ。そうですねぇ。これで四回目ですよー。二回目まではきゃーきゃー騒いでいた私ですが、もうコウモリをみてもまたか……としか思いません。
……は! 私ってば人間として成長してる?! 嫌だ。私ったら。さらに大人になってしまうのですね。ふふふふふふ。
「コウモリはやっ! 怖っ」
従姉妹が怯えています。
仕方ないですね。ここは お・と・な! な私がなんとかすることにしましょう。と私が立ち上がった瞬間頭上をコウモリが通過しました。
「ぎゃぁぁぁああっ!!」
やだ。コウモリはやい。こわい。もう無理。ビュンって! 耳元でビュンっでいった!! やだぁぁあ。おかーさん。いもーと。助けて!!!
「ちょ、ちょっと落ち着けって。夜中にでかい声だしたら迷惑だって」
「ううう。もう。こわい。こうもりやだよぉぉ。うわぁぁ。また来たぁぁあ!!」
「お前さっきまでの余裕どこいった」
「ぎゃ!コウモリがぁぁあ!!!」
私は従姉妹にすがりつきます。
えーん。こわいよぉ。
従姉妹は呆れた顔をしつつもぽんぽんと背中を叩いてくれました。すこしだけ私は冷静さ取り戻しました。よし、こんなときは
「おとぉぉぉさぁぁあんん!!!」
前回も大活躍? した父の登場です。私は大声で父を呼びました。ほら。あなたの可愛い娘なピンチですよ!
しーーーーん
聞こえてきたのはバチャバチャという水の音。あいつ! 風呂入ってるのか!! ちいぃぃぃ! こういうときにしか役にたたない癖して肝心なときに使えないぃ!!!
「ちょ、そんな怖い顔しなくても……出てくるのを待てばいいんでしょ?」
「きぃぃい! 可愛い娘のピンチに駆けつけないなんてぇぇ」
「おーい。なにかあったのかー?」
風呂場から父、いえ。禿散らした中年親父の声が聞こえます。
「こぉぉぉもりぃぃい! はやくでてきてぇぇ!!!」
「おー。またかぁ。あと五分まってな」
「十秒ででてこいやぁぁ――むぐっ!!」
叫んでる最中に従姉妹に押さえられました。むぐ! むぐぐぐ!!
「叔父さん。大丈夫ですのでゆっくりどうぞー」
な、何を言ってるのかね! きみはぁ! ぎゃぁぁあ! また近くをコウモリがぁ!!
私が恐怖のあまり声も出せなくなっていたというのにも関わらず 父は六分後に出てきました。
六 分 後
ですよ!? 五分って行った癖にぃぃ!!
それからぱぱーっと、とはいきませんが割とあっさりコウモリを出した 父がほめて欲しそうに見てきましたが、冷たい一瞥をくれてやりました。
思春期の父親に対する娘の信頼は少しのことであっさり地に落ちるのです。
以後、父はよく覚えておくといいですね! 可愛い娘は一番に優先しなきゃいけないのです。
ちなみに「逆に裸で出てきたらそれはそれで嫌だろ?」という従姉妹の問いにはしっかりと頷きました。
父の愛なんて報われないものです。仕方ないのです。




