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星海の光  作者: ZEXAS
第三章 魔界を震わせる小動物
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ルックと魔界異変考察




視点 ルックスード・ワン=ディワロン




素振りこそ見せないが、僕は目に映る景色に心を震わせていた。

目に見えるもののみが真実。実際に立ち会って初めて知ることができる。それらを信条とし、城の内側はダール兄さんに任せて外を見て回っていた甲斐があったと、僕はその日改めて思った。


それはこの国で最高の強さと目立ちたがりの称号を賭けて繰り広げられる帝国一の闘技大会でのこと。年端もいかないであろう小さな少女が凄まじい大進撃を見せつけてきたんだ。決勝まで上がってくるであろう黒陽にばかり気を取られていたおかげで初めてみた時はそれはもう度肝を抜かれた。


2mはあるだろうに、更にガタイまで良いというまさに重戦士といった風貌の大男でさえ満足に扱えない大剣を、その少女は奪っただけでなく軽々と振り回した。大男はそれを見事にかわし、相手がただ者でないと分かったのか本気を出した。

何故か少女は一度弱腰になったものの、今度は大剣に冷気を纏わせ、知略的に大男を攻めた。最後には大男が降参し、少女は闘いを制した。


僕はただただ唖然としていた。観客も同じ気持ちだったろう。見たことも聞いたことも無い光景だった。何も考えず、僕は試合を終えたその少女へ挨拶しに行った。

自分で言うのはなんだが、僕は王族としての気品や立ち振る舞いをそれなりに身に染みつけている。だが相手は小さな女の子。王族らしく振る舞えば緊張されてしまうのではと思いなるべく壁の無いくだけた話し方をしたのだが、何故か逆に微妙そうな対応をされてしまった。長話はできないと諦め、僕は軽く挨拶を済ませてその場を去った。


その次の試合も、少女は見た目からは想像出来ない実力を見せてくれた。魔法を防ぐ障壁や相手を麻痺させる魔法など、見たことも無い魔法などを難なく操った。

少し陰湿そうな顔に似合わず常識的で人当たりが良く、様々なエルフの里から魔法を体得して回っているという、歩く魔法の教科書と言われたジセルプラを少女は魔法対決で降参させた。ジセルプラはこの大会において黒陽の次に気にしていた男だっただけに、僕の驚きは大きかった。


そして、その問題の黒陽とスターライト・エクスシーションが自然と同じ闘いの場に現れる。

自分で言うのはなんだが、僕はこの闘技大会へ出場する戦士達に引けを取らない実力を有していると認識している。そんな僕に対してほとんど本気を出さなかった黒陽と、手数の底の見えない少女ライト……どちらも力が未知数であり、これからどちらかの力が分かる。

全く目の離せない試合だった。剣士以前に、多少戦いの心得がある身として興味が湧かない訳がなかった。


両者共に余裕を見せた様子は全くなった。黒陽は元々隙を見せる男では無いのだが、今はそれを超えるような警戒と集中をしていると遠くから見ていても分かる。対する少女ライトも、黒陽と対面した時から慎重な動きを取っている。

多数の観客は突如現れた強者達に湧き上がるが、目利きの良い戦士や冒険者はたまったものじゃないだろう。近い内に強力な商売敵ライバルになるかもしれない逸材が2人もこの街に現れたんだ。今の勢力図にどれだけの影響を及ぼすのか、しっかりと目と頭に焼き付けて定めなければならない。


勝負はまさに力と技のぶつかり合いだった。


少女が分身したかと思うと、徐々に黒陽との距離を縮めていき、最後には黒陽に投げ飛ばされた。

酷く身体を打ち付けただろうに、少女がすぐにその場を離れれば、少女が横たわっていた場所に大きな穴が出来ていた。普通に考えれば、当たれば少女は無惨に死んでいただろう。


流石に少女も降参するかと思いきや、何と魔力のみで構成された剣を呼び出して黒陽に切りかかった。ナマクラとはいえ鉄の塊である黒陽の大会用の剣を容易く斬り分けたその威力は、見かけ倒しの魔法剣ではないことを示していた。

もはや戦場……どちらかが倒れるまで続くと、僕はその時悟った。


……が、すぐに決着は着いた。

少女がフィールドを氷の嵐にするという前代未聞の大魔法を発動した。会場にまで冷気が飛んできて、辺りは冬より寒い異常空間となった。

そして少女が嵐の上方から飛び出したかと思うと、その少女より黒陽が高く速く跳び、少女の背中にかかと落としを決めた。少女は立ち上がる事が出来ず、そのまま黒陽のKO勝ちとなった。


少女は担架に乗せられて医務室へ運ばれていったが、しばらく観客の2人へ対する賞賛の声は止まなかった。それだけ凄まじい闘いだった。


背後にいる家臣の目配せに僕は頷く。

本当は少女の容態を確認しに行きたいところだが、今日は僕も戦士の1人。試合に備えて軽く運動して万全のコンディションにしなければならない。

ただでさえさっきの試合の時間は運動の予定だったところを僕の我が儘で観戦することにしたんだ。今の休憩の時間で試合に支障がでない程度に調子を整えるのは簡単な事ではない。

だが相手は黒陽。実力未知数の彼に全力で挑まないのは負けにいくようなもの。何としてでも身体を仕上げなければならない。


……僕は負けたら何を要求されるんだろう。



────────────

──────────

────────





─魔界の都市ミールグ




目を覚まして辺りを見回すと、黒陽が瞑想か何かしててジッとしているのが目に留まった。

懐かしいといえば懐かしい。僕の今を決めたあの日が夢の中で出てくるとは……。


そう、僕は国の外へ旅に出る事をずっとずっと夢見てた。だが、出来れば楽しそうな仲間と共に旅をしたかった。

1人で旅して行く先で仲間を作ればいい、いやでもやっぱり同じ国に居る者と行きたい……その堂々巡りが長く続き、兄上に許可を取ってから幾月幾年と時間が流れた。


このままじゃ一生旅に出ないんじゃと自分で思っていた矢先に現れたライトちゃんと黒陽。幸運な事に2人は兄妹(全然見えないけど)で旅人だと言うものだから、それが分かった瞬間に僕の腹は決まった。


黒陽の要求した謎の本を差し出すか最初は迷った僕だったが、2人の旅の仲間に入れてもらうのと、価値を見いだせない本を天秤に掛けた結果は考えるまでもなかった。ディワロンの家訓は『思い立ったが吉日。目の前の目標が全て』だ。賢くないが、それでいい。


なんやかんやで僕は2人の旅仲間に入れてもらい、なんやかんやで港に着き、なんやかんやで吸血鬼の女の子エイルが仲間になり、なんやかんやで魔界へ行き、なんやかんやで『本』の持ち主探しをしている。


必要以上に喋らない凄腕冒険者の黒陽。ミステリアスそのものな常識壊しのライトちゃん。気品が溢れてるが主人には少し甘いところが可愛い吸血鬼のエイル。……ここまで個性的な仲間と一緒に旅をできるとは思っていなかった。単に王子の肩書きしか無い僕がまるで普通の一般人レベルだ。


…………さて、ここ最近の魔界の情報を黒陽と集めていたところ、どうにも人間の勘が頭をつつく存在がいた。

ライトちゃん達が向かったチリークロワッサン城のチェリスが地方自治官だとすれば、その地方自治官達の上にいる存在。クローネドゥペフィル城に住まう夜の王クローネ。

チェリスの噂話からは感じなかった、何かゾワゾワとしたものを僕はクローネの噂話から感じた。ビンゴでないにせよ、何かよろしくない事をしている気がしてならない。


うーん、黒陽に相談してみようか?


「黒陽」


「……何だ」


瞑想中みたいだったけど、僕の呼びかけに返答してくれてるから大丈夫かな。


「クローネをどう思う?」


「……夜の王のことか?」


「そう。黒陽は何か感じた?」


「…………。……噂から汲み取れる情報だけでは正直判断できないが、奴は人間からすると正常ではない」


「どういうこと?」


「……簡潔に言うと、奴は人間を定期的に殺している」


薄々そんな気がしてはいたが、聞きたくない事でもあった。僕はたまらず眉間にシワを寄せていたと思う。


「……あくまで推察だ。……それと、奴は吸血鬼だ。定期的に人間を殺していてなんらおかしな事は無い」


黒陽の言うことは一応もっともらしい。クローネは人間を殺すことを何とも思って無いだろう。

他の生き物を殺す事を生業としてる人間と何ら変わりはない。それが当然の事なんだ。僕が怒ったって仕方のない事ではある。……許せるかは別だけど。


「そういえば……チェリスとかいう吸血鬼も人間を殺してるのかな。だとしたらライトちゃん達、凄く危ないんじゃ……」


「……問題無いだろう。アイツ(ライト)は強い。……チェリスは人間を殺した事は間違いなくある。吸血鬼だからな。……だが、クローネとは別だ。殺しを感じさせない動きをしている」


「殺しを感じさせない?」


ライトちゃんが強いのはなんとなく分かるけど、それでも不安だ。黒陽が大丈夫と言うのだから大丈夫なんだろうけど、やっぱり不安だ。

……エイルちゃんも強い事を祈ろう。


「……要するに滅多に人間を殺らないんだろう。機会があったとしても慎重に、計画的に、静かに殺す。誰にもバレないようにな。……実際、噂からではチェリスが人間を殺したという意を汲み取る事は出来なかった。奴は吸血鬼らしい暗殺者だ」


「じゃ、じゃあつまり、クローネはもっと分かりやすく積極的に人間を殺してるって事かい?」


「……そうだ。……恐らく人間を殺す様をわざと見せているんだろう。……何故そんな事をするかは俺には分からない。推察が外れているだけかもしれない」


黒陽の言い方だと、吸血鬼は普通は誰かに見られないようにそっと人を殺すらしい。もしくは自分で手を汚さず、何らかの方法でターゲットを仕留めている。

だがクローネは大っぴらに人を殺す。権力者としての見せしめか、ただ見てもらいたいだけなのか。


「……ふむ、やはりお前は気になるか?」


「まぁね。人間が殺されているのかもしれないんだ。真実だとしたら何処の人間が殺されているか知りたい」


「……よし、クローネを調べよう」


僕は黒陽がそんなことを言うとは思わなかった。……なんというか彼は達観しているというか、種族の違いなんか気にしない人って感じだから。


「……ん、どうした?」


「あぁいや、黒陽って確証すら感じないのに行動する事もあるんだなって思ってさ」


「……そうだな、いつもはそうだ。だが今回はお前のような普通の人間がいる。……普通の人間の意見というのも時には大事だ」


3割くらい気まぐれか。……それでもいいさ。このモヤモヤが晴れるなら。


……こうして、黒陽と僕はクローネの調査をするために動き出した。ライトちゃん達に吉報を渡す事に繋がるといいんだけど……。





これまた久しぶりの更新です。


ただでさえ進んでないのにswitch買っちゃったんですよね。もちろんゼルダも一緒に。

今のところテレビに繋いでばかりなので忘れてしまいますが、switchって携帯機なんですよね。恐ろしい。

ブクマしてる作品で途端に更新速度が遅くなったものがあったら『あ、ゼルダ買ったな』とか『MHXXに備えてリハビリ中かな』とか『ニーアでケツでも眺めてるなエロい人め』とか考えてしまいます。


どうでもいいですが、ここ一年間の間に、作者はPS4にswitchと2つもハードを買ってるんですよね。……最近欲しい物は高かろうと無理してでも買う癖が付いてしまってるんでしょうか……あまり良い傾向じゃないかもしれませんね。

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