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星海の光  作者: ZEXAS
第三章 魔界を震わせる小動物
41/50

魔界へ




ー港町スレッチ 船着き場

視点 ライト




魔界への旅立ち当日。オレ達4人は町の船着き場へ来ていた。

オレは船で例の遺跡へ向かうのかと思っていたんだけど……船着き場に使えそうな船は無かった。


「ねぇ、今日は船乗りさんや漁師さんはお休みなんじゃない? どうすんの?」


「……なんの話だ?」


「え……あれ? 海に浮かんでる遺跡に行くんでしょ?」


「……そうだが?」


おかしい。なんかおかしいよ会話が。


「船が無いんですけど」


「……お前が言った通り今日は船は屋内で休んでいる。遺跡へは飛んでいく」


…………ああー、そう言えばオレ飛んでるとこダークSUNに見せたことあったな。ここで「よし、空を飛ぼう」とならないくらいにはオレの人間度はまだまだ高いな。ちょっと安心。


「黒陽、僕も理解が追いつかないよ。飛ぶってどうやって……」


「……お前は俺に掴まっていればいい。ライト、お前は着いて来い」


「りょーかい。エイルは飛べる? なんなら手を繋いでればオレの力で一緒に飛べるけど」


「いえ、着いていけます」


「そうなの……『吸い寄せられモード起動』」


オレは少しがっかりしながら腕輪を着けている左腕を上に掲げて特別な言葉を呟いた。

オレの身体は宙に浮き、地面から30cm程高い位置で滞空した。思えばブレーキが効くのでヘリコプターのようにその場に留まることもできるのだ。

空中で止まれるとアニメーターさんも死なずに済んでいいよね。……これは空を飛ぶキャラの必至スキルなのだ。


「……人間の癖に凄いですねライト様は。平然と空を飛ぶ人間なんて初めて見ました」


エイルはオレを褒めながらフワッと浮いて、オレの側へ来た。


「えっ、でもお兄ちゃんも飛べるらしいよ。……あ、お兄ちゃん人間じゃなかったね」


ダークSUNが人間じゃないって薄々気付いてた……ような気もするけど、昨日ようやく真実を知ったばかりだからまだ慣れないな。


「もしかして、私が伝えるまで気づいていなかったのですか?」


「……あ、うん。普通に人間だと思ってたよ」


「貴女達の馴れ初めについてちょっと詳しく聞きたいところですが、長くなってしまいますね」


エイルの向いている方を見るとダークSUNの足に変なオーラが漂っているのが見えた。エイルはダークSUNがオレ達待ちだと察してそう言ったんだろう。


「いいよお兄ちゃん。ちゃんと着いてくから」


ダッ!


「うわぁ!?」


エイルの読み通り出発待機状態だったダークSUNは岸壁を凄い速さで駆け、海へ飛び出した。その肩を掴むルックの身体は浮いていた。


「行こうエイル、見失ったら追いつけないよ」


「そうですね」


オレは左手をダークSUNの向かっている方向へ向けて『吸い寄せられモード』の力を上げていった。


ダークSUNはというと、十秒程の滞空時間を経て海面へ足を着けたかと思うと、そのまま海上を走り始めた。


「……あ、ありゃ確かに人間じゃないね。……ふぅ、ターゲットロック、平行移動……」


この吸い寄せられモードには動いているものを捉えて追尾する機能もある。今回はダークSUNをロックした。

平行移動は文字通り高度を維持して移動することだ。普通に追尾してダークSUNの真後ろに行ったら水しぶきをモロに受けるからね。


あぁ~、それにしても潮風がとてもいい感じ。海の上を飛ぶって悪くないね。


「エイル、ちゃんと着いてきてる?」


余裕が出来たので辺りを見回すと、エイルはちゃんとオレの横にいることを確認できた。


「私は人間ではないのでライト様が心配することはありません。……それにしてもこの速度で手を離さないあのルックスードとかいう人間……ただ者ではありませんね。ライト様も」


なんか妙に引っかかる発言が多いな。飼われてやっていた? 数年も?

ルックはまぁ……素直に凄いと思う。あの顔で更に強くて根性もあって一国の隠れ王子。びっくりするくらい主人公にぴったりだなぁ。


「エイルはまたどうして奴隷なんてやってたの?」


「ふふ、今の私とライト様の関係と同じです。人間観察……とでも言いましょうか」


うわぁ……流石吸血鬼は考える事が訳分かんないなぁ。


「吸血鬼は人間なんて手で払えば死ぬような脆く弱く等しく価値を感じない存在だと認識してるとオレは思ってたんだけど、エイルは人間に興味があるんだ」


「えぇまぁ、私もかつては人間だったので」


「ええっ!?」


サラッととんでもない事を言ったよこの子。……元人間だったのか。いや、オレも似たようなものだし驚くことでもない……のかな?


「知ってますか? 人間は辞められるんですよ」


「うーん、まぁ知ってる」


そういえば吸血鬼に血を吸われた人間は何かの条件下でなら吸血鬼になるって聞いたことあ……ん?


「ねぇエイル、オレのこと吸血鬼にしてないよね?」


「あら、ライト様って博識なんですね。大丈夫です、あなたに頼まれるまではそんな事しませんよ」


「……ふぅ、ちょっと焦っちゃったよ」


吸血鬼と言ったら夜の者だ。真の力は暗い所でのみ発揮されるけど、日の光りにはとにかく弱い。

オレもどちらかというと夜の方が好きだけど、やっぱり日に弱い生活なんて考えたくない。行動時間をどうしても制限されるあの苦しみはゲームで散々味わったもの。


「吸血鬼になるのは嫌ですか?」


「えっ? うーん、フレーズ的に格好いいイメージがあるから憧れはするんだけど……色々不便そうだからまぁ、その……嫌かな」


「そうですね。憧れで吸血鬼になったら後悔すると思いますよ」


そんな事を話している内に、ダークSUNの前方の方から何かの影が見えてきた。恐らくあれは遺跡の影だ。見た感じそんなに大きくない。


次第に形がよく見えるようになり、やがてオレ達は遺跡の上に降りたった。

海の上に晒された天井のない遺跡は、例えるなら学校の教室1つ分程の広さだった。壁がほとんど無いぶん開放感はある。


ルックは王子様が見せちゃいけないような情けない倒れ様を晒していた。


「ルック、だ……大丈夫ですか?」


心配になって声を掛けると、ルックはすくっと起きあがった。


「……いやぁははは、お見苦しいところを見せちゃったね。僕ならほら、大丈夫!」


空元気なのかなんなのか、それでも強く立ち振る舞うルックは元男のオレから見てもなかなか格好良いものだった。……いやホント強いよルックは。


「あんな目に遭ってよく吐きませんでしたね……」


「確かに、人の身でありながらこのタフさは中々なものですね。貴様、今から私は貴様を名前で呼ぼう。ルックと言ったか?」


や、やっぱりエイルはルックに対しては高圧的なのね。人間で更に異性だから? ……ん、これはひょっとして一種の恋仲条件なのでは? そうでないと、今は願おう……。


「お褒めに与り光栄であります、姫様。その通り、私めの名前はルックと申します」


わぁ、ルックがキモい!


「ちょっと有り得ないわね」


「そんな、せっかく君に合わせてみたのに。僕王子なのに」


そりゃあ王子だもん。さっきの対応は不相応だよね。


「下の者が上の者を敬うのは当然の事だわ。でも、不思議と貴様にその様は似合わないわ。私は貴様……ルックと対等に接する事にしたの。変に気を使わないでくれるかしら?」


「……なるほど、それなら悪ふざけはやめよう。改めてよろしくね、エイルちゃん」


「ええ、よろしく」


……仲間として凄く良い傾向の筈なのに、オレの心の雲行きは怪しくなってきた。秘めたる独占欲が表に出てきそうだ。


「ところで黒陽、こんな遺跡でどうやって魔界まで行くんだい?」


ルックがそう言って、オレはダークSUNの方を見た。


「おおっいつの間に……」


オレ達が話している間にダークSUNは既に魔界へ行く為の準備を始めていたみたいだ。

遺跡の端と端に立っている二本の柱を繋ぐように、先の見えない黒い幕が出ている。たぶん魔界への境界みたいなものだ。


「……下手に見つかると面倒だ。後に続け」


言うが早いか、ダークSUNはそのまま黒いゲートに飛び込んで消えてしまった。


「お先に失礼するよ」


オレがポカンとしていると、ルックもさっさとゲートへ飲み込まれていった。


「ね、ねぇエイル! これ大丈夫なの?」


「不安なのですか? じゃあ私が手を繋いであげましょう」


「えっ、わっ!?」


手を握られる嬉しさを堪能するよりも前に、オレはエイルに黒い幕に引きずり込まれていった。


黒い闇の中、身体に冷たい何かが突き抜けていくような感覚がした。まるで、負の感情を煽るような不安でモヤモヤした嫌な感じだ。触れているエイルの手が凄く心強い。


しばらくしない内に魔界へ着いた。

境界から出てまずオレはエイルを見た。そして、心に余裕ができたら周りに目を向けた。


「どうてすかライト様、ここはとても居心地の良さそうな所でしょう?」


「……ちょっと変な感じかな。なんだかオレが招かれざる客のような、退席を促進されてるような感じ」


光の無い世界だった。空一面真っ暗で、ここには灯り1つ無い。でも近い距離のものなら結構見える。


「それに、空はこんなにも真っ暗だ。星の光さえ見えない」


「そうですね。夜目の利く私のような者は日の光の無いここは楽園みたいなものですが、星空が無いのはとても惜しい事です」 


「常に星空を見れるなんて都合のいい所って無いものなんだね」


そんなロマンチックでファンタジーな世界あるわけないよね……でもここ仮にもファンタジーな異世界だよ? もっと頑張って欲しい。


「……ライトちゃんは随分肝が据わっているね。こっちはプレッシャーやら何やらのせいで寒気が酷くて」


「ななっ!?」


よろよろと近づいてきたルックは、そのままオレを抱っこして抱き締めた。


「思った通りライトちゃんはふわふわふかふかで暖かいなぁ……」


「あ、あのルック……オレ達はそんな進んだ関係ではないですよね?」


「何言ってるんだいライトちゃん。これは妹へのスキンシップみたいなものだよ。僕には妹がいなくてね、もし妹ができたらこうしてあげたかったんだ~」


オ、オレが妹……。精神年齢はルックより上の筈なのに……そんなにオレが子供っぽいかーっ!


……でも、オレはオレで人肌が少し恋しくなってきてたところだ。ルックもオレと同じく魔界の空気に当てられて変になってるんだろう。

ここはお互い様ということで、甘んじて受け入れようじゃないか。貸しを作る形でね!


「仕方のない人ですねルックは。妹の事はちゃんと守って下さいね」


「言われるまでもないさ。ふぅ、ライトちゃんのおかげで気が楽になったよ」


自分より大きなものに包まれて、オレも少し安心したんだけど、それは言わない。まるでオレが怖がりな甘えん坊だと思われちゃうからね。


「そんなに良かったのなら、またしてもいいですよ」


「……ライトちゃん、その言い方は男を勘違いさせるよ。僕でさえちょっとドキッとしちゃったじゃないか」


確かに今の発言はまずかったなぁ。たまに思った事をそのままポロリと言っちゃう癖は直さないといけないかも。


「き、気をつけます」


「……さて、これからどうするのかしら? 黒陽」


お喋りも一段落着いたところで、ずっとオレ達を見ていたエイルが黒陽に話し掛けた。


「……そうだな、まずは人間2人に魔界ここに慣れてもらう。その後で情報収集に移る。本の回収は情報を仕入れてから考える……分かったか?」


「そうね、ライト様達人間にはここは少し苦手なようだし、少し遊び歩いて慣れてもらうのは良い考えだわ。まずは宿でも探すのが一番かしらね」


「……ああ、もう行くとしよう」


「ここは2人に任せといた方が良さそうだね、ライトちゃん」


「はい」


エイル達がいるからただの地元案内みたいなものだけど、とにもかくにもオレ達の魔界大冒険は始まったのだ! じゃんじゃん!








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