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星海の光  作者: ZEXAS
第二章 吸収と繁栄の帝国
34/50

闘技大会(前編)



すごーい……昔の響さんの日常並に更新してるー……。


その代わり今回は5000文字前後です。

こうすると改めて気付くのですが、5000文字くらいというのは確認も容易でテンポもよくしようと心掛けるようになったり投稿頻度が上がるようになったりと超お得です。

欠点を上げるなら自分としては読み終わりが物足りない気がするのですが、テンポの為には止むを得ないですね……





ーアプソペリティ帝都

ー闘技場 闘技台

視点 ライト




「ぐへへっ嬢ちゃん、悪いが俺は勝利を譲るつもりはないからな」


オレと対峙する大男のフェイヴォンはにへらと笑いながらそう言った。

ここに来る奴らは基本的に戦闘狂らしいから、オレみたいな小さな女の子に情けで負けることは無いからさっさと辞退しろ的な笑みなんだろう。悪意は感じないし。


筋肉モリモリに兜以外はフルプレートに重そうなデカい剣のほぼゴリラ状態。対戦相手はオレだと分かっていたからその凄まじい威圧感で戦意喪失させようとしたんだろう。


「オレみたいなのと戦うのが恥ずかしいの? 大丈夫、オレは負けるつもりでここに立ってる訳じゃないから」


「大した胆力だな。ならこれで怖じ気づくといい。うぉらッ!!」


大男のフェイヴォンは大剣を振り上げ、そのまま地面へ投げ落とした。


ズドン!


振りからしても重々しいその剣は土埃を上げながら地面に刺さった。

その剣は刀身の3割は沈んでるのにオレの背より高かった。


正直ちょっと怖いけど、オレの身軽さからして当たる気はしない。そう心に言い聞かせて恐怖を抑えた。


「会場が冷めちゃうよ。そうやってるならこっちからいくからね」


オレは大剣の刀身を掴んで引き抜いて、両手で柄を持って構えた。

ハトルのオッチャン曰くオレの身体は見た目関係無しに超人レベルの力を持っているって話だったけど、本当だったみたい。竹刀くらいの重さしか感じない。


直後に周囲からどよめきが起こった。フェイヴォンも驚いた表情を浮かべてくれてオレの心は少し浮ついた。


「や、やせ我慢はいけねえぜ嬢ちゃん。そんな細腕で無理して持ってると骨がポッキリいっちまうぞ」


「とりゃっ!」


ビュォン!


「ッ!!?」


オレは鈍く風を切る音をたてながらフェイヴォンの膝に目掛けて大剣を振った。

フェイヴォンは巨体に似合わぬ身のこなしで俺の一撃をかわした。


会場が一瞬シンとなって、再びざわめきが起こった。


「……あ、危ないところだったぜ。あんなの食らったら俺は今ごろ木偶の坊になってたな」


「どう? やせ我慢に見える?」


この大剣を含め闘技場側が用意した武器はみんなナマクラだから、剣みたいな見た目でも実は鈍器だ。

でも、重さもあって金属製なのは間違いないから普通に鈍器として扱えば非常に危険な武器でもあったりする。


この大剣は滅茶苦茶重いだけの余興用というかネタ武器みたいで、フェイヴォンもそのつもりで持ってきたみたい。

それが裏目に出るとも知らずに。


「その身長でその怪力……嬢ちゃんドワーフか?」


ドワーフ……身長1メートルにも満たない小さな種族。小さいながらに怪力で手先が器用。少し長い耳が特徴。

何故かエルフと違って酷い差別をされることも少なく人間とは友好的。温厚な性格が相まって人間とのハーフも少なくない程。


そのハーフの成人がちょうどオレくらいの身長(110~140cm)らしい。


「人間だよ」


ブォン!


「のわっ!?」


「ドワーフはこんな好戦的じゃないでしょ?」


ブォンッ! ブォンッ!


「……っ!! 確かにな」


話しっぱもなんなので連撃してみたものの全部かわされた。こいつ、ゴツい見た目の割になかなかやりおる。


「しかしまぁなんて力だ。散々鍛えた俺でさえ上手く扱えないその鉄の塊をそんな細腕で……。こりゃ全力でいかなきゃここで敗退だな。一回戦で終わるなんて俺は嫌だぜ!」


フェイヴォンは背中に抱えていた大きめの剣と盾を取り出した。

顔以外フルプレートなだけあって凄く様になってカッコいい。筋肉モリモリ超戦士って感じ。


「戦士にエモノを抜かせたんだ。痣では済まないぜ!」


「見た目に惑わされちゃダメ、ここは闘技場なんだから。遠慮なんか要らないよ」


「ならば情けも全力で捨てる! うおぉぉおお!!」


ギッシャンギッシャンと音をたててフルプレート筋肉マンが迫ってくる。その様はまるで猪だ。


「ふんっ!」


「……っ」


キシャン! ギリリリリ……


振られた縦切りを大剣で受け止めた。金属同士が擦れる嫌な音と衝撃が大剣の柄から腕から身体へと伝わっていった。

なんとか攻撃を凌げた安心感からすぐに嫌な感じがやってきた。


「……んっ」


オレは先に身を引いた。


この嫌な寒気……剣を使った対人なんて初めてだからかな。

今までが上手くいってたからオレは闘いに期待しすぎてたのかも。なんかちょっと……怖いなぁ。


「嬢ちゃん、それは芝居か? 初いフリをするペテンってヤツか?」


察されてるけど深読みされて空回りしてるみたい。助かった。

というか、こんな震えどうやって演技してると思えるんだよ。そんな名俳優に見えるのかなオレ。


「はぁ……ふぅ……」


一息入れたら思いついた。

オレに調子を与えていたもの、それを使えば解決。単純にして明解、それは魔法だ。


オレは剣の柄を握る両手に初心者破壊魔法『氷結』を纏わせ、そして剣を包むように念じて放った。


すると大剣は凍てつき始め、とてつもない冷気が大剣から放たれるようになった。


「な、なんだそりゃあ!? お、お前っ……魔法を使ったのか!?」


お前呼ばわりということは余裕が無くなったな? ふふふ、読み通りギャラリーも驚きっぱなしのようだし調子が出てきたぞ。


「剣に魔法を纏わせたんだ。今のコイツはただのナマクラじゃない。氷魔剣だ!」


多分鈍器のままだけど。


「てえぇぇいやっ!」


キィン! ギャリギャリギャリ


「ぐぅ……!」


オレの横払いは剣と盾で受け流された。

オレは更に続けて横払いをした。


「……ふぅっ、同じ攻撃ばかりじゃ相手の体力を温存させるだけだぜ」


攻撃の度に確かに少しずつ感じるオレの作戦の成功。キラキラと輝くその証。

フェイヴォンの剣の刀身には氷が張り付き、冷気は周囲を包む。狙い通りだ。


「……嬢ちゃん、アンタ子供じゃないだろ?」


動きがだんだん鈍くなってきたフェイヴォンはそうオレに言い放った。現状を理解したようだ。


「見た目に惑わされちゃダメって言ったでしょ? それに、女の子が頭で戦うのは当選でしょ?」


……いやまぁ、ホンモノの女性には負けるけどさ。見た目的にその年頃の子よりは頭が良い筈だ。


なんて考えながら攻撃を続けていると、いい感じに身体も冷えて剣も重くなったせいかフェイヴォンはとうとうオレの攻撃に弾かれ、尻餅をついた。


「ぐっ……なんてお子様だ。くそっ寒いな」


オレはなかなか立ち上がれないフェイヴォンの頭上に大剣の平たい部分を乗せた。


「えへへ、決まりだね」


オレがそう言うと、フェイヴォンは以外にも両手をあげた。両手をあげる……すなわち敗北を認めるということだ。


「既に屈辱的だが、これ以上惨めな思いはしたくないんでな。こういう場においてあがきはしない主義なんだ」


どうやらオレの勝ちみたいだ。




ー闘技場 選手控え室




オレはダークSUNのオススメ通り、腕試し兼技術向上の為に闘技大会へ参加し、先ほど一回戦にて勝利を獲得していた。

戦争中の国に相応しく一回戦から質の高い戦士との対決になったが、オレはそれでも勝利した。


闘技大会はトーナメント式で、参加人数は16人。その16人の強者達は事前に行われた予選にて選ばれ、こうしてトーナメントに上がってくる。そして4回の勝利を納めた者が優勝となる。


控え室に戻って椅子に座っていると、何やらあちこちから視線を感じた。噂の流れというのは本当に速いみたいだ。

ちなみにダークSUNの指示でオレとダークSUNは離れている。オレは何の意味があるかは聞かず黙って従っている。


ちょっとダークSUNの動向が気になって目で探していると、1人の青年がオレの方へ歩いてきた。

少し癖のある金髪に綺麗な顔立ちに澄んだ青い瞳。ちょっと値が張りそうな意匠の軽装……もしかして噂のダール・ワン=ディワロン王子か?


「お嬢さん、こんにちは。見事な腕前だったね」


こいつ、名も名乗らずいきなりフレンドリーな奴だな。

知ってるぞ。アイムフレンドリーって言いながら近づいてきてゼロ距離攻撃してくる凄い失礼な奴だろ?

オレはこういう壁の無い奴は嫌いだ。野郎だと特にな。女性は良いんだ、損が無い。


「……あー、えぇー……」


オレは言葉を探してまともに反応出来なかった。

無視するか突っぱねたいんだけど、相手は十中八九この国の王子だから泥を塗る訳にもいかない。


「君、なんて名前なんだい? おっと失礼、僕はダール。君と同じこの大会の参加者さ。君は?」


「……え、えっと……ライト。スターライトって言います」


完全に向こうのペースだ。今になって影を潜めていたコミュニティ障害が表に出てきた。正直言って苦手なタイプだ。


「綺麗な名前だね。ライトちゃんって呼んでいいかな?」


「あ、はい……」


誰か助けて……。悪気は感じないし実際面倒見が良さそうで良いお兄さんな人なんだろうけど、なんか心が拒絶するんだよね……。


「ありがとうライトちゃん! 今日はよろしくね!」


……あ、オレ分かっちゃったよこの人がダメな理由。

眩しいんだ、この明るくて優しくて完璧っぽい人が……。心なしか後光が射してるし。

ああ、悲しきかな……。




ー闘技場 闘技台



「一回戦、見させてもらったぞ」


二回戦がやってきた。

オレに対峙するロープを纏った戦闘マンっぽくない細身の男ジセルプラは合間見えるやそう言った。


「じゃあお情けで二回戦まで来た訳ではないことは知ってるんだね」


「もちろんだ。いきなり手の内を見せるとは愚かなことをしたな娘よ。間合いさえとればお前はどうしようもあるまい。くふふふ!」


……こりゃ酷い。悪人みたいな台詞にその言い様は魔法使いか道具使いって知らせてるようなもんだ。

ただ向こうも手の内は見せてないから断定はできない。……相手の対戦くらい見とけばよかったな。


「ふふふーん、間合いなんてのは詰めなくてもいいのよ。飛び道具があるからね」


そう言ってオレは右手に破壊魔法対人型『ウィークパラライシス』を込めた。見た目は緑色のバチバチだ。


この魔法は非殺傷魔法で、変性魔法の『麻痺』と『サンダーバレット』を合わせて弱くしたような魔法だ。

当てても生きた仏像のように固まりはしないので殺すのが目的じゃない時は便利だ。

ただ、非殺傷とは言っても頭を狙い続けて長時間脳を麻痺させたらそりゃマズい事になるので注意が必要だ。


「詠唱無しで発動待機状態だと……? そういえば一回戦の時も……単なる素人創作魔法特有の『偶然』型だと思っていたのだが……いや、あれもその類の魔法と捉えるのが自然だな」


……なんかぶつくさ言ってる。

端から見るとめっちゃ怪しい人だなぁ。


「(2回戦で使うのは勿体ないが……無詠唱魔法を連発されてはこちらも適わない)」


「がはは、痺れるがよい」


ジセルプラが動かないので、オレは遠慮なくウィークパラライシスを放った。


オレはあまり力の加減を知らない。それ故に弱い魔法を編み出してきたんだけど、今度は弱くすればするほどその魔法のあらゆるスピードが上がるという問題が起こる。

つまり、ゲームの銃の弾みたいに撃ったらだいたいその瞬間に標的に当たる。とても危ない。


オレの撃った魔法はジセルプラの左腕に当たった。


「……くっ! な、なんだこの魔法は……左腕が言うことを聞かない」


計算通り麻痺の効果があるようだ。これまた計算通り5秒もすれば動かせるようになるみたいだ。

雷撃系の特徴の相手の魔力を削る効果は見た目では分からない。


「想像もつかぬ高度かつ超軽量化された魔法……こんなことがっ……。仕方あるまい、『火の精霊よ、自然より我が右手に炎を操る力を与えたまえ』……第一のロングフレイム!!」


大きな炎が遅めのレーザー的な挙動でこちらに飛んできた。

俺は『魔法の盾』を展開してそれを防いだ。


「分厚い魔力の膜で防いでるのか。なんという力業だ……第一の魔法がいくら純粋な力に近いとはいえ、魔力をそのまま力に変えて防がれては……」


漏れてる話しぶりからしてジセルプラは魔法に関する知識が豊富なようだ。少なくとも素人魔法使いではないと見た。


それでも対魔法最下級の魔法の盾でも防げちゃうって、この人知識だけは凄い人的なパターンなのかな?

ダークSUNに魔法の砦をあっさり崩されたから魔法の盾系ってそんな強くない筈なんだし。


……さて、そんな人を屈服させるにはどうしたものか。ひとつ派手に倒せば良い感じかな?

ここは闘技場なんだから視覚的なパフォーマンスがあってもいい的な


「……強さになりは関係ないということか。ならば情けは要るまい私も一発限りの全力を出そうじゃないか。『我の手に宿るは集める力、集めるは灼熱の炎、その身縮めて的を射抜く』……コンデンスファイア!」


「……ッ!?」


ジセルプラの詠唱と共に身体が危機を察知した。

当たってはいけない一撃が来る……。


「私の奥義を出させた事……評価しよう。死んでも泣くなよ? ハアッ!!」


この身体は胴体視力も良ければ頭も良い。

瞬時に捕らえた小さな光。それは炎の弾丸みたいなもので、間違って観客の方へ飛んでいったら大変だということが分かった。

俺は両手で放出型氷結を込めて、炎の弾丸から数ミリのところで解き放った。


いわゆるアドレナリンが放出されている状態なのかな。残像を使ってもないのにまるで時間がゆっくり流れているみたいになった。


俺は後ろに下がりながら炎の弾丸を『氷結』で受け止めるようにした。

程なくして炎の弾丸は速度を落とし、氷結に飲まれて消滅した。


「……くっ、もはやこれまで。降参だ」


ジセルプラはサッと両手を上げた。

オレはその行動に驚いた。


「疑問のようだな娘よ。なぁに簡単なことだ。私は持てる全てを出し切り、お前はそれを打ち破った。もう私に勝機は無い」


「ありがとう、ジセルプラさん。楽しかったよ」


「それは私の台詞だ」


止まない歓声の中、ジセルプラはそう言って先に出て行った。


なんというか……クールでカッコいい人だなぁ。向こうの負けの筈なのに、なんだかオレの方が劣ってるような気がしてきたよ。




★ ★ ★




「……こうなる事は予想していた。遠慮はしない」


「うぅ……」


三回戦……すなわち準決勝。

オレの相手はダークSUNだった。






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