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星海の光  作者: ZEXAS
第一章 変化の種
20/50

旅立ちの前に……

おひさしぶりです……

やっぱり2作同時進行はキツいですね(^^;

もたもたしてると失踪フラグが建ってしまうのでもうちょっと速度を上げないとまずいのが現状です




―サウシア王宮

―ライトの部屋

視点 三人称




時刻は不頂の刻より三時間程経ったあたり

見張り兵を除くサウシア中が寝静まった深夜帯


沢山の敵兵が惨殺され、その遺体の代わりに様々な紅い花が広大な砂漠に咲くという不気味過ぎる現象を起こしたライトはその身体に合わない大きなベッドで小さく丸まって目を瞑り横になっていた


「(こうして見ていればただの人間の子供なのだがな)」


しかし神は残酷で、よく寝ているライトをわざわざ起こしにやってきた


「ライト、起きろ」


「………………」


普通の人なら一言一言がありがたい神の言葉に飛び上がり、両耳を差し出す勢いで神の言葉を聞くものなのだが、ライトは違った


「起きているのだろう?」


「起きてない」


「起きているではないか」

「…………。今寝る」


ライトの声は震えていて、今にも泣き出しそうな感じだった


「仮にも神が来たのだ。少しは話をしないか」


「…………」


ライトは黙って頷いた


「記憶に残っているのだろう? 思い出したのだろう?」


「……オレ、とんでもないこと、しちゃった……」


「戦争に加担する者はこうなる事を覚悟しなければならない」


「…………」


「お前は見た目通りの年齢ではないだろう? だったら自分がする事が世界にどのような影響を及ぼすのか考えて行動するのだ。お前はそれを課せられるだけの力を持ってしまっているのだからな」


「……はい」


「お前は少し世界を見る必要がある。いつまでもサウシアに居ないでもっと色々な国を見るといい」


「……色々な……国?」


ハトルの言葉を聞いて、ライトの表情はほんの少しだけ明るくなった


「そうだ。裕福な国、貧しい国、自由な国、治安の悪い国、教徒を中心とした国、民が圧政に悩まされる国。他にもある」


「でも、地平線まで見える砂漠の外なんてどうやっていけば……」


「……? そうだったな。では、まずお前が進むべき方角を知らせてくれるものを与えよう」


ハトルは指先に青白い球体を作り、ライトの額に当てた


すると球体はライトの額に吸い込まれるように入っていき、数秒後には再び出てきた


「ぬぅ〜……変な感じ……」


「その青い球体がお前の知るべき場所を指したものだ。体を動かしてみろ」


「……こう? あっ、ん? え? この丸いの……」


ライトは歩いてみたり回ってみたりした

しかし球体はライトより1m程離れた場所で、同じ方角に留まっていた


「さ、流石神様だね」


「このくらい造作もない事だ。それと、挨拶回りは早めに行っておけ。明後日にはお前をある所へ連れてゆく」


「え? う、うん。なんだか急だね」


「そんなにここに居たいか? 前世のお前なら同じ場所に固執しなかった筈なんだがな」


「今までは野宿か500円で泊まれる漫喫だったから転々と出来たの。……まぁここは家賃ゼロでこの待遇だし」


「…………」


「それと連れて行くって何処へ?」


「それは明後日にはわかる事だ。ではな」


「えっ、ちょっ……」


ライトがなにか聞きたそうにしているのを無視してハトルは消えていった


「…………」


ハトルが消えた後ライトは布団の中へ戻り、日が昇るまで色々と整理をすることにした




―視点 ライト 若干三人称あり



「ライト様、朝ですよ〜」


シェリルさんがドアをノックする頃には気持ちの整理は終わっていた


「失礼します……って起きていたんですね、ライト様(こっそり寝顔を拝見するのが私の朝の始まりなのに……ちょっと残念)」


シェリルさんが部屋に入るとオレはベッドの上に座って手を振り、シェリルさんを出迎えた


「うん、今日は早いうちから起きてたんだ」


「……? 何をなさっていたんですか?」


「……ちょっと考え事」


「考え事ですか」


「そう」


「(そういえば、ライトちゃんっていつも何を考えているのかな……)」


「あの、シェリルさん」


「はい、なんでしょう」


―シェリルを呼ぶライトの表情はとても真面目だった

それを見てシェリルはこれからライトが話す事がとても重要な事だと悟った―


「オレ、明後日にはこの国を出るよ」


「……え? えぇぇぇぇ!? ど、どうしてですか!?」


「お告げがあったんだ」


あながち間違いじゃないよね


「お告げって……まさかハトル様の!?」


「ハトル? ああ、確かおっちゃんの名前だったっけ」


「ハトル様をおっちゃん呼ばわり!? アルスフィガーデンの、私達の、この世の全ての神様なんですよ!?」


「そ、そういえばそうだっけ? ……もしかしてシェリルさんって信仰心高めな人だったりする?」


「いえいえそんな信心深くはありませんよ。ただ、そのハトル様についての言い伝えや建造物や書物などはこのサウシア付近でも結構あるものですから……」


「ああ、知りたくなくても知っちゃうんだ」


「え、えと……まぁそういう事になりますね」


うへぇ……。書物とか建造物とか言い伝えとか……。そんなものを色んな所にばら蒔いてたの? おっちゃん特有の構って期なの?

……ぷ、くくく……!


「あだっ!」


「……? どうされました?」


「ああ……うぅ……。神のお告げ……」


どちらかというと天罰だと思うけど……


「今のがお告げ? ふむふむ……。神のお告げを聞くというのは後頭部を片手で押さえる程に体に負担が掛かるんですね」


「……いや、まぁ……うん。そうかもしれない……」


「神様に、私達の神様であるハトル様に愛されているなんて、羨ましいです。何故神様は平等に愛してくれないのでしょう……」


「神様だからだよ。世界の全てを把握出来る神様だからこそ、その世界の人から世界に良い影響を与える存在を作るんだ。まぁオレは例外だけどね」


「なるほど……。確かに皆さんが平等だとまとめる人が居ない事になってしまいますよね……。うぅ……流石はライト様。ハトル様のお告げを聞く事が出来る特別な……あれ? そういえばお告げってどんな内容だったんですか?」


……そうだよね、明日にはここ(サウシア)を出るんだし伝えていた方がいいよね


「明日にでもここを出ようと思うんだ」


「ここを……えっ!?」


当然というかなんと言うか、驚かれた


「と、取り合えずロイ様の所へ行きましょう!」







「……それは本当か?」


「……うん、それにあの神様は『連れて行く』って言ってたからきっと迎えに来るんだと思う」


「そうか、それなら我は止められない。しかしお前の居なくなったサウシアはとても心許ない。どうにかハトル様にこの国を守って下さるようお願いできぬか?」


厚かましく聞こえるけど一国の王としては当然の台詞かもね

オレ分の戦力に見合った力でも貰えないとロイからしたら『ふざけんなクソ神構ってオヤジ!!』だもん


「その点については大丈夫。あの神様がなんとかしてくれるらしいよ」


……たぶんそう言ってたよね?


「そうか……」


それにしても妙だな

オレなんかよりずっと強い人ならいた筈なんだけど


「あの、ダークSUN……黒陽さんは?」


俺がダークSUNについて聞くとロイは軽く頭を抱えながら答えた


「それがサッパリ解らぬのだ。あの襲撃の時から見ていなくてな。黒陽の実力を考えて殺されている訳はないのだが……」


「そうなんですか……」


ダークSUNが居なくなった?

……記憶には無いけど、まさか……ね?


「……まぁ、なんだ。明日には発つのだろう? 知り合いに挨拶をしてきたらどうだ。今から回れば間に合うと思うぞ」


「そうですね。フィルしぇんぱいにウィザードたん、ラミスさんにルイスに魔術師のみんな……あれ? 案外少ないもんですね」


「ライト様はここに来てあまり経ってませんから……」





そして俺は色々な所をまわった…………




まずはフィルしぇんぱい


「……そうか、かつては囚人だったお嬢ちゃんも真の意味でサウシアから解放されるのか」


「しゅ、囚人って……。酷いっ!」


「まぁまぁ、頑張ってこいよ!」



次はラミスさん


「そうか……。ライトなら凄腕だからこのままここ(鍛冶屋)を継いで貰って欲しかったんだがなぁ」


「お、オレには荷が重すぎるよ」


「……確かにライトは凄腕だがちょっと頼りないかもしれないな」


「えぇ〜っ?」


「今回の旅もハトル様のご加護あってのものだろう?」


「うぅ……」


間違ってはいないよね

だってみんなの言うハトル様が居なければオレは今ごろ……


「大丈夫だ、ライトならまた生きて帰ってこれると思うぞ。……その頃にはきっとお前は随分と大きくなっているかもしれないな」




次はルイス達


「あっ! ライトじゃないかッ!」


本当は顔だけ見ていくつもりだったんだけど、ルイスを探している内にオレがルイスに見つかった


よかった……。誰も死んではいないって聞いていたけど不安だったんだ

子供が戦争で死んじゃうなんて元平和国家の住民としては胸糞悪いじゃん?


「ルイス……?」


「やっぱりライトだ! フェスティバル以来だね」


「うん、久し振り。他の子達は?」


「ああ、今はおつかいの最中だから」


「へぇ〜。偉いね」


「まぁ今は忙しい時期だからな。……そうだ! ちょっと一緒に行こうよ!」


「え? でもおつかいの途中なんじゃ……」


「大丈夫大丈夫、安くなるまで暇を潰してたところだったから」


「それなら良いけど……」



それからオレはルイスと歩きながらこれから旅立つ事について話した


……というかオレ達の身長差があんまり無いせいで変な勘違いされてないか?

なんかすれ違うおばちゃんの誰もが『応援してるよ!』って顔をするんだけど……


「え? それじゃあもう会えないのか?」


……ぬぅぅ、子供の寂しそうな表情もある意味胸糞悪いな。ちょっと揺らいじゃったよ


「……わからない。けどルイスがずっとサウシアに居るならいつかまた会えるかもね」


その頃にはオレももうおばちゃんになってるのかな。それともおばあちゃん? もしかしたらもう……


「……そうだ! 買い物なんかさっさと終わらせて俺んちに来てよ。面白い物を見せてあげるから!」


面白い物……か。見た目相応の価値観を思い出す為にも『ルイス(子供)の言う面白い物』を見てみるのもいいかも




―ルイスの家




ルイスはオレを自分の家まで連れて行くと、家の外まで待っているように言って家の中へ入っていった


オレは待っている間に防御魔法や消音魔法、灯明魔法なんかを放って時間を潰していた

ふふふ、こういう時にコツコツとスキル上げをしておけば数値的にも実力的にも万一に強くなるのだよ


よし! 適当にポーズもつけてみよう!

まずはヨガみたいに変なポーズを……


「何やってんだライト?」


「あ……」


「まあいいや。それよりライト、手を出して」


「……こう?」


オレはルイスに言われた通り手のひらを上にしてルイスの前に出した


するとルイスの手が上から乗せられ、金属質のなにかの感触が伝わった


「(ライトの手……柔らかいな……)」


「……ルイス?」


「……あ、ああいや、ごめんごめん」


ルイスが手を離すとオレの手のひらには銅貨が10枚乗っていた


「これって……」


「うん、この前のやつ」


ま、まさか返すって言うの!? 子供が!? お金を!?


「返さなくてもいいのに」


「いや、返さないと俺が気がすまないんだ。あの時は感情に流されて受け取っちゃったけど本来俺の家では物は良いけど金だけは受け取るなって掟があってさ……」


しっかりしてるというか……。伊達に子供達のリーダーやってないね。本当に良い子だ

……なんかオレってちょっと上から目線だなぁ。心の年齢はともかく身体年齢は恐らく一緒かオレが若干上かなのに


「それじゃあライト。これから面白い物を見せるよ」


「……?」


面白い物ってお金の事じゃなかったんだ

それより面白い物ってなんだろう?


「ちょっと待ってて……。……ふっ……!」


ポワワンポワワンとルイスに鈍い光が灯り始め、彼が力を抜いた途端にゆっくりと大きめの本が出てきた


オレは唖然として声も出なかった


「……ふぅ。な? 凄いだろ?」


「……る、ルイスって魔法使いだったんだ」


「わかんない、けどこの本に書かれている文字さえ理解すればもしかしたら使えるかもね」


「文字?」


「そう、少なくとも俺は読めない変わった文字。なんだかよくわからない記号がいっぱいぐちゃぐちゃ〜ってなってるんだ」


ルイスはそう言いながらその本を俺に手渡してきた


「……これは、ローマ字? というかアルファベット? あ、日本語もある。一体これは……?」


題名を載せるところには『Evolution magic book』

そして下の辺りには『著者 真心』と、日本語というか漢字で書かれていた


「もしかして読めるの!?」


「ああ……うーん、まぁ一応」


英語力なんて空っきしだけど見栄を張っておこう


「凄い! そ、それじゃあ開けて読んでみてよ!」


オレは頷いて本の始めのページを開いた


「えーと、『この文章を読めるのは拓海、お前達だけだ。もしこの本を見つけたならば、お前達の得となる物が授けられるだろう。真心』。……なにこれ?」


色々突っ込みどころがあるわけだが……。真心? 中国人的な? それになんでその真心はオレの名前を?


「なぁなぁライト、タクミってなんだ?」


そりゃああれだろ?

取り合えず開放感を求めたりリフォームどころかほぼ建て直ししてたりただ爆発したりどっかの村では『タタリジャータタリジャー』と殺されるべき存在として追われていたり

でもこの場合は……


「えーと……神様に選ばれた人達の事じゃないかな」


「へぇ〜、じゃあライトもタクミなんだ」


「まぁ……うん。取り合えず読んでみるね」


オレがそう言って次のページを開くと、ルイスの目がキラキラとしだした

もしかしたら結構前からこの本を持っていて、この本の謎について知りたかったのかもしれない


……? なんだこれ?

ただ大きく書かれてるだけ?


「『鍵をその手に、鍵をその身に、鍵を器に』」


「……?」


取り合えず次のページだ!

お、なんかそれっぽいのが日本語で書かれてる


「『気を抜けば抜く程堕ちる深い穴に身を委ねれば、いつか光さえ届かぬ所へたどり着くだろう……』。……?」


「『その身からより強力な雷を放出させるには、魔力を効率よく放て。この本にはその方法とアルスフィガーデンで広く使われてる魔法が記されている』……だって」


「す、凄い! 冒険者なだけあるな!」


いやぁ、それほどでも〜

……って、日本語読んで誉められてもなぁ



一通り読んでみた。……正直わけわかめ

パラッと読んで理解できる程オレの脳は優秀じゃないから仕方ない。……うん


そしで時間も程よくなってきた。別れの時だ

子供と居ると時間の経過が速くなる。やっぱり楽しかったのかな?


「……もう、お別れなのか?」


寂しいもんだね……


「いつか会えるよ。きっと」


「じゃあさじゃあさっ! 今度は俺が会いにいくよ!」


「え?」


「あの本読んでさ、強くなってさ、それでここを出てさ。そしたらライトに会えるじゃん?」


「そんな、危ないよ!」


「大丈夫、ライトが出来るなら俺だって出来る!」


あわわ、大変な事になったぞ……

オレのせいでルイスが旅に出ちゃったら親御さんが大泣きしちゃうよ


「え、えっと……じゃあルイスの事を神様が十分強いって認めるまでは出ちゃ駄目だよ?」


「神様? ハトル様の事?」


「……まぁそういう事になるかな」


「……うん! わかった! 俺頑張って強くなってライトに会いにいくよ!」


うう、もしかしたらオレは1人の人生を変えちゃったかもしれない……





他の所も少し回って宮殿に戻ると盛大なパーティーが行われた。なんでもオレの送別会らしい

ウィザードたんにフィルしぇんぱい、ラミスさんに魔術師や兵士の皆様様と、恐らくオレに国の関係で関わった人全てがこのパーティーにいた。なんでもオレは彼らに小さな英雄として称えられていたらしい

行き辛くなるからこういうのはちょっとアレだったけど、お酒の誘惑に負けてやんややんやと飲み明かしてしまった




「まったく、明日には出るというのに体調でも崩したらどうするのだ」


気を失う最中、おっちゃ……ハトルの声が聞こえた気がした





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