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WAVE  作者: R
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第一章 希望 

バカです。ごめんなさい。

僕は生きていた。

鉛のように重い身体にまだ小さな感覚がある。

しかしよく生きていたものだ。

普通あの高さから身を投げたら死んでいるはずなのに。


重い瞼をゆっくりと上げる。

鉄の匂いがその部屋中に立ちこめている。

牢屋に近いその密室で、僕は冷たいコンクリの床に横たわっている。

そして腕には手錠・・・。最悪だ。


「はぁ・・・」


一回死んだはずの僕の中ではもうそんなのどうでもよくて。

考えるのが面倒くさくてしょうがない。

多分、夢を見ているんだ。

そう、夢。長くてリアルなやつ。


「はぁ・・・」


早く覚めないかな。と、もう一度目をつむろうとしたとき、


「目が覚めたか?」

鉄格子の方から声が聞こえた。

聞いたところ、かなりの歳の男性だと思われる。


「だれ・・・」

僕はやっとの思いで出した声で問う。


「わしが誰だかなんてどうでもいい。そのうちわかることだ。それより貴様はなぜあんなことをした?」

「・・・言っている意味が・・・わかりません」


なんだこのじいさん。

僕は声の方へ寝返りを打とうとしたが、全身の重みが邪魔をして、結局体勢は変わらなかった。


「無駄だ。その手錠にはかけられている者が重力の魔法で動けんようになっておる」

「・・・僕が何か・・・したんですか」

「なにをとぼけておる!街一つまるごと消したんじゃぞ!?」

「え・・・?」


嘘だ。僕がそんな事できるはずがない。

寝た体勢を立て直そうとしたが、やはり駄目だった。

雨漏りしている天井から雫が、僕の頬に落ちる。・・・冷たい。


コレハ・・・ユメジャナイ???


「すみません・・・ちょっと一人にさせてください・・・」

「また逃げるのか?」

「・・・」

「お前はいつもそうじゃったな。いやなことがあるとすぐに逃げようとする。母親によう似とる・・・」


じいさんは深いため息をついて近くの腰掛に座り、話し始めた。


「よかろう。教えてやる。貴様は東方のシエルの街で一流の波動師だった。波動師ってのはそう滅多にいないからな。シエルの街で貴様のような一級波動師はめずらしかったのだ・・・。だが無愛想でな。わしが声をかけても無視されてな、ぶん殴ろうと思ったわい」


ほほほと笑うじいさんの話を、僕は真剣に耳を傾ける。


「あれは豪雨の日じゃったな。わしがシエルの街を見に行くとな、街がどこにもないわけよ。嵐が過ぎ去ったようなひどい光景だったわ。でも自然の力ではこんな状態にはならないはずだと・・・。波動師による波動エネルギーが残っていたのじゃ。」


僕は息を飲む。


「政府はこの事件を、シエルに住む風の波動師のリョー・ウエイヴ、そう貴様を犯人だと確定し、海岸に漂流していた貴様の身柄を拘束したわけだ」


信じられなかった。僕にはそんな力があるのか?

僕の頭は、思い出せなくなっているようだ。


「ここは拘置所だ。貴様は今日の裁判で恐らく死刑になる」

「僕が・・・そんな最悪なことをしたのなら・・・死刑で・・・当然だと思います・・・」


じいさんは長いあごひげを指でなぞりながら、ふむ、と考えだした。


「貴様は本当に変わった。昔の貴様だったら脱獄とか考えただろうに」

「いえ・・・死んで償うべきです・・・」

「わしもそう思う・・・が、貴様にはまだ死なれては困るのじゃ」

「え・・・」


そのとき遠くから足音が聞こえてきた。

歩くたびに甲冑がぶつかり合う音が響く。

恐らく、裁判所に僕を連れてゆく使者だろう。

僕は・・・また死ぬんだ。

死刑になる前に、自分が何の罪を犯したのか知ることができた。


「じいさん・・・ありがとう・・・」


返事は返ってこなかった。もういないのか・・・。

甲冑の音がすぐそばで止まった。


「リョー・ウエイヴ。今から私たちと一緒に来てもらう。抵抗したら、命はないと思え」

使者の一人が言った。


「はい・・・。その前に手錠を解いてもらえますか・・・重くて動けないです」

「あぁそうだな。ちょっと待ってろ」


使者が僕の手錠をカチャカチャと音をたて、ようやく重い手錠が外れた。

そのときだった。


「うおぉぉりゃあああああああ!!!」


この声は・・・さっきのじいさんだ!

鈍い物音が2回。

軽くなった身体を起き上がらせると、そこには倒れた甲冑が2つ、近くにさっきのじいさんが立っていた。


「よし、じゃあ行こうかの」

「え・・・行くってどこへ?」

「もちろん!!外じゃあああ!!」


じいさんは僕の腕を引っ張り、廊下を駆け抜け近くの窓から飛び降りた。

牢屋のあった階は相当上で、飛び降りたら確実に死ぬ高さなのに。

僕はじいさんに捕まって地上に足がつくのを待っていた。


僕の運命が変わった瞬間だった。


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