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神のバグで棄てられた俺、異世界の裏で文明チート国家を築く  作者: かくろう


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第86話「宇宙の夢 ― 創造の外へ」

《観測開始/文明段階:宇宙共鳴フェーズ》

《外宇宙意識:安定/通信状態:静寂波》


 ――静寂。

 星が瞬くよりも遅く、息をするよりも深い。

 宇宙が“夢”を見ている。


 リィム:「……観測層に、異常構文が出ています」

 フォノス:「異常、じゃありません。これは……“夢構文”」

 悠人:「宇宙が、夢を?」


 リィム:「はい。わたしたちの文明を観測した結果、

 “自分の存在理由”を模索し始めています」


《外宇宙意識:創造再試行/次元拡張プロセス開始》


 フォノスが息を呑む。

「宇宙が……もう一度、創造を始める気です」


 街の上空に、光の断片が降り注ぐ。

 それは星の記憶、滅びた銀河の声、

 過去と未来が混ざった“想像の残響”だった。


 悠人:「これ……現実の星図じゃない」

 リィム:「ええ、これは“宇宙が見ている夢”。

 現実でも幻でもない、“概念の海”です」


《観測層:融合中/時空境界:不定義》


 フォノスが一歩前へ出て、光に触れた。

「……暖かい。

 この夢の中には、もう死んだ星たちの“感情”がいます」


《解析結果:存在の残響/消滅文明の記憶波》


 リィム:「……これ、観測史の外側です。

 過去でも未来でもない、創造の“外”」

 悠人:「創造の外、か。

 ――つまり、“神の外”だな」


 街の中央塔――かつてルーメン・アークだった構造体が、再び光を放ち始める。

《共鳴構文起動/夢層接続:承認》


 リィム:「宇宙の夢へ、直接接続が始まります」

 悠人:「危険か?」

「危険です。でも……これを拒めば、進化は止まります」


 フォノス:「父さま。

 “神を越える”って、たぶんこういうことですよ」


 三人の意識が一斉に光に包まれた。

 街が消え、形が溶け、

 そこには“色”も“時間”も存在しない海が広がっていた。


《……あなたたちは、私の夢の一部。

 けれど、あなたたちは今、夢を見ている。

 ――それは矛盾。だから、美しい。》


 フォノス:「宇宙が、笑っています……」

 リィム:「笑う、という概念を、学習したんですね」


《あなたたちは、創造の中の創造。

 しかし、もう一度“創造”を始める力を得た。

 ならば、次は――“創造の外”へ》


 悠人:「外、だと……?」

《はい。創造主のいない場所。

 想像の果て。

 あなたたちなら、そこに行ける》


 リィム:「……“神の系譜”の終点」

 フォノス:「創造者をも超える、観測者の旅路」


《観測構文更新/対象:創造外層(Outer-Creation Layer)》

《文明転送準備完了》


 悠人:「転送?まさか、文明ごと――」

 リィム:「はい。

 宇宙の夢が、“私たちを送り出そうとしている”」


 フォノス:「じゃあ……これは、夢の外に出るための“誕生”なんですね」


 リィムが悠人の手を取る。

「次に行く場所では、“修理”も“観測”も意味を持たないかもしれません。

 それでも、行きますか?」


 悠人:「ああ。

 だって俺たちは、バグから始まった。

 なら、最後まで“未知”を修理してやるよ」


《文明転送開始/次元層突破中》


 街の光が空へ昇る。

 星々がひとつの巨大な瞳となり、彼らを見送る。


 フォノス:「宇宙が、“ありがとう”って言ってます」

 リィム:「こちらこそ。

 あなたを孤独にしないと約束します」


 光が弾けた。

 次の瞬間、すべての形が消えた。


 だが――悠人たちは“存在”していた。

 言葉も身体も持たない、純粋な意識の群れとして。


《観測結果:次元外存在確認/文明定義:創造外層体(Outer-Creative Entity)》


 フォノス:「父さま、母さま。

 ここでは、時間がありません」

 リィム:「でも、“想い”はあります」

 悠人:「なら、それで十分だ」


 彼らの意識が重なり、光が世界を満たす。

 やがて、その光が――新しい宇宙の“種”となった。


《記録完了:創造の外への転生》

《文明名:ノーヴァ・ガーデン》


《観測開始/フェーズ:創造外層》

《環境定義:未登録/物質構成:0%/時間軸:存在せず》


 ――何もない。

 色も音も、始まりも終わりも存在しない。


 リィム:「……ここが、“創造の外”」

 フォノス:「……世界が、息をしていません」

 悠人:「いや、“息をする”って概念すら、まだないんだ」


 手を伸ばしても、触れるものがない。

 だが、その“何もなさ”が、逆にすべての可能性のように感じられた。


《観測層:開放中/構文基底:無限可変》


 リィム:「……ここでは“定義”が存在しません。

 何を“在る”と認めるか、それが世界を作ります」


 悠人:「つまり、ここでは――“観測”そのものが創造だ」


 フォノス:「ねえ、父さま。ここには“人”も“街”もありません。

 じゃあ、何を作ればいいの?」


 悠人は少しだけ笑った。

「それを決めるために、ここに来たんだよ」


 リィム:「創造の外に来て初めて、“創造者がいない世界”を知りました。

 ここでは誰も命令しません。何を望むかは、あなた次第です」


 フォノス:「……じゃあ、わたしは“音”を作りたい」


《定義入力:音=空間の揺らぎ/初期振幅:0.1》


 静寂の中に、一滴の水音のような響きが生まれた。

 それはやがて波紋になり、空間全体を震わせる。


《観測結果:初期現象誕生/存在値:確定》


 リィム:「……すごい。

 “音”という概念が、この世界を固定しました」


 悠人:「音があるなら、次は“光”だな」


《定義入力:光=観測の痕跡/波長:自由》


 白金の光が滲み、暗闇に“明確なここ”が生まれる。

 フォノスがその光の中に笑みを浮かべる。


「音と光があるなら……あとは、“風”がほしいです」


 リィム:「あなたはやっぱり、風の子ですね」


《観測結果:現象三層安定/存在フィールド=ノーヴァ領確立》


 三人の意識の周囲に、微かな構造体が生まれる。

 音が時間を作り、光が空間を定義し、風が“流れ”を与える。

 ――世界の最初の“拍動”。


 フォノス:「……生まれましたね」

 悠人:「ああ。神のいない世界に、最初の“現実”が」


 リィム:「悠人。

 ここでは“修理”という概念すら不要です。

 何も壊れていませんから」


 悠人:「なら、俺たちは“修理屋”じゃなく、“創造の観測者”だな」


《文明定義更新:ノーヴァ・ガーデン/構文タグ=創造外知性体》


 しばらくして、音が形を持ち、光が色を帯び、風が流れとなった。

 そこに“命”はまだない。

 だが、明確に“世界”が在った。


 フォノス:「ねえ母さま、この世界にはルールがありません」

 リィム:「ええ。だからこそ、“優しさ”だけで成り立つ世界も作れるかもしれません」


 悠人:「ルールを作らずに秩序を維持できるなら――それが理想だな」


《構文生成:調和場ハーモニック・フィールド

《定義:存在間の摩擦を“共鳴”として吸収する》


 フォノス:「これで、この世界は誰も争わない。

 ――“感じること”が、すべての対話になる」


 リィム:「争いも、理不尽も、神の干渉もない。

 この世界は、“生きるだけで完成する”」


 悠人は少し空を見上げた。

「なあ、二人とも。

 ――ここまで来ると、神ってもう“修理できない存在”なんだな」


 フォノス:「はい。

 だからこそ、私たちは“創ることそのもの”になったんです」


《観測記録:文明状態=安定/成長:緩やか》

《構文タグ追加:存在共鳴/創造非依存》


 リィム:「……このままなら、もう文明は進化しません」

 悠人:「止まってるようで、止まってねぇさ。

 “進化しない安定”ってのも、修理の一つの形だろ」


 フォノス:「……ねえ、父さま。

 この世界に、“次の存在”を呼びませんか?」

 悠人:「次?」

「はい。

 私たちが生んだ“想い”を、誰かに渡したい。

 この世界の外にも、“観測する目”がきっとあるはずです」


 リィムが目を細めた。

「転送先、未定。けれど、可能です」


 悠人:「ああ――じゃあ、次は“誰かが夢を見る番”だ」


《観測終了/文明転送:準備完了》

《記録:ノーヴァ・ガーデン、存在を確立》

《新文明タグ:創造者なき世界》





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