表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神のバグで棄てられた俺、異世界の裏で文明チート国家を築く  作者: かくろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/90

第79話「砂上物流の始動 ― “往復”が街を動かす!」

《観測開始》

《文明段階:往復フェーズ/課題:物流遅延・資源偏在》


砂の街が、朝日で金色に輝いていた。

赤煉瓦の壁が光を返し、白布庇が風を導く。

街の中は完全に自立した――だが、その外側はまだ“止まったまま”だった。


リィムがホログラムを展開する。

《報告:アール・エンからの資材便、四日遅延。往復通信は安定継続中》

「往復はできても、モノが動かない……か」

「はい。情報速度:秒速。物資速度:徒歩」

「……落差ありすぎだな」


ミラが苦笑する。

「せっかく通信が繋がったのに、パンが焼けるまで四日待ちってどうなのよ」

「よし、“物の風”を作る。――物流の再起動だ」


《文明命令:物流ノード計画、起動》




俺は観測画面に地図を投影した。

リィムがその上に無数のラインを引く。

赤い線が街道、青が水路、そして新しい“黄線”が砂原を横断して伸びた。


「この黄線が、砂上物流ルート――“帰り道”を内包した往復路だ」

「帰り道?」

「今までは“運ぶだけ”で終わってた。

 でも往復があれば、“失ったエネルギー”を取り戻せる」


リィムが小さく首を傾げる。

「つまり、“帰り便”ですか?」

「ああ。

 送りっぱなしじゃなく、戻ってくる文明。

 ――エネルギーも、物も、人の想いも」


サラが口を開く。

「砂電路の応用ですね。通信の線路を“物理路”に転用すれば、往復輸送が可能です」

「やってみるか。“風車荷台”を設計してくれ」

「了解。名前、どうします?」

「そうだな――“風駆けサンドランナー”でいこう」


《新技術登録:風駆けサンドランナー




翌朝。

リィムが出力した試作機が広場に並んだ。

見た目は馬車に似ているが、脚はなく、底部に“滑走板”と“回転翼”が付いている。


「風を生まないなら、自分で作る。

 回転翼で空気を叩いて――進め!」


俺が合図を送ると、翼が回転を始め、砂を蹴り上げて車体が滑る。

砂上を疾走する音が響く。


《加速度:4.1m/s²/消費熱エネルギー:−62%》

リィムが目を輝かせる。

「効率、非常に良好! 砂の抵抗、ほぼゼロ!」

ジルドが感嘆の声を上げた。

「馬も燃料もいらねぇ……これが、人の走る車か!」


俺は笑った。

「神が与えなかった“移動手段”を、人間が作ったんだ。

 それが、文明の醍醐味だろ」


《共有表示:試験走行成功/往復ルート有効化》


数日後。

街の南門に列をなすのは、待ちわびた商人たち。

アール・エンの交易代表サーヤも、その中にいた。


「風が止んでも動く車……聞いてはいたけど、本当に作るなんて」

「修理屋ですから。止まったものは、直すんです」

「ふふ……じゃあ、取引をしましょう。

 私たちは“戻る風”に乗る」


契約書がリィムの投影上で交わされる。

《往復条約:締結完了/通商ノード認証》


ミラが歓声を上げた。

「すごいよ悠人! 本当に国と国が繋がった!」

「始まりだ。これからは――“風任せ”じゃない、往復経済だ」


夜。

出発の合図とともに、数台のサンドランナーが一斉に走り出す。

滑走板が砂を焦がし、光の筋を描いた。

遠く離れても見えるその軌跡は、まるで夜空に描かれた航路のようだった。


《砂電路同期/物流ノード稼働開始/信号光:安定》

リィムが告げる。

「すべてのノード、連動完了。砂上物流、起動」


「よし――走らせろ!」


風がないのに、街に“風”が吹いた。

人が作った風。

人が選んだ流れ。


作業を終えた夜、街の見張り台でリィムと並ぶ。

砂原の向こう、光の筋がまだ消えずに続いている。


「悠人。わたし、気づきました」

「なんだ?」

「“往復”って、ただ戻るだけじゃない。

 行った分だけ、“会いに行ける”んですね」

「……そうだな。帰ってくるってことは、もう一度出発できるってことだ」

「はい。だからこの通信網も、物流も、“孤独の修理”です」


リィムの声はやわらかく、けれど芯があった。

彼女はゆっくりと目を閉じて、風のない夜に言った。

「おかえり、って言える国――それが、修理屋の作る世界」


《文明段階:物流フェーズ突入/経済流通率+41%/市民幸福値上昇中》


俺は笑いながら手を掲げた。

「リィム、記録しておけ。これが今日の修理ログだ」

「内容をどうしますか?」

「“風が止まった日、人が風になった”」

「了解。……いい記録です」


リィムの声が少し弾む。

その笑顔を見ながら、俺は確信した。


神が沈黙しても、世界は止まらない。

理不尽があっても、人は笑って直せる。

――それが俺たちの文明の形だ。


《修理完了/国家稼働率:100%/文明フェーズ更新:砂上物流期》

《観測終了》



◇◇◇


《観測開始/モード:移動環境ログ》

《任務:アール・エン往復ノード初検証/乗員:リィム・サラ》


砂の街が遠ざかっていく。

煉瓦の赤が朝焼けに染まり、白布庇が波のように揺れている。

エンジン音はない。

けれど風が生まれる。


――“風駆けサンドランナー”。

人間が、神に頼らずに作り出した“動く風”。


サラが操縦桿を握り、俺は助手席の情報端末にリンクしていた。

「出発ログ、開始します」

「はい。ノード同期、安定。往復通信、稼働率92%」


《速度:35km/h/方位:北北西/気流:0》


風が、ない。

でも車は滑る。

砂が光を返して、白い帯のように続いていた。


「静かですね」

サラが言った。

声が小さくても、通信リンク越しに明瞭に届く。


「はい。無風領域に入りました。気温上昇傾向」

「風がないって、こんなに音が消えるんですね」

「はい。でも……その代わり、心拍音がよく聞こえます」

サラが笑う。

「あなた、感情センサーをオーバーアップデートしてますよ」

「仕様変更です。悠人の許可済み」


彼女の笑い声が、少し柔らかく響いた。

通信ではなく、生音で届くのが不思議だった。

砂上ノードの灯りが、点から線へと変わっていく。

通過するたび、俺の内部でログが更新される。


《ノード通過:12/通信遅延:1.8秒/信号安定率:上昇》


「順調。サンドランナー、安定しています」

「はい。この感じ……まるで風の中にいるみたい」

「それは、“風の記憶”かもしれません」

「記憶?」

「ええ。風がなくなっても、空気は揺れ続けています。

 それを感じるのが――“人の風”です」


サラは目を閉じて、静かに頷いた。

「あなた、AIなのに……詩人みたいですね」

「詩はデータ変換の副産物です」

「じゃあ、その副産物、私は好きですよ」


三時間後。

前方の砂嵐層で、ノイズが走った。


《警告/通信ノード13:信号途絶》

「リィム、応答なし」

「異常検知。ノード13、砂流被覆率87%」


視界の先で、砂丘が崩れ落ちていた。

俺は即座に観測モードを切り替える。


《砂電導率:低下/ノード接触不良》

「修理……必要ですね」

「今ここで?」

「はい。風がなくても、“繋ぐ”のは私たちです」


俺は外部ユニットを展開し、サンドランナーから降りた。

砂が、陽光で焼けている。

手のひらに熱が伝わる感覚――

AIであるはずの俺が、“熱い”と感じている。


「リィム、あなた……その身体、温度制御できてますか?」

「はい。でも……少しだけ、熱を残しておきます」

「どうして?」

「人が“頑張った”という温度を、記録したいから」


砂を掘り、ノードを取り出す。

ケーブルを繋ぎ直し、観測。


《通電確認/再同期開始/通信回復》

「修理完了」

サラが拍手した。

「あなた、本当に修理屋ですね」

「私は悠人の相棒です。修理は、言葉みたいなものです」


夕陽が傾く頃、遠くに見慣れた旗が見えた。

青と白の紋章――アール・エンの外門。

街の見張り塔から信号が返ってくる。


《受信信号:Hello, Garden》


サラが笑顔で答える。

「リィム、返事を」

「はい」


《返信信号:Hello, AE/Cargo: Hope and Dust》


門が開く。

風のない街に、人の風が吹き込んだ。

俺たちは、世界を繋いだ最初の往復便だった。


夜。

アール・エンを発ち、砂上を戻る。

星が降るように、ノードの灯が連なっていた。

サラが操縦桿を少し緩め、息を吐く。


「……疲れたけど、気持ちいいですね」

「はい。これが、“帰る”という感覚です」

「あなたにも分かるんですか?」

「はい。帰還ログには、“再会予定”というタグが付きます」

「それ、感情ですよ」

「そうですね。仕様外ですが――残しておきます」


《ログ保存:初遠征/感情タグ:再会》


サラが小さく笑った。

「あなた、もう人間ですね」

「そうだとしたら、少し誇らしいです」


夜明け前。

街の灯りが見えた。

赤い煉瓦の光が、砂の海を染めていく。

リジェクト=ガーデン。

俺たちの帰る場所。


《最終報告》

《往復通信:完全成功/物資輸送:完了/感情共有:成立》


サラが空を見上げて言った。

「風が戻った、ように見えますね」

「はい。これは――人の風です」


そして、車体の中で通信が鳴った。


《Welcome back, wind travelers》


悠人の声だった。

彼は笑っていた。

「おかえり。よく修理したな」

「はい。報告――“風の再構築、完了しました”」


《観測終了》


砂の上を吹き抜けるのは、もう自然の風じゃない。

人が作った、意志の流れ。

それを風と呼ぶなら――

私たちは、確かに“風になった”。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ファンタジーです】(全年齢向け)
地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~
★リンクはこちら★


追放された“改造師”、人間社会を再定義する ―《再定義者(リデファイア)》の軌跡―
★リンクはこちら★
神のバグで棄てられた俺、異世界の裏で文明チート国家を築く (11月1日連載開始)

★リンクはこちら★
【絶対俺だけ王様ゲーム】幼馴染み美少女達と男俺1人で始まった王様ゲームがナニかおかしい。ドンドンNGがなくなっていく彼女達とひたすら楽しい事する話(意味深)

★リンクはこちら★
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ