日常、か。
ともあれ、俺は通常の生活に戻ることにした。
あー、なんだったか……。この世界は、よくあるアニメのファンタジー世界みたいなもんだろう。
魔法とか、そういうものも存在するらしい。まあ、死に戻りしている俺みたいな奴がいるわけだし、
当然か。で、俺はどうしろと? 今まで「死」についての実験しかして来なかったせいか
何をしたらいいのか、わからん。そもそも、俺はどう生活してきた?
うっ……頭が。記憶が混乱する。当然か。俺は死を繰り返してその度に、ロードして
戻ってきているわけだ。つまり、俺の肉体自体がそれを「記憶」していること自体がおかしいと言える。
原理がわからん。タイムリープ的なやつか? まあ、これもアニメじゃ定番ではあるが。
たしかに。少し気になる所だ。記憶が引き継がれているということは、肉体「そのもの」が
引き継がれている可能性もあるのではないだろうか?
……実験しないと、わからんな。とはいえ、一旦俺は死ぬことをやめるつもりでいた。
今更、思いついたからといってそれをひっくり返すのも、どうかと思う。
まあ、俺の理屈ではタイムリープと同じ理屈で記憶だけが引き継いでいる。
そう考えるのが、自然だとは思う。肉体そのものが引き継いでいたら違和感を覚えるからな。
その場合、死んでロードしているのではなく……「転生」を繰り返していることになる、のか?
──悪寒が、した。
だと、したら。俺は──。何回、しんだ?
その死体の数。全部、全部、全部、俺、俺の……
──たった一度の、人生。だった……かもしれないじゃないか。
パラレルワールド。その可能性だってある。俺という人生はとっくに終了していて
俺の平行世界の人間がその情報を引き継いで、別の人生を送ろうとしている、とか。
……やめよう。考えるのは。気持ち悪くなってきた。
考えれば、考えるほどに。吐き気がする。俺という人間が。なんだ?
どういう存在なのか、疑わしくなる。
考えたって答えは出ないし、死んだ俺は戻らない。
だったら、この袋小路から抜け出す方法を考える方がまだ、建設的だろう。
ということで、俺は平凡な日常を送ることにした。
では、ここで俺のこの世界での設定を語るとしよう。
なんで、設定かって? そりゃ、俺は俺であって、俺じゃないからさ。
哲学的だなと? ははは、いや、まあいい。
俺は、アキラ。転生前の名前は、エンドウ・アキラだ。
そして、転生後の名前は、アキラ・フォーリー。そこそこの貴族の息子らしい。
だから、メイドなんてものもいた。フローラは俺専属のメイドで、好き放題にしていいらしい。
勿論、あっちの意味でも、だ。まあ、俺はそんなことに興味なかったがね。
いや、男してないというわけではないぞ? そんなことより、俺自身における環境の変化に
ついていけてなかっただけだ。性欲にかまけている余裕なんてなかったからな。
その時、ノックがした。
噂をすれば、フローラだろう。このノックの仕方からして、音でわかった。
「フローラです。アキラ様、よろしいでしょうか?」
「ああ、入れ」
「失礼いたします。アキラ様。学校の方ですが……」
「学校?」
ああ、そういえば俺は18歳だが。高校3年生らしい。
今年で卒業……ん? 学校だって? 今の今まで忘れていた。
「魔法学園の方から、留年と。通知が来ております」
「……」
留年、だと……。ま、まずい。まずくないか? これは。
親父に怒られ……うん、ようやく正常な感覚が備わり始めたようだな。ハハハ。
はははは、はーっはっは! どうすんだよっ!!!
「一応、聞いておくが。どうして、留年なんだ?」
「それは、ここしばらくの間、一切授業に出ず、何かをなされていたからではないでしょうか」
「そう、だな」
「何故、誰も止めなかったんだ?」
「はい。止める必要性がないからでございます」
「どうして?」
「アキラ様のご両親は放任主義のご様子。私も、それに倣って……」
「いや、止めろよ。不良になってしまったかもしれんだろ」
「不良になられたのですか?」
「いや……」
「では、よろしいのでは?」
ダメだ、こいつ……早く何とかしないと。つーか、留年確定って。
じゃあ今年の4月からまた、魔法学園に通うことになるのか。
「はー……」
思わず、ため息が出た。
あの貴族たちが通う学園は俺にとって、うんざりする場所だったからだ。
どいつもこいつも、顔色うかがって、一番偉い奴の子供にへいこらして……
プライドの塊みたいな奴らの集まり。
俺はそんなのどうでもよかったせいで、ガン無視していたせいか
肩身が狭い思いをしていた。敵も多いってことだ。
ん? そいつらは今年「卒業」するのか。
とはいえ、貴族の世界で「留年」した野郎にいい顔する奴なんているわけない。
「マジで、行きたくねえ……」
心底、俺はそう思ったのだった。




