8話 二者は交じり合い②
「どうだった? 成果のほどは。」
その自分の問いに、その荷物を抱えた茶ローブ、ロイノが答える。
「上々だ。」
と言ってロイノが持ってきた「収穫」を見せる。
鞄とは言いがたいシンプルな布袋の中身、さっきの店の端にあった根菜だ。
「ニメージュが店主の気を引いてくれてるお陰で、こっちは大分動きやすい、助かってる。」
そう、自分には視界の端で見えていた。店主の視界の外、建物の隙間から来たロイノが、棚の端の野菜を盗み取っていたのが。
「けど、もうあの店も行き辛くなっちゃったな。店主の人、いい人なのに……。」
「だからお前はただ雑談交じりに買い物しただけだろ、『偶然その裏で盗難が起こってただけ』で。」
「だとしても、だよ。
それにあんな無茶なキャラ作りして、また行くのちょっとはずいし……。」
「まぁ、でもそのお陰で収穫は良かったんだしさ。これだけ持っていかれてるのに気付かないでやんの。」
「そーゆー事起こると分かっていながらキャラ作り維持する側の心境も察して?」
ボロが出ないようにという緊張も、変なキャラづくりの原因だった気がする。
「まーまー。『なんだってやる』って言ったのはそっちだぞ?」
「それはそうだけどさ、『やる』と『できる』はまた話がさ……。。」
「でもお陰で7日間いい収穫だったよ。
一度清算するから、明日は一度休みだ。分け前が決まったらいつもの場所で待つから、確認しに来い。」
「…それを信用する根拠は?」
気持ちとしては、ロイノの事は信用したい。けど、まだ浅い付き合いでもある。
これまでは共同作戦という根拠があったけど、それが利益の権利を一方的に握られてる状態になる。
「…分かった、ちょっと付いてきて。」
それから黙々とロイノが歩いていくのを追っていく。
いくつかの表通りを渡りながら、細い路地を進んでいって。
路地の中でも曲がり角を奥へと進み、街の音すら殆ど届かない深い場所へ。
2つ目の角を過ぎた先、奥に妙に開けた場所が見えたところで、ロイノが足を止める。
「…ここは?」
「私達の住処、地図と地図の隙間。便宜上『路地裏』って呼んでる。」