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5話 そこにいた者②

 その次の日。

 十分動ける程度に怪我が治った人も増えてきて、荷運びの役割は交代。私は決まった役割が無くなり、フリーとなった。


 とはいえ途方に暮れている。

 中身は僅かだったとはいえ財布は盗まれ、稼ぐ手段も現状無く。

 特にいい考えも浮かばないまま、もっと安く売ってる所は無いかなんて考えながら探索し続けてはいるが、そんな都合のいい事が起こる訳も無く。



 相変わらずサーシャは他の人に頼りたがらないけど、私はいざとなったらそれを無視してでも誰かに頼るつもりではいる。

 それに、当てが見えない訳でもない。徐々に進む街への受け入れは、キャンプの中でも稼ぎ手になりそうな大人から行われている。

 あまりにも露骨な選び方にはむかついたけど、そもそも場所と物資を分けてくれてるだけでもありがたいんだし、文句は言えない。

 けど逆に考えれば、働き口があってからの受け入れ処遇だと思う。まだ大人の歳にも満たない私がどういう扱いになるかは分からないけど、最後の希望の可能性くらいにはなってる。



 なんて考えながら歩いてると、建物の隙間の奥に見覚えのある茶ローブ。昨日の泥棒だろう。

 これから獲物探しなのだろうか、あっちを向いて油断している。昨日のお返しを狙うなら、今の内。


 そう思い接近、だけど油断してたのはこっちもだった。何か硬い物を蹴ってしまい、音が立つ。

 茶ローブが一瞬こっちを確認し、細い隙間を逃げ始める。咄嗟にこっちもそれを追う。

 路地から出る直前のところで茶ローブの足が一瞬止まる。逃走ルートの迷いだろうか。

 けどこちとら目の前の標的を狙うのみ。その一瞬でも十分、駆け出しかけた所を取り押さえる。


 そこでようやく拝む相手の顔。褐色の肌に長い耳、聞いた事はあったが実際に見るのは初めてだ。

 ダークエルフという種族。基本的な性質はエルフに似てるけど、存在が昔の大戦に関係してて、なんか複雑な事情だとか。

 けどそんな事はどうだっていい。問題は昨日財布を盗んだのはこいつかもしれない、それだけだ。


「なんだ昨日の奴か。盗んだもん奪い返しに来たのか?」

 苦笑いと共に、その女が聞いてくる。

 確かに最初はそう思った。金額もだけど、盗んだ奴をタダじゃおかない、って。

 けど、返した答えは違うものになっていた。

「なぁ、泥棒って儲かるのか?」

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