3話 流れ着いた民③
「…そっか。
でも、無茶はしないでね。つらいと思ったら、ちゃんと大人を頼るんだよ?」
「分かってる、けどまだ平気。だからみんなを手伝ってるんだし。」
返答を聞きながら、サーシャが紅茶を一口すする。
「やっぱり『それ』がないとツラいのか?」
と、サーシャが紅茶を注ぐのを見ながら。
「うん。やっぱりここの魔力も、私の体質に合わなくて。
結局この紅茶とは、離れられそうにないかな。」
そう言ったサーシャの目線の先にあるのは、瓶に入ってる紅茶の茶葉。
以前、サーシャから聞いてた。
元々サーシャは森暮らしだ。けど停滞を望む里の方針が嫌になって、森を出た。
けどエルフっていうのは、魔力環境の影響を受けやすい種族。サーシャは特にそれが激しくて、体調を崩しがちだった。
で対策を模索した結果、行き着いたのが行商人から買った、クルス村で採れる紅茶。それに宿る魔力が森の魔力に近くて、それを飲む事で体調が良くなった、と言ってた。
「持ってこれただけでも、不幸中の幸いってやつか。」
しかし茶葉の残量は、そんなに多くはない。
「うん。でも、これだけしか咄嗟に持ってこれなくて。
そこにあるので全部で、半月分くらいかな。」
「この街じゃ売ってないのか?」
「どうなんだろう。」
「どうなんだろう、って……。」
ゆるい返答。問題の当事者のはずなのに。
「ニメージュも含めみんな忙しいでしょ? だからなるべく頼りたくないし、配給に要求するのもアレだし、そもそもこの事情知ってる人も……。」
気持ちは分からなくもない、けど聞いて放っておける話でもない。
「分かった。どうせまだ街の中に行く用事あるんだし、ついでに探してみるよ。」
「ほんと? でも、平気?」
「どの道この街に慣れていかないとなんだし、探検するいい機会って事でさ。」