21話 幕間:エセ異国料理屋「白猫家」
「そもそも何でこんな異国情緒溢れる飯で勝負しようとしたわけ?」
時は少し遡ってのある日、店を閉めたピア店長に聞く。
「一目惚れだったんだよ。
その昔、異国の行商人が売ってたのを食べた事があってね。個性的な見た目と、目新しいながら次々いけちゃう味が癖になって。
で、その人に頼んでレシピを売ってもらったって訳。」
「そんでそれを再現したのがこれ、って事か。」
「それがさぁ、ちょっと問題があったんだよ。
使ってた調味料が、ここじゃ全然流通してない物だったんだよ。
じゃあその調味料ごと作っちゃえば、って思ったんだけど、そっちの再現が難航してねぇ。
そっちのレシピを分けてもらい忘れて少し聞いた話しか情報が無いし、作るのに寝かせる期間が長かったりで試作も全然回らなくて。
ちょっと味見してみる? 失敗作の一例。」
断る隙も無く、裏方からビンを持ってくる。黒くてサラサラしてる、という見た目は今使われているのと似てはいる、が。
「…しょっぱいだけで、おいしくはないな。」
「でしょ? ほんとは風味の効いたおいしいしょっぱさだったんだけど、その風味を出す方法が見当もつかないの。
だから見た目はそのままに、味付けはここで調達しやすい物を使って作れるようにアレンジしたのがこれ、ってわけ。」
「…つまり見た目しか再現できてないって事だよね? いいのかそれ?」
「いーのいーの。どこ料理とか屋号には出してないし?」




