2話 流れ着いた民②
「街」と呼べる範囲から離れ、ニメージュと荷車はキャンプ地へ。
雑草の掃けた土の道のようなものはあるが、整備なんてされている訳も無く。何度か車輪が石に引っかかりながらも、道から外れた所に荷を寄せる。
「荷物おまちど!」
「おう、ありがとな。」
無事荷物を引き渡してフリーの身。
慣れてきたとはいえ、流石に重かった。脚は歩くのが精いっぱいだし、手もしびれが来てた。
すぐにでも休みたいところだけど、もう少しだけ歩く。
見た目の同じこのテントたち。どこに誰がとかどれが荷物置き場とか、まだ全然覚えられてない。
けどほんの一部、自分の寝床とかは場所で覚えた。
そして、これから向かうテントの場所も。
「あら、いらっしゃい、ニメージュ。
なんだか久しぶりな気がするね、まだそんなに経ってないはずなのに。」
テントに入るや否やの声。簡易ベッドの淵に座ってる、少し年上の森人女性だ。
「ごめんなサーシャ、手伝いで忙しくてさ。」
「ううんこっちこそ。私も手伝いに参加できればよかったんだけど……。」
「サーシャが気にする事じゃないよ。てか、私みたいに怪我が無かった奴の方が少ないくらいだし。」
「…ほんと、ニメージュが無事でよかったよ。
ご両親の事は、その、残念だったと聞いてるけど……。」
「私もそう聞いたけどさ、まだ見つかってないってだけだし。
私達みたいに無事でいるかもって思ったら、ずっと沈んでる訳にもいかないからね。」
思い返すその話は、丁度1週間前の事だ。
元々居たのは、ここから少し離れた村だった。
他の土地の事は知らなかったけど、立ち寄る旅人の話からするに、それなりに大きい村だったらしい。
けど、その災害は突然だった。
壁のように押し寄せる炎、逃げる村の人たち。私もその内の一人だった。
そんな状況だったから正確な状況なんて誰も分かってなくて、ただ何かが大きく吼えたのが聞こえた事だけは覚えてる。
後になって、竜に襲撃されたと思われる事だけ分かった。それくらいしか分からなかった。
そして見つかった人だけでもとその場から逃げ、今のこの場所にたどり着いて。
だけどその人数を、いきなり街で受け入れるだけの場所は無くて。
順番に街に受け入れていきたい、けど準備ができるまで待ってほしい。その状況に居るのが、私達。