14話 しかし混じり合う事は無く②
「…大丈夫?」
日が沈み始める時間帯、キャンプのテントの中。
見るからに弱ってるサーシャに、逆に心配されるくらい疲れ果てていた。
あれから連日、街の中を回って、徒労に終わって。
折れる訳にはいかない、とは思っていても、流石に肉体的にも精神的にもしんどい。
「休めばどうにかなるだけ、サーシャよりはマシだよ……。」
そう言いサーシャの方をちらりと見る。その手元にある瓶には、もうほぼ底が見えてるくらいしか茶葉は残っていない。
「もういいの、私の為に頑張らなくて。」
「ダメだよ諦めちゃ! シントの街は広いんだし、きっとどこかに…!」
「…ここに来てから、ずっと感じてた。もうこのお茶に宿る魔力でも、必要な魔力を補いきれてないの。
ここの魔力は、よっぽど私に合わないみたい。」
「でも…!」
「…ニメージュ、おいで。」
疲れた体でよろよろとサーシュの所へ。
サーシュに手を握られ、その周囲で魔力の光の粒子が舞う。それがそよ風に吹かれるように、ゆっくりと私の手に流れ込んでくる。
「これって…!」
「私が動けなく前に、ね。」
前にサーシャに教えてもらった事がある。
森暮らしの古典的なエルフの集落では、長の継承の魔術が行われる、と。長を引き継ぐ時に、その知識や魔力も共に、後世に引き継ぐと。
個よりも群として在る事に重点を置いた、森エルフの考え方の結果の伝承。
「でも、その儀式の代償って…!」
「いいの。故郷を出る時から、覚悟はしてたの。私みたいに森の魔力が濃いエルフが森を離れたら、そう長くはないって。
でもあの森で最後まで暮らすより、外を求めたのは私自身。だからこれも、私が選んだ結果。
外の世界を見れて、二メージュに会えてよかった。正しいやり方は知らないから不完全だけど、これはそのお礼。」
その魔力の流入を、拒む事もできずにいた。
ただただその状況を理解したくなくて、戸惑いはあらゆる判断が出来ない程で。
何も行動を起こせないまま、サーシュの思う通りに状況は進んでいって。
やがて、前にサーシャから教えてもらった事がある、森のエルフ達の言い回しが、思考の中に浮かんだ。
サーシャが、世界へと還っていった。




