109話 追走する既視感⑦
英傑支給の捕縛道具のひとつ、耐魔の縄。
使わないだろうと思いながらも義務として持っていたそれが、今は丁度いい。
遠隔操作の二輪車に大きく弾き飛ばされた赤霧の鎧を、立ち上がる前に縛り上げる。
2度の追撃と牽引で、赤霧の鎧を舞台の外、隙間の路地へと引きずり下ろす。
それでも抵抗する赤霧の鎧。けどここまで追い詰めた以上、逃す訳が無い。
胸元を踏みつけ地に制圧しながら、問う。
「ここなら誰にも見られん。全部話せ。」
尚も無言の抵抗を続ける赤霧の鎧。
「…聞き方を変えよう。お前のバックにいるのは誰だ?
大方誰かの指金だろう。公認の破壊行為は楽しかったか?」
そう、似ていた。かつて追ってた敵、エクスプローダーに。
報道傾向も、派手さに対する実害の少なさも。
恐らくこいつの活動も、誰かに命じられたものだろう。
けど違う所としては、エクスプローダーの時は、「英傑」を浸透させる為の敵、それを際立たせる為のものだった。
じゃあこいつは何だ? こいつの破壊行動やその報道には何の意味があった?
少なくともこいつはエクスプローダーと違って、破壊を楽しむ事での利害一致には見えない。何らかの理由があって動かされている、そういう印象だ。
そんな奴を起用してまでの報道操作…目的はこいつの報道そのものではない? 副次的な操作?
……鈍色仮面の印象の誤魔化し?
そういう視点で情報を追った事は無かったから憶測の面は強い。けどその憶測を阻む要素が思い当たらない。
あれだけ「敵」だとし続けた鈍色仮面を、急に扱いを魔逆に変えた?
あの人数が隠れられるような場所を、英傑全体が見逃していた? 下手すりゃ昔の路地裏から失踪した10年近くも?
そういえば魔法道具の盗難が隠蔽されてるような事もあった。無関係とは思えない。
……こいつもその影響下だというのなら、それは敵として詰問するよりも。
「…事情があるなら話せ。事と次第によっては、力を貸せ。」
(進行の都合で一時的にこちらは更新休止 他方の進行により再開予定)




