105話 追走する既視感③
一人出発し走る「英傑の路」。
ダーティ・ホイールのメンバーどころか、他の英傑すら人払いされていて。
地図を見るまでもなく、黒を纏った標的は、白昼の中で目立っていた。
久し振りに自由に走れる、なんて感傷に浸る暇なんてなく。
けどその自由さは今の強み。長らく使ってなかったこの二輪車の機能を起動する。
不可視の魔力の力場が広がり、周囲に点在する魔力の足場を作る装置と繋がる。
対し、赤霧の鎧もこちらの接近に気付く。
大きな腕の振りとともに、魔力体の斬撃が複数飛んでくる。
狙いは雑だが数が多い。いくつかはまっすぐこちらに向かってくる。
久し振りだが、イメージの作り方は覚えてる。
相対位置、前方、円盤。その大きさと位置も、装置を通してイメージを伝達する。
指定通りに生成された、光沢の壁が斬撃を防ぐ。
一陣過ぎ、視界が改めて開ける。
奴はまだ見える場所に居る。路地に隠れるとかそういうつもりは無いらしい。
それはそうだろう、読みが正しければ。
しかし見える、大きな翼の動き。
報道には写真が無く見た目は初見だが、あれが奴の移動方法か。
おそらく、奴も「トップ英傑」との対決を狙ってる。その上で、露骨に見せる逃げの構え。
…いいだろう。
思惑に乗った上で、超えてやる。




