表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【受賞作11/14発売】田舎の中古物件に移住したら、なぜか幼女が住んでいた~ダンジョンと座敷わらし憑きの民泊はいかがですか?~  作者: k-ing☆書籍発売中
第三章 妖怪の世界に行く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/100

95.ホテルマン、懐かしい失われた記憶

 そもそもなぜ鳥居が妖怪の世界にあるのだろうか。

 そんな疑問が脳内を駆け巡る。


「サラ!」


 エルは探していたサラの名前を呼んだ。

 鳥居の近くで、サラは座り込んで何かをしていた。


「見てみて、キラキラな薬草で作ったの!」


 俺たちに気づき、サラは嬉しそうに駆け寄ってきた。

 その手にはどこかキラキラと光る薬草で作られた冠を持っていた。


「ふくの作ったよ!」


 どうやら俺が薬草の冠が欲しいと言ったから作ってくれたのだろう。

 俺がその場でしゃがみ込むと、サラはそっと冠を頭の上に置いた。

 やけにキラキラしていて不思議だが、どこか頭がすっきりとしてくる。


「ありがとう!」


 俺はサラの頭を優しく撫でた。

 河童だからか、相変わらず頭のてっぺんが少しひんやりとしている。


「なぁ、なぜこんなところに鳥居があるんだ?」

「とりあえず、あまり近づかない方がいいだろう。触らぬ神に祟りなしって言葉があるぐらいだからね」

「おぉ……そうだよな」


 矢吹は鳥居が気になったのか手を伸ばしていたが、すぐに引っ込めた。

 名前のわからない神社には参拝するなと言われているぐらいだ。

 ここに何の神が祀られていたのかもわからない。

 最悪、祟り神や封じられている存在を呼び覚まし、穢れを背負うことになるかもしれない。


「幸治、お地蔵さんがあるけどどうする?」

「ここは挨拶だけにしておこう。俺たちが住む場所でもないからね」


 俺は地蔵の前で静かに手を合わせた。

 願い事はしない。ただ、無事を感謝するだけだ。


「よし、薬草をギルドに持って行かないといけないから帰ろうか」


 俺たちは来た道を帰ることにした。

 不気味な鳥居がある森の中に長居するのもいけないからな。

 ただ、俺はどこか後ろ髪を引かれる思いがして振り返った。


「幸治、どうしたんだ?」

「いや……なんか見覚えがあるような気がしたからさ」


 初めて見た光景のはずなのに、遠くから見た鳥居とお地蔵さんがどこか懐かしい気がした。

 思い出せそうで思い出せない記憶。

 俺が小さい頃に会ったおじいさんの顔が頭に浮かんでくる。


「うっ……」

「幸治!?」

「「「ふく!?」」」


 突然襲ってくる頭痛に俺はその場でしゃがみ込む。

 やはり立ち入ってはいけない場所だったのだろうか。

 冒険者ギルドの職員も森には近づかないようにと言っていたからね。


「キラキラしてるね!」


 そんな中、サラは俺の頭の上をジーッと見つめていた。

 俺の頭に着けている薬草の冠がさらに輝きを放っていた。


「あれ……痛くないぞ?」

「はぁー、びっくりさせるなよ」

「いや、俺にも急な出来事でさっぱりだよ」


 他の薬草と別のものなのか、突然襲ってきた頭痛は一瞬にして消えた。

 俺は頭の上に載っている薬草の冠を手に取る。


「これがあれば薬いらずだね」


 考えられるのはこの冠が俺を守ってくれたのだろう。

 どこか不気味でボロボロな鳥居とお地蔵さんが佇む森。

 初めて足を踏み入れたはずなのに、懐かしいと思ってしまう。

 まるで来たことを忘れていた場所に戻ってきたかのようだ。

 俺たちは再び森を抜けるために歩き出した。



 森を通り抜けたら、外は陽が落ちて暗くなっていた。

 長いこと森の中にいたのだろう。

 ただ、暗いから時間の感覚がわからないのか、それともあの森が感覚を狂わせているのかはわからない。


 そのまま冒険者ギルドに戻ると、なぜか冒険者たちの視線が俺に集まる。

 それに違和感を覚えながらも、薬草を買い取ってもらうために職員のもとに向かった。


「おかえり……それどうしたんですか!?」

「これですか? 作ってもらいました」


 ひょっとして薬草の冠が珍しいのだろうか。

 そもそも薬草で冠作ろうとする人がいない気もするが……。

 普通は作っても花冠だもんね。

 俺は職員に薬草の冠を渡した。


「やっぱり……霊樹(れいじゅ)の若葉をどこで拾ったんですか!?」

「霊樹の若葉? これは光る薬草じゃないんですか?」


 職員に呆れた顔をされた。

 薬草とは別のものだと思ったが、見た目はほぼ薬草と変わりない。

 だから、特に気にしなかったがこの様子だとよほど珍しいものなんだろう。


「ちなみに薬草もありますよ!」

「ちょっとまってね!」


 シルに視線を送ると、ポケットから薬草をポイポイと出していく。

 ただ、その様子に職員は目を見開いて驚いていた。


「どれだけ出てくるんですか!?」


 俺とシルも職員の言葉に驚く。

 たぶん薬草を採取した量の2割程度しか出していない。

 シルはどうしようかとチラッと俺の顔を見ている。


「半分は買い取ってもらおうか」


 きっと薬草も珍しいものなら必要になるだろう。


「「「えっ……えええええ!」」」


 職員だけではなく、ギルドにいた冒険者も驚いて声を上げていた。

 言葉がわからない矢吹はさっきから背後で警戒を強めているぐらい周囲が騒がしい。

 きっと全部出していたら、大変なことになっていただろうな。


「薬草は珍しいものなんですか?」

「この辺では珍しいから常時依頼になっているんですよ!」


 どうやらその辺に生えているから、いつでも受けられるのかと思っていた。

 だけど、実際は珍しいものだから、いつでも依頼として引き受けられる形になっていた。


「すぐにお金を用意しますね! ちなみに――」


 視線は霊樹の若葉でできた冠に向いていた。


「ああ……これはサラが作ったものなので売れないですよ」

「そうですか……。また、見つけたらぜひ買取させてください」


 もらったものを売るなんて俺にはできないからね。

 それに自然と頭がスッキリするから、頭痛が起きた時には必要になる。

 霊樹の若葉で作ったアイテムを売り出したら、薬がいらない日が来るかもしれないな。

 そう思うとある程度俺たちの世界に持って帰るのもいいだろう。


「これで全部になりますね」

「こんなにですか……」

「ええ、それだけ薬草が大事なものですからね」


 目の前には全員で宿屋に数日は泊まれるだけの硬貨が置かれていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。

よろしくお願いします(*´꒳`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
\11月14日第1巻発売/

第8回アーススターノベル大賞 受賞作

民泊①

キッチンカーと巡る異世界グルメ ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~
ここをタップ!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ