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【受賞作11/14発売】田舎の中古物件に移住したら、なぜか幼女が住んでいた~ダンジョンと座敷わらし憑きの民泊はいかがですか?~  作者: k-ing☆書籍発売中
第三章

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90/90

発売したねSS 散歩に行く

「わしはポテトと散歩に行ってくるぞ!」

「一人で大丈夫ですか?」

「ポテトもいるぞ?」

『ウン!』


 昼食を終えた後、お祖父さんがポテトと散歩に行くと言っていた。

 さすがにこの周辺の散歩をお祖父さんとポテトだけにさせても良いのだろうか?

 この民泊にたどり着けないほど迷子になるほどの場所だ。


「いつも一緒に散歩しているから大丈夫ですよ。じいちゃんの散歩みたいなものですし」


 ポテトは腕を組み、大きく頷いている。

 犬の散歩というより、お祖父さんの散歩ってことだろうか。

 田舎に住んでいると聞いてはいるが、この周囲はほとんど山ばかりだ。

 さすがに山から落ちたりしたら危ないだろうし……。


「俺とケトも付いていきます」

『にゃ! あちゃ!?』


 ゆったりとお茶を飲んでいるケトは驚いていた。

 その拍子にお茶を溢して熱そうにしている。

 俺は急いでケトをタオルで拭くと、耳元で呪いの言葉が囁かれた。

 あぁ、もちろん――。


「呪うよ? 本当に呪うよ? わかってる? オイラ呪えちゃうよ?」


 いつもより多い呪いのオンパレードだ。

 さすがに俺一人よりは同じ妖怪がいた方がポテトも散歩しやすいから仕方ない。


「呪ったら、晩飯抜きだよ? いいの? きっとあのお祖母さんのご飯は牛島さん並みに美味しいよ? あー、ケトは食べられない――」

「オイラも行くもん!」


 そう言ってケトは俺に抱きついてきた。

 ケトも散歩にいく気満々のようだ。

 牛島さん並みに美味しい料理が食べられるって声をかけたら、今日は大人しくしてくれそうだな。


「じゃあ、お祖父さん行きましょうか!」

「ああ、そうだな」


 お祖父さん、ポテト、俺とケトで散歩に行くことにした。


 しばらく歩いていると、ふと俺はあることが気になった。


「そういえば、ポテトってさっき普通に返事していなかったか?」

『ギクッ!?』


 ポテトはその場で止まり固まっていた。

 明らかに今も犬とは違う反応だ。


「まぁ、うちのケトも猫又だから普通に話してもおかしくないか」

「オイラ、話してもいいの?」

「いや、今は話したらダメだぞ? お祖父さんがいるからな」

「あっ……そうか」


 ケトが普通に話したらお祖父さんは腰を抜かし――。


「今、猫が話したのか?」

「「あっ……」」


 俺とケトはお互いに見つめ合う。

 とりあえず首を傾げてとぼけてみる。


「そんなことしても、わしは認知症だからすぐに忘れるぞ?」

「そっかー! なら話しても大丈夫だね」

「ケト、さすがにそれは油断しすぎじゃないか?」

「だって、すぐに忘れるって……にゃに!? 嘘なのか!」


 お祖父さんとポテトはコソコソと俺たちの方を見て話していた。

 さすがに猫が話しているってバレたらどうなるかわからない。

 これが原因で怖がって出ていく――。


『ナラオイラモハナシテイイネ』


 どこか片言の日本語がポテトから聞こえてきた。

 ジーッとポテトを見つめると、ニヤリと笑っている。


『エンギヲスルノハカタガコルカラナ』

「ポテトはわしよりもじいさんみたいだな」

『ジイチャンニイワレタクナイ』


 やっぱりポテトは普通に話していた。

 隣にいるケトを見ても、驚いて言葉も出てこないからな。


「ほら兄ちゃん、早く歩かない置いてくぞ」

「あっ、ちょっと待ってください」


 俺とケトはお祖父さんとポテトを追いかけるように歩いていく。

 お祖父さんはサラッとケトが話すのを受け入れていたけど、ポテトが犬又なのを知っているのだろうか。

 それならケトが話しても受け入れられるからな。


「そういえば、兄ちゃんって直樹と似ているな」

「息子さんとですか?」

「ああ、どことなく――」

「天然!」

『テンネン!』


 お祖父さんとポテトは息ピッタリだ。

 俺のことを天然だと思っているらしい。


「さすがに天然……じゃないよな?」


 俺はケトを見てみると、大きく首を傾げていた。

 ほら、やっぱりケトは俺のことをよくわかっている。


「ふくは天然よりバカだよ!」

「おい、コラ!」


 まさかそんな風に思われているとはな……。

 ケトを掴んでその場で顔をスリスリする。

 あぁ、やっぱり猫吸いは元気になる。


「やっぱり直樹と似ているよな」

『サギニアイソウ』


 そんなに俺たちは似ているのだろうか。

 どことなく雰囲気はおっとりしているようなタイプではあるが……。


「直樹はいまだにわしのことを認知症だと思っているからな」

「えっ……違うんですか? さっき認知症だって……」


 俺以外がピタリと止まる。

 まるで本当に時間が止まっているみたいな感覚だ。


「はぁー」

『ハァー』

「にゃー」


 大きく重なったため息。


「おっ、タイミングも一緒ですね」


 息ぴったりのため息に俺はつい感心してしまった。


『オヌシハコイツガカイヌシデダイジョウブカ?』

「オイラがふくの飼い主だよ?」

『ヤッパリソウカ。オタガイタイヘンダナ……』


 なぜかケトとポテトは意気投合したのか熱く握手を交わしていた。

 どうやらケトは俺の飼い主らしい。

 さすがにそれは逆だからな?


「どっから見てもお前たちの方が飼われている方だからな!」


 俺はそんな二匹の間に顔を突っ込んで抱きかかえる。

 ポテトは体が大きいが、思ったよりも抱き上げることができるようだ。


『ナッ……ナンダ!?』


 驚いているポテトに俺は顔をくっつける。


「あぁ……犬吸いも意外に良いもんだな……」

「ふく、それは浮気だよ? 呪うよ?」


 ケトは犬吸いしている俺の頭を引っ張り、自身の体に引き寄せた。

 なんやかんやでケトは俺のことが好きだからな。


「ははは、やっぱり直樹に似ているな」


 きっと直樹さんも犬吸いが好きな人なんだろう。

 それなら俺と似ていそうだな……。

 まぁ、俺は天然でも馬鹿でもないからね。

発売前に書く予定だったSSを今頃書いてます。

風邪を引いて遅くなりました笑


みなさまにも書籍が届いた頃でしょうか?

今回は書き下ろしも多く、内容がかなりジャンルを超えたような形に仕上がっています。

п猫R先生のイラストがさらに物語を盛り上げて最高の仕上がりです。

特に鳥居のシーンはしっかりと見ていただきたいです!!

ゾクゾクッとしますからね!


そして、購入報告や感想もちょくちょく聞いてあります。

すごく励みにもなりますし、ぜひ宣伝していただけると嬉しいです。

続刊についても来週までの売り上げである程度決まると思いますので、購入予定の人や応援してやろうって優しい方は早めに購入していただけると嬉しいです!


では、あと1、2話SS更新したら、本編に行くかと思います!


これからもよろしくお願いいたします!

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民泊①

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