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【受賞作11/14発売】田舎の中古物件に移住したら、なぜか幼女が住んでいた~ダンジョンと座敷わらし憑きの民泊はいかがですか?~  作者: k-ing☆書籍発売中
第三章

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88/90

87.ホテルマン、妖怪の国のご飯を食べる

 夕飯を食べるために俺たちは町中で良さそうなお店を探す。

 宿屋でもご飯は食べられるそうだが、俺以外は首を横に振っていたため、外に出ることになった。

 少し寂しそうな顔をしていたおばあさんが可哀想に思ったけど、みんなが嫌なら仕方ない。


「あそこにソウがいる!」

「ポチもいるぞ!」


 窓から覗くと、ソウとポチがお店でご飯を食べていた。

 俺たちの視線に気づいたのか、ソウは手を向けてこっちを呼んでいる。


「ここで食べるか?」

「知らないところよりは安全なんじゃないか?」


 矢吹もお店に入ることに賛成のようだ。

 妖怪の国だからどんなものが出てくるのかわからないが、見知った人がいるところなら安心はできるだろう。


――カラン!


 店の扉を開けると、お出汁の良い匂いが鼻をくすぐる。

 まるでうどん屋に来たみたいだ。


「みんな、こっちなら空いてるよ!」


 俺たちはソウに呼ばれて、そのまま席に座る。


「ここは何が食べられるところなんですか?」

「あー、確かに看板を見ただけじゃわからないよね。ここはうどん屋だよ」

「「「うどん!?」」」


 俺、シル、ケトは驚いて顔を見合わせる。

 看板を見ずに入ってきたから、まさか妖怪の国でうどんが食べられるとは思いもしなかった。


「珍しいね! うどんを知ってるんだ」

「俺たちのところではよく食べますよ」


 うどんはたまにカップ麺でも食べるし、牛島さんが作ってくれたこともある。

 だから、シルやケトにとっても大好物だ。


「そうか……。君たちは東の国出身なんだね」


 どうやら妖怪の国にも日本と似た文化がある国や町があるのかもしれない。

 東の国がどこかもわからないが、とりあえず頭を縦に振っておいた。


 しばらく待っていると、勝手にかけうどんがテーブルに置かれていく。

 ふんわりと香る鰹節が食欲をそそる。


「これは食べてもいいの……?」

「ああ、ここでは席に着いたら勝手に一杯でる仕組みだからね」


 どうやらメニューは一つしかなく、席に着いたら勝手に出てくるシステムらしい。

 俺たちは置いてあるフォークを使って、うどんをすくって食べる。


「おー、結構美味しい」

「シルもすき!」


 チラッと見ると、妖怪たちの口にも合っているのか、ケトとエル以外は一生懸命うどんをすすっていた。


「オイラ熱いのは……」

「私も苦手なんですよね」


 エルはかけうどんの中に氷を入れて冷やしていた。

 独特な食べ方にソウとポチは驚いていた。

 我が家では熱いスープな出ると、氷を入れるのがエルには当たり前だもんね。


「ケトは相変わらずの猫舌だね」


 俺がケトのうどんに息を吹きかけると、ケトはゆっくりとうどんを口に入れる。

 尻尾がゆらゆらとしているから、きっと美味しいのだろう。


「口に合って良かった。ここは俺の母親が作ったお店なんだ」

「そうなんだね。それで……あの若い人がお母さん?」

「いや、あれは二代目だよ」


 厨房では若い女性がうどんを作っていた。

 ソウの話では母親のお店を引き継いでもらえる人が現れたから今は引退しているらしい。

 なんでも体調を崩して、寝ていることが多いって……。


「お母さん、元気になるといいですね」

「そうだね……」


 どこかソウの表情は影を落としていた。

 さすがに病気とかになっていたら、心配になっちゃうよね。

 何か日本で良いものがあればいいんだが、さすがにこの国に薬を持って来たら、どうなるかわからないから何もできない。

 どんな副作用が出るかわからないし、シルやケトも薬は飲んだことないからね。


「じゃあ、俺たちは先に帰るね」


 チラッと外を見ると、さっきまで並んでいる人がいなかったが今は列ができている。

 きっとソウの母親も忙しすぎて体調を崩したのだろう。


「んっ!」


 ソウとポチが帰ろうとしたら、目の前でポチは立ち止まった。

 無言で俺の前に頭を出してきた。

 ずっとソウの隣でソワソワしていたのは目に入っていたが、撫でて貰いたかったのだろう。

 見た目は人間なのに狼男は少し不思議な存在だな。

 俺が手を伸ばそうとしたら、隣から可愛い手が出てきた。


「……呪うよ?」


 ケトが俺の手をバシバシと叩いていた。

 我が家にいる猫又は思ったよりも嫉妬深いようだ。


「チッ!」


 ポチは舌打ちすると、そのまま店を出て行ってしまった。

 せっかく撫でるチャンスなのに、邪魔されてしまったな。

 俺は伸ばした手でケトの頬をそのまま掴み、グリグリと撫で回す。


「にゃめろおおおお! 呪うぞ!」


 その様子を見てソウはクスクスと笑っていた。

 あまりにも普段より大きめな呪い宣言をされたから俺は手を離した。

 さすがに妖怪の国に来てまで呪われたくはないからね。


「じゃあ、またいつか!」


 ソウは手を振ってお店を出て行った。

 俺たちもうどんを堪能すると、寄り道することなくすぐに宿屋に帰ることにした。


次回の更新から書籍販売SSを公開します。

あの人たちが民泊にお泊まりします!

ぜひとも、お楽しみにー!

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