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【受賞作11/14発売】田舎の中古物件に移住したら、なぜか幼女が住んでいた~ダンジョンと座敷わらし憑きの民泊はいかがですか?~  作者: k-ing☆書籍発売中
第二章 地下の畑は異世界です

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60.ホテルマン、行事を知る

 真心便利屋に着いた俺達は窓枠を店内に運んでいく。


「いらっしゃいませ! お暑いところありがとうございます」


 元気な店員が扉を開けて待っていた。


「こちらこそわかりにくい住所ですみません」


「あっ、山奥の方ですか?」


 どうやらお店の人達に情報が共有されているのだろう。


「幼い頃からこの町で育ってきましたが、あそこに家があったなんて初めて知りました」


「地図上からも消えているからね……」


「結構山奥に住んでいるんですね」


 俺の中ではそこまで山奥に感じてはいないが、下の方に住む人達にとったら山奥になるのだろう。


 地図アプリなどにも登録されていないため、検索しても出てこないことを伝えると店員も納得していた。


「そういえば、この辺で観光するのに良いところはないか?」


「観光ですか?」


「ああ、俺達民泊をやっているんだけど、引っ越してきたのは最近だからな」


 矢吹は昔からここに住んでいる人なら、町の良さを知っていると思ったのだろう。


 今まで牛島さんとばかり話していたため、あまり聞いたことがなかったな。


「この近くにある大きな川を知っていますか? この時季なら花流しとかが行事になりますね」


「花流し?」


 話からして花を川に流す行事なんだろうか。


「灯籠流しは知ってますか?」


「あー、お盆とかにニュースになっているやつだっけ?」


「それと似たような形ですが、ここでは花で作った飾りを流す行事があるんです」


 灯籠流しは亡くなった人々の霊を慰め、供養するための行事だと言われている。


 元々は灯籠流しをしていたが、時代とともに環境に配慮した形に変わっていき、花流しとなったらしい。


「ちょうどお盆だから、花流しを前面に押し出して宣伝するのもいいかもな」


 今まで何もオススメするポイントがなかったから、エルに言ってホームページ上に追加してもらおう。


「では、また連絡しますね」


 修理が終わるまではどこかで時間を潰すことになった。



「花流しってそこの川でやるんだよな?」


「ああ、俺が知ってるのはサラが出てきた川ぐらいだけどね」


「サラが出てきた?」


「ああ、河童だからね」


 喫茶店の帰り道に川で遊んでいたら、サラと出会ったんだっけ。


 急に出てきたからあのときは幽霊かと思ってびっくりしたのを覚えている。


 今では我が家に随分と馴染んでいるからな。


 さすが妖怪の代表って感じだ。


「時間潰しに喫茶店にでも寄っていくか?」


「クリームソーダ!」


 ケトはクリームソーダが飲みたいのだろう。


 昼食も食べていないから、ちょうど良さそうだ。


 時間もたくさんあるため、俺達は早速喫茶店に向かうことにした。


「いらっしゃいませ! あっ、ケトちゃん!」


 店内はお客さんで賑わっているかと思ったら静かだった。


 はじめに声をかけてくれたのは、喫茶店の娘さんだった。


 街から離れているから、お客さんも集まりにくいのだろうか。


「まだ営業しているかな?」


「大丈夫だよ! こっちこっち!」


 テーブルに案内されると俺達は椅子に腰掛ける。


 店主達の姿が見えないが、どこかに行っているのだろうか。


「お父さん、お母さん! ケトちゃんが来たよー」


 ひょっとしたら俺達よりケトの方が歓迎されているのだろうか。


「気づかずにすみません」


「にゃー!」


 奥の方から慌てて店主達が出てきた。


 その手には何か紙を持っているから、チラシの準備をしていたのだろうか。


 我が家の民泊と同様で常連客しか集まりにくそうだしな。


 いや、そもそも民泊に常連客はいないか。


「ケトちゃんは何を食べたい?」


「にゃー!」


 ケトはちゃっかり、クリームソーダを指さしていた。


「クリームソーダが好きなネコちゃんは珍しいね」


「ここにい――」

「ケトは変わったネコだからな!」


 ネコを演じているのを忘れて、そのまま応えようとしているケトに被せてフォローする。


 俺はケトをジーッと見つめる。


 普段は俺が見られているからな。


「ケトちゃんは変わったネコちゃんなんだね」


 一瞬怪しんでいたが、ずっとケトが鳴き続けていたらどうにか誤魔化せたようだ。


「ナポリタンとオムライス。クリームソーダとコーヒーを2つお願いします」


 娘さんは大きな声を出して、注文を店主に伝えていく。


 今回頼んだのはナポリタンとオムライスだ。


 この間、鉄板の上に出てきたナポリタンが美味しかったのを覚えている。


 それを矢吹にも食べてもらいたいからな。


「ナポリタンとオムライスなら簡単に作れるので、教えましょうか?」


「いいんですか!?」


 俺はすぐに立ち上がり、店主の元へ駆け寄る。


 店主の提案に俺達は喫茶店メニューの定番であるナポリタンとオムライスの作り方を教えてもらうことになった。


「幸治が作るのか……」

「にゃ……」


 どこか浮かない顔をしている矢吹とケトの顔は俺には見えなかった。

「⭐︎評価、ブクマをしない人達は――」

「「呪うよ?」」

 シルとケトはニヤリと笑ってこっちを見ていた。


| |д・)ωΦ^ ) ジィー

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第8回アーススターノベル大賞 受賞作

民泊①

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