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【受賞/書籍化決定】田舎の中古物件に移住したら、なぜか幼女が住んでいた~ダンジョンと座敷わらし憑きの民泊はいかがですか?~  作者: k-ing☆書籍発売中
第二章 地下の畑は異世界です

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56.ホテルマン、今日もほのぼのした我が家

 目の前には水々しい野菜がいくつも実っている馴染みのある畑。


 この光景は何日振りに見ているのだろうか。


「帰ってきたぞー!」


 みんなも帰って来れて嬉しいのか、畑の中で抱き合っていた。


「みんな大丈夫だったか?」


「うっしー!」


 階段の方を見るとそこには牛島さんがいた。


「あの人がここの存在を教えてくれてな」


「ああ、それは助かったよ」


 もしあの時に牛島さんが畑に来なければ、今ごろ俺達はダンジョンの中で暮らすことになっていたかもしれない。


 今日の日付を確認したが、畑に行って一週間は経っていなかった。


 体内時計と概ね変化はないようだ。


 あんなところにずっといたら、何時かわからなくなるからな。


「あっ、兄ちゃん。勝手に台所を借りたぞ」


「ひょっとして……」


「ああ、みんなが帰ってくるだろうと思って飯を作っておいたぞ」


「うっしー!」

「うっしいぃぃぃー!」


 俺も階段を駆け上がり、シル達に紛れて牛島さんに抱きつく。


 やっぱり我が家には牛島さんは必要な存在だな。


 ずっとカップラーメンかジビエ焼きしか食べてこなかったため、手作りの料理にウキウキとしていた。


 ジビエは基本焼いて食べるしか選択肢がなかったからな。


 階段を上がっていくと、すでに美味しそうな匂いが広がっていた。


 まだ、料理を作っている途中なんだろう。


 みんなでテーブルで待っていると料理がたくさん出てくる。


 サラダやスープ、グラタンにプリンまで出てきた。


 ずらっと並べられた料理に俺達の目はキラキラとしていた。


 いつのまにかみんな餌付けされているからな。


「いただきます!」


 作ってくれた牛島さんに感謝の言葉を伝えて早速食べていく。


「んっー!」


 久しぶりのご馳走を口に入れた瞬間、涙が止まらなかった。


 泣いていたのは俺だけではなくシル達もだった。


 それだけ精神的に疲労し切っていたのだろう。


「お風呂も準備してあるからな」


 シル達はジーッと俺のことを見ていた。


 まるで俺とは大違いと言いたいのだろうか。


 ホテルマンが家事万能だと思うなよ?


 専門分野は接客だぞ。


 隣に座っているケトの頬をグルグルと回す。


 一番俺のことをジーッと見ていたからな。


「呪うよ?」


 ボソッと呟くケトの声に俺は手を止める。


 今まで口癖だと思っていた呪いも、本当に存在していたからな。


 食事を食べ終える頃には子どものシルやサラはその場でウトウトしていた。


 どれも美味しい食事を食べて満腹になったのか、疲れが一気に来たのだろう。


 長い間、神経を使っていたからな。


 俺が戦えない分、シル達が警戒していたのは言うまでもない。


「シル達を風呂に入れてくるよ」


 俺はシルとサラを抱きかかえると、風呂場に連れていく。


 もちろん一緒に入るわけではないからな。


 後ろからエルも付いてきている。


「エル、あとは頼むね」


「一緒に入れば――」


「遠慮しておきます」


 俺はそのままエルにシルとサラを預けた。


 ダンジョンの中で風呂に入るときも、俺は広間の外にいた。


 そこはいくら妖怪だとしても、ちゃんとしないといけない。


「そういえば牛島さんにご飯をお願いしたのはやぶきん?」


「いや、俺はダンジョンの可能性があるから帰ってこなければ役所に電話してと言ったぐらいだ」


 どうやら牛島さんが食事を用意していたのは好意だったらしい。


 本当に彼には頼りっぱなしだな。


「まぁ、俺は兄ちゃん達なら帰ってくると思ったからな」


 優しく微笑んだ牛島さんはどこか寂しそうな顔をしていた。


 しばらくすると髪を乾かさないままのシルが走ってきた。


「髪の毛乾かさないとだめだよ!」


 その後ろにはサラがタオルを持って走ってきた。


 サラは本当に面倒見の良いお姉ちゃんで友達のような存在だね。


「うっしー!」


「どうした?」


「アイスたべる!」


 ねだられた牛島さんは冷凍庫からアイスを取り出していた。


 いつも我が家の冷凍庫には牛島さん特製のアイスクリームが入っている。


 我が家ではデザートは一日一つと決めているが、今さっきプリンを食べたばかりだ。


 ただ、久しぶりに帰ってきたから今日は何も言わない。


「私も食べたいです」


 それに気づいたサラもシルと一緒になって、アイスクリームを容器に入れてもらうのをお皿を持って待っていた。


「うっしーのアイスがいちばんすき!」

「私も好きです!」


 横揺れしながら待つシルとサラ。


 本当にアイスクリームが好きなんだろう。


「それはうちの牛がいい牛乳を出してくれるからな」


「うっちーのうっしー?」


「それだと牛なのか牛島さんなのか分かりづらいぞ?」


 うちの牛が〝うっちー〟という認識なんだろうか。


「なら花子の牛乳の方がいいかもな」


「はなこ?」


 ひょっとしてまた新しい妖怪が増えるのだろうか。


 花子さんと言えばトイレの花子さんが有名だが、あの人って妖怪だったっけ……?


 しかも、牛乳をトイレで出すって中々衛生的にも……。


「何か勘違いしていないか? 牛島さんは牛の花子と言っていたぞ?」


 静かになった俺をみて、矢吹は声をかけてきた。


 どこにでも妖怪がいるわけではないからな。


 妖怪がいるのが当たり前になってきて、勘違いしていた。


「ふく、アイスもらった!」


「私はチョコをかけてもらったー!」


 シルとサラは嬉しそうにアイスを持って走ってきた。


 楽しそうな二人を見て、我が家に帰ってきたんだと実感する。


 久しぶりに帰ってきた我が家は今日もほのぼのとしていた。


 ああ、そういえば民泊の予約ってどうなったんだろうか?

「⭐︎評価、ブクマをしない人達は――」

「「呪うよ?」」

 シルとケトはニヤリと笑ってこっちを見ていた。


| |д・)ωΦ^ ) ジィー

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キッチンカーと巡る異世界グルメ ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~
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