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49.ホテルマン、君に決められた

 洞窟に住むようになってから二日が経過した。


 いまだに我が家に帰れていない俺達は、ある問題に直面していた。


「ふく、おなかへったよ」

「ああ、俺もペコペコだな」


 しばらくはカップラーメンを食べていたが、いつのまにか底をついてしまった。


 初日に食べすぎていたのが問題なんだろう。


「あれ……あそこにオヤツがあるよ……」

「ケトさん、それは石ですよ」

「どうせ、オイラはこのまま何も食べるものがなく、ガリガリに痩せて死んじゃうんだ……」

「今日は珍しく普通のことを言ってますね」


 いつもヒステリックなケトも、今はただ弱音をずっと吐いている。


 あれから帰る方法を毎日探している。


 洞窟内を歩いて探し回ったが、どこにも見つからなかった。


 そもそも我が家の妖怪達は方向音痴だから、この広間に戻ってくるのも危ういのが現状だ。


 それにここではツノうさぎが出てこないため、食材が全くないのが問題になっている。


 穴から出てきていたのに、洞窟内にいないとはどういうことだろうか。


 代わりに謎のチンパンジーを食べようかと思ったが、妖術の手加減ができないのもあり、食べるまでに至ってない。


 人間に似たような見た目をしているから、さらに食べる気も起きないからな。


「はぁー、なんか食べられる……」


 俺は目を凝らして洞窟で動いているやつに目を向ける。


「あれってイノシシか?」


 俺が知ってるイノシシは黒い毛皮に牙が生えた豚鼻のやつだ。


 だが、そこにいるのは体が岩のようにゴツゴツしており、刺々しい突起がいくつも出ていた。


 まるで全身が亀の甲羅とハリネズミの棘が合体しているような感じだ。


「イノシシ?」


「普通のイノシシならツノうさぎみたいにジビエになるはずだが……」


「「「「ジビエ!?」」」」


 シル達は一斉に俺の方を見ている。


 やっと目の前に食材が出てきて、みんなの目にはご馳走に見えているのだろう。


 隣で唾液を飲む音や(すす)る音が聞こえてくる。


「でもどうやって捕まえる気だ? 妖術だと殺しちゃうだろ?」


 俺の言葉にシル達は頭を抱える。


 妖術だと手加減ができないため、過剰に攻撃するかもしれない。


 謎のチンパンジーが粉々になるぐらいだからな。


 あいつよりは体表面は硬そうだが、せっかくの食材を逃したくはない。


「ねぇねぇ、こういうのはどうかな?」

「うん、きっと大丈夫だぞ!」

「でも逃げ切れるかしら……」

「ふくならやってくれるはず!」


 シル達はコソコソと話しているが、何を話しているのだろう。


「何か良い案でもあった?」


 俺はみんなに話を聞くと、なぜかジーッと俺を見つめている。


 何か嫌な予感がするのはなんでだろうか。


 ジーッと見つめてくる時って、だいたいは何かある時なのは経験しているからな。


 俺はゆっくりと遠ざかっていく。


「ふく、いい?」

「やらないと呪うよ?」

「すぐに準備するので大丈夫ですよ」

「これしか方法がないんです……」


「おっ……おい!?」


 俺を押して広間から突き出した。


 真っ暗な洞窟に出た俺に光る石が投げ渡される。


「「「「いってらっしゃい!」」」」


 シル達の見送る声が重なる。


 まるであいつらが妖怪ではなく、悪魔のように見えてくる。


「くそ!」


 大人の俺が様子を見て来いってことだろう。


 ここにいる動物は妖怪であるシル達を警戒している。


 ここ最近だと謎のチンパンジーはシル達を見ると、その場から逃げだしていくぐらいだ。


 俺は光る石を手に取ると、少しずつ謎のイノシシに近づいていく。


 やはり俺だけだと、謎のイノシシも警戒心が薄いのか逃げていく様子もない。


 どうせ俺は妖術も使えない弱いただの人間だからな。


「やっぱり見た目はイノシシ――」


 近くまで来るとやっぱりイノシシに似ていた。


 豚のように丸く広がった形状をしている。


 何かわかればあとはどうやって捕まえるかを考えるだけだ。


 俺は体の向きを変えて、広間に戻ろうとしたら何か声が聞こえてきた。


 少し荒い鼻息に聞いたことのある鳴き声。


 地面を叩き割るような勢いで、地面を蹴る音が聞こえてくる。


 ゆっくり振り向くと、謎のイノシシが俺に向かってニヤリと笑っている気がした。


『ブヒッ!』


 あっ、これはやばいやつだ。


 足に力を入れて全力で前に出していく。


『ブヒヒヒィィィ!』


 鳴き声は豚そのものだが、あれは近づいたらいけないやつだった。


 イノシシというよりは、刺々しい物体が勢いよく走ってきているような感じだ。


 そして、あいつは完全に俺を獲物と認識している。


 食材に追われる日が来るとは――。


 いや、ツノうさぎにはいつも追いかけられていたか。


「おーい、助けてくれー!」


 俺は広間に全力で走っていくが、入り口にさっきまでなかったものが目に見える。


「あれって柵か!?」


 そこには金属パイプで固定されたワイヤーメッシュの存在が目に見えた。


 どうやら俺は謎のイノシシの餌にされたようだ。

「⭐︎評価、ブクマをしない人達は――」

「「呪うよ?」」

 シルとケトはニヤリと笑ってこっちを見ていた。


| |д・)ωΦ^ ) ジィー

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キッチンカーと巡る異世界グルメ ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~
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