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46.ホテルマン、我が家の妖怪が怖い

 人は事故が起きる瞬間、時が長く感じることがある。


 まるで今がその時なんだろうか。


 命の危険を感じたのか、目の前に突きつけられた拳がゆっくりと近づいているように感じる。


「浮気相手を呪ったぞ!」


「ふくは私達のものですからね!」


 ケトとエルはさっきから何を話しているのだろうか。


 俺はあいつらが来たことで助かった。


 ケトの呪いの影響か、謎のチンパンジーはその場で動けず、俺にめがけて拳を放った状態で止まっている。


『キイイィィィ!』


 やつは何かに怯えているのか、その場で震えていた。


 俺はすぐに広間から逃げるように、真っ暗な洞窟の方へ走った。


 声からしてシル達はすぐそこまで来ていたのに気づいている。


「みんなたす……」


 真っ暗闇の洞窟に入る手前で、俺は足を止めた。


 暗闇の中から包丁を持ったシルが現れたのだ。


 いつもの明るい表情はなく、まるで何かが乗り移ったような顔をしている。


 まるでホラー映画の世界に入った気になってしまう。


「シル……?」


「ふく、おなかへった」


 どうやらお腹が減って笑顔がなかっただけのようだ。


「シル、とりあえず包丁は危ないからな?」


「そうだね」


 シルはポケットに入れると、俺のところまで駆け寄ってきた。


 確かに近づいただけで、お腹が空いているのがわかるぐらいお腹がなっていた。


 野菜を収穫していたのも、お昼ご飯を作ろうとしていた時だったもんね。


「ご飯の準備をせずにどこに行ってたの? まさか本当に浮気か?」


「これはゲスってやつですね」


「二人ともやっぱり少し違うと思うよ?」


 その後ろにはケトやエル、サラが一緒に歩いていた。


 ここに来るまで特に怪我をした様子もなく、みんな楽しそうに笑っていた。


 普通なら妖怪に会った方がゾッとするだろう。


 だが、今の俺にとっては家族のような存在だからか、顔を見たらホッとした。


「俺は浮気していないからな? そもそもケトは浮気について調べた方がいいぞ?」


「エル、調べられる?」


「あっ、パソコンをお家に忘れてきちゃいました」


 エルとケトは浮気について気になっているようだ。


 そういえば、最近過去に放送されていた昔の昼ドラを釘付けになって見ていたな。


 ただ、今はそれどころではないだろう。


 震えていた謎のチンパンジーは少しずつ動けるようになっていた。


「おい、みんなで逃げるぞ!」


「なんで?」


 俺はシルの手を握るが首を傾げて俺の顔を見ていた。


「また呪えばいいしね」


「それなら凍らせた方が早く倒せますよ」


「サラなら水で窒息させることもできるよ」


 他の妖怪達も逃げる様子は全くなかった。


 我が家の妖怪達は肝が据わっているというのか、少しも動揺していない。


 それに発言がどれも物騒だ。


 まるであいつのことを知っているかのような……。


「あいつは友達なのか?」


「てき!」

「「「敵!」」」


 どうやら妖怪ではないらしい。


『キイイィィィ!』


 叫び声のような鳴き声が聞こえると、謎のチンパンジーは俺達に向かって走ってきた。


 どうやらケトの呪いが解けたようだ。


 呪いも時間経過で変化する仕組みなんだろうか。


「みんなは俺の後ろに――」


 俺はみんなを守ろうと咄嗟に前へ出るが、それよりも妖怪達の動きの方が速かった。


「オイラとあいつらを一緒にしないでよ! ふくも呪うよ? メンタルブレイク……」


『キィヤアアアアアアア!』


 謎のチンパンジーはその場で止まると何かに怯えるように叫びだす。


 自分の毛を掴み取り、急にむしり取っていた。


 明らかに普通のやつがする行動ではないのだろう。


 ケトを見るといつものように、俺をジーッと見ていた。


 ケトが再び呪ったのだろうか。


 毛の色が少しずつ薄くなっていくが、ケトに呪われないようにしないとな。


「サラは猿じゃないよ? ディープシープリズン……」


 サラの声とともに、深海のような真っ暗な水が毛がなくなったやつの全身を包み込む。


『キッ……』


 全く動けないのかその場でもがき苦しむこともできずに静かに溺れていく。


 呼吸は次第に苦しくなり、まるで絶望の中で命がゆっくりと奪われていくようだ。


「あんな野蛮なやつが友達だと思われたくないわよね? ゼロ・フロスト……」


 一瞬にして謎のチンパンジーを包んでいた真っ暗な水は一瞬にして凍った。


 さっきから小声で何かを言っているのが、全く聞こえない。


「ふくははんせいだよ?」


「へっ?」


 シルはポケットからたくさんの包丁を取り出すと、そのまま宙に浮いていた。


 パッと10本近く包丁があるだろう。


 あまりにも不気味な光景に息を呑む。


 シルはそのまま手を振り下ろすと、謎のチンパンジーに向かって包丁が飛んでいく。


 無数に突き刺さる包丁に凍っていた体にヒビが入っていく。


――パリン!


 音を立てて割れると同時に粉々になっていく。


 一体何が起きているのだろうか。


 金属パイプを折り曲げていた謎のチンパンジーが一瞬にして、粉々になって消えてしまった。


 我が家にいる妖怪達の方が明らかに不気味で恐ろしい。


 俺は再びやつらが妖怪なんだと再認識した。

「⭐︎評価、ブクマをしない人達は――」

「「呪うよ?」」

 シルとケトはニヤリと笑ってこっちを見ていた。


| |д・)ωΦ^ ) ジィー

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キッチンカーと巡る異世界グルメ ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~
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