45.ホテルマン、やつから逃げる
『キィー!』
後ろにいたはずの謎のチンパンジーの声が洞窟内に響く。
ひょっとして一体だけではないのだろうか。
ただただ、俺はあの場から離れることしかできない。
そのまま一本道を走ってきたから、時間が経ったらゆっくり戻れば問題ないだろう。
俺が帰ってこないと、シル達も心配するからな。
「あいつら心配するよな……? いや、ケトならオヤツ食べ放題って言ってそう」
堂々とオヤツを食べているケトの姿が目に浮かぶ。
意地でも我が家に帰らないといかんな。
俺はあいつから逃げるのを優先して、音を立てないように壁に手を触れながら歩いていく。
壁もどこかゴツゴツとしており、本当に洞窟なんだと思い知らされる。
そして、この洞窟はどこまで続いているのだろう。
隙間から漏れ出ている光を頼りに歩いているが、これが夜だったら最悪なことになっていたかもしれない。
真っ暗なまま歩き続けるって正直言って怖いからな。
光の元へ歩き続けると、急に目の前が明るくなる。
「うっ……」
あまりの眩しさに目を閉じる。
漏れ出ていると思っていた光は、壁や地面から発せられていた。
まるで電球のようなものが埋まっているのだろう。
ただ、これで地下だと思っていたところが、そうではないと覆されたってことになる。
本当にここはどこなんだろう。
「少し休憩するか……」
疲れた体を休めるため、陰になっているところにゆっくりと腰掛ける。
ちょうど姿を隠すことができるため、みつかりにくいだろう。
謎のチンパンジーが追いかけてくるかもしれないからな。
床に座ると近くにある光源に触れてみる。
「これって石なんだな」
地面が光っていると思っていたが、光は石から発せられていた。
見た目はどこから見ても、その辺に落ちている普通の石と変わりない。
光る石なんて世の中存在しているのだろうか。
以前矢吹に神隠しに遭っていたという話が頭によぎる。
これが神隠しってやつだろうか。
このまま家に帰れなかったら、また神隠しと言われそうだ。
バレないように光る石を遠ざけ、岩影を作っていく。
『キィー!』
鳴き声とともにやつが近づいてくる。
俺は小さく丸まり息を潜める。
石を退かしていた時に気づいたが、ここから先に道がなく、行き止まりになっていた。
まるで袋小路のような広間に俺はいた。
謎のチンパンジーは周囲をキョロキョロとしているが、中には入ってこようとしない。
ここだけ光っているのと何か関係があるのだろうか。
そのまま謎のチンパンジーがいなくなるのを隠れて待つことにした。
どれだけ隠れていたのだろうか。
遠くから声が聞こえてきた。
「ふくー!」
「オイラを置いてどこのネコに会いに行ったんだー?」
「それってこの間テレビでやっていた浮気ってやつじゃないかしら?」
「浮気!? そうやってオイラのことをポイって……」
「ケトさん、めんどくさいよ」
我が家の妖怪達の声が近づいてくる。
俺が穴の中に引きずりこまれて心配になって、助けにきたのだろう。
いつもなら面倒だと感じてしまうケトの性格が、今は少しホッとしてしまう。
だが、すぐ近くに謎のチンパンジーがまだいる。
あれから様子を伺っていたが、あいつは中に入ってくることはなかった。
俺はこのままここにいたら安全だが、シル達が近づくと危ないだろう。
「こっちに来るな!」
隠れるのをやめ、俺はその場で大きく叫ぶ。
「ふく!?」
「やっぱり浮気しているぞ!」
「きっとそうよ! 浮気しているのを隠すために、来ないように言っているのよ!」
「二人ともそれは違う気がするよ?」
少し誤解を招いているが、これで大丈夫だろう。
そう思った俺は再び岩陰に隠れようとしたが、謎のチンパンジーと目があってしまった。
やつも俺の存在に気づきニヤリと笑っている。
「ここにいれば問題はないはず」
『キィー!』
「えっ……ちょっ……」
俺は何を勘違いしていたのだろう。
謎のチンパンジーは普通に広間に入ってきた。
ただ、目を細めてこっちに近づいてきている。
単純に真っ暗な洞窟の中で、異様に光りを放つこの部屋が明るいから近寄らなかっただけだ。
俺は必死に逃げようとしたがすでに遅かった。
動きが速い謎のチンパンジーが俺の隣に立っていた。
「⭐︎評価、ブクマをしない人達は――」
「「呪うよ?」」
シルとケトはニヤリと笑ってこっちを見ていた。
| |д・)ωΦ^ ) ジィー




