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SS置き場

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SS3 スーパーお祖母さん大活躍する

「はぁ……はぁ……なんて体力なんだ……」

「若いのに体力が足りないぞ!」

『ウンドウシタホウガイイヨ?』


 お祖父さんと犬に体力の心配をされる若者なんてそうそういないだろう。

 散歩だと聞いていたが、実際は軽い登山のようだった。


「ふくは足が遅いからね」

「ケトが言うなよ!」


 首にマフラーのようにかかっているケトを放り投げる。


「……呪うよ?」


 ケトは途中から歩くのをやめて、俺をよじ登って休憩していたからな。

 首に錘を巻いたような感覚で疲労感は二倍だ。


「ポテトよ、ここからは話したらダメだぞ?」

『ジイチャンモニンチシャウダヨ!』


 家に入る前にお祖父さんとポテトはお互いに何かの確認をしていた。

 二人……いや、一人と一匹は熱く握手をしていた。

 きっと約束している決まりごとがあるのだろう。


「ただいま……」


 俺が家の中に入ると、ドタバタと足音が聞こえてきた。


「おかえり!」

「おきゃえり!」


 シルとドリちゃんが手を繋いでやってきた。

 本当の姉妹のように仲良くなったのだろう。

 ただ、家の中は静かで物音が聞こえない。


「直樹さんはどうしたの?」

「パパ、あっち!」

「つかれちゃったみたい!」


 部屋の中に入るとリビングのソファーで横になっている直樹さんがいた。

 テーブルの上には野菜がたくさん置いてあるから、畑に行ってきたのだろう。


「あらあら、勝手に借りてしまってすまないね」


 直樹さんの隣に座っていたお祖母さんが軽く頭を下げる。


「いえいえ、お疲れのようで」

「地下の畑でうさぎと追いかけっこして遊んでいたみたいよ」


 優しそうな顔でお祖母さんは直樹さんの顔を見ていた。

 孫を気にしているお祖母さんの姿に、俺は胸がポカポカしてくる。

 だけど、うさぎと追いかけっこって……まさかあの凶暴なうさぎと遊んだのだろうか。

 普段からお祖父さんやポテトと一緒に住んでいるだけのことはある。


「疲れているなら食事の前にお風呂に入ってもらおうかな……」


 俺は浴槽にお湯を張って、先にお風呂に入ってもらうことにした。

 散歩でお祖父さんとポテトも汗をかいているだろうしね。


「牛島さんはどこにいったの?」

「うっしーはとりにかえったよ!」

「ああ、材料が足りなかったのかな」


 俺が冷蔵庫の中を開けると、材料は何も入っていなかった。

 だから、シルたちは畑に行ってきたのだろう。

 お祖母さんと一緒に作ることになっても、材料がなければ何もできないからね。


「ふぁー、少し寝たら体が……あっ、おかえりなさい」

「ただいま帰りました」


 まだ少し眠いのか、直樹さんの目はトロンとしていた。

 そんな姿にお祖母さんはクスクスと笑っている。


「シルの面倒を見てもらってありがとうございます」

「こちらこそ助かりました。あのうさぎ……幸治さんよく生きてますね」

「あぁ……俺もよく死にかけてますよ」


 どうやら直樹さんも命懸けで逃げ回っていたのだろう。

 遊んでいたというよりも逃げていたに違いない。


「お風呂の準備ができているので入ってきてください」

「ありがとうございます」


 直樹さんはお祖父さんとポテトを呼びに行くと、そのまま浴室に向かって行った。

 ポテトの雄叫びのような声が聞こえてくるから、きっと露天風呂にびっくりしているのだろう。


「私は夕飯の準備をするわね」

「手伝いますよ」


 俺も一緒にキッチンに向かう。

 野菜ばかりの材料で何を作るのだろうか。


「うさぎの肉じゃがと野菜の天ぷらでいいかしら?」

「いいですね!」


 うさぎの肉じゃがとか作ろうと思ったこともない。

 野菜の天ぷらはシルが初めて会った時に作ってくれたけど、あれからは作ったこともないから久しぶりに食べる。


「まずはじゃがいもの準備ですね」


 俺はじゃがいもを洗って早速包丁を手に持った。


「ちょっと待ってね」

「はい……」


 やっぱり止められてしまった。

 いつも包丁で野菜の皮を剥こうとしたら、「手の皮を剥くのか」と牛島さんにも止められているからね。


「包丁をそんなに立てたら危ないわよ。じゃがいもに沿わせるだけで剥けるわ。初めは実がなくなっても気にせずにゆっくりやると上手になるわよ」


 後ろから優しく俺の手とじゃがいもを持って器用に皮を剥いていく。

 ずっと施設にいたから、こうやって親のように料理を教えてもらうのは初めてだった。

 牛島さんはどちらかといえば、危ないからと全てやってしまうタイプだからね。


「ほら、やってみて!」


 俺は言われた通りにじゃがいもに包丁を沿わせて皮を剥いていく。

 ゆっくりと丁寧に、ケガをしないように。

 ただ、それだけを考えてじゃがいも一つを剥き終えるのにも時間がかかってしまう。


「できたー!」

「ふふふ、上手にできましたね」


 少し歪な形にはなってしまったが、俺の中では綺麗に剥けた方だろう。

 ただ、チラッとお祖母さんの方に目を向けると、山のように皮が剥かれたじゃがいもがあった。

 直樹さんがスーパーお祖母さんというだけのことはある。

 それにすでにコンロの方では肉じゃがを作り始めていたからね。


「いやー、少し遅れて……おっ! 兄ちゃんがそれやったのか……?」


 材料を持ってきた牛島さんが帰ってきたようだ。

 牛島さんの視線は俺の手に持つじゃがいもを見ているようだ。


「見てください! 俺でもじゃがいも剥けましたよ」

「おお、よく頑張ったな」


 今までの俺を見たらこんな反応をしてもおかしくない。

 それぐらいじゃがいも綺麗に剥けているからな。


「せっかくだからそのじゃがいもは別の料理に使いましょうね」

「肉じゃがは……あっ、すみません」 


 俺がじゃがいもを持ってはしゃいでいたのもあり、お祖母さんはすでにじゃがいもを煮ていた。

 入れるタイミングがズレると、一つだけ固いのが残っちゃうから仕方ないだろう。


「じゃあ、天ぷらにでも――」

「もうお野菜も揚がっているわよ」

「えっ……」


 カウンターの上には野菜の天ぷらが積まれていた。

 直樹さんが言っていたのは本当だった。

 料理に慣れている牛島さんすら、驚くほどの速さで料理が完成していく。

 気づいた時にはテーブルの上には、どんどんと出来上がった料理が並んでいた。


「さすがですね……」

「伊達に主婦歴を重ねてないわよ。ほら、ポテトチップスもできたわよ」

「もうですか!?」


 どうやら俺のじゃがいもはポテトチップスになったようだ。

 動きに無駄が一切なく、俺と牛島さんは手伝うどころかただボーッと眺めることしかできなかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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