第九話 バイトするならシティーワーク
「…バイトするかぁ。」
ありがとうございましたという店主の声を聞き流しながら店の戸を閉める。
「勇者もバイトしなきゃ行けないなんて世知辛い世の中じゃのぉ。それじゃ、わしも研究に戻るとするわい。達者での。」
そう言うと、爺さんは大通りを北に進んでいった。
「あっやべ、寝床どーしよ」
勇者は公園を見つけると、バッグから寝袋を取り出す。そのまま勇者は木の下で寝袋に包まれる。勇者からホームレスに転職すべきだ。シンキーズたちも木に寄りかかり、眠ってしまった。
「ふぁぁぁぁ~…よく寝た。」
眠い目をこすりながら寝袋から目覚める勇者。ビルの間から太陽が覗いている。
シンキーズたちを木をペチペチして起こす勇者。そのままバッグからあるものを取り出す。
「テッテレー シティ~ワ~ク~」
どっかの猫型ロボットのような口調で取り出し、ページをめくっていく。もちろん最新版である。
「ん~、まーこれでいっか…あとは、」
困り顔の勇者が振り向くと、シンキーズたちが無邪気に遊具で遊んでいる。
あんなのでも出来るバイトといったらもう討伐バイトしかない。
討伐バイトは日払いな上に給料もまちまちで安定しない。
だがもう贅沢は言ってられない。
勇者はシンキーズたちを呼びつけると、電話をしながら街を進んでいく。そして大きなビルにたどり着く。
ここはアレイクエスト集会場。様々な討伐や雑用の依頼がここには揃っている。
依頼者はここに依頼を持ち込んで依頼料と手数料を支払い、受注者がクエストを達成することで依頼料を受け取れる形だ。
掲示板を吟味する勇者。あいつらでも出来そうな内容にしなくてはならない。後ろの方が騒がしいがいつものことだ。そう考えるとあの医者たちも内心なんだこいつって思っていたのだろう。
何とか決まったので受注しようとしたが、受付がどこにも見当たらない。仕方ないので近くの清掃のおばちゃんに聞く。
「あのー、受注したいんですが、受付が見当たらなくて。」
「あぁ、だったらあっちのタッチパネルから受注できるよ。」
「あっはい。ありがとうございます。」
早速タッチパネルから受注を進める。だが死ぬほど反応が悪い。
「こうなれば…っ!」
ゆうしゃは 北斗百烈拳をくりだした!
しかし こうかはないようだ!
「あんた、反応しないなら爪で押しな…」
爪で押したら一発でいった。周りの視線が今まで喰らった攻撃よりも痛い。
無事ではないが受注を終えた俺はシンキーズたちを送り出す。
はっきり言って心配しかない。
「さて…俺も行くか…」
久々に訪れた一人の時間は心地よいような物足りないような不思議な感覚だった。
しばらく歩くとたどり着いたのは居酒屋「アザース」であった。
「すみません、先ほど電話させていただいたタカヒラですが。」
「ほんとにすぐ来た…」
電話からものの一時間ほどで来た勇者に驚きつつも面接の準備をする店長。まだ昼前なので仕込みをしている段階である。
肉を串に刺す光景やつくねを茹でる光景など、普段では見られないような裏側を眺めながら待っていると、俺の名前が呼ばれた。
ドアを二回ノックする。
「どうぞ~」という店長の気さくな声が聞こえる。
ドアを両手で開き、「失礼します」と深々と頭を下げると、上手いこと背中を向けないよう何とかドアを閉める。
イスに座る前に会釈をし、腰掛ける。
「えっとまず、バイトの経験とかってある?」
定番の質問である。だが勇者タカヒラ、バイト経験などこれっぽっちもない。
「すみません、お恥ずかしながらバイト経験は一度もなく、こうして面接を受けるのも初めてなのです。」
ギクシャクした敬語で正直に話す。
「なるほどねー、じゃあ色々覚えていかなきゃいけない感じだね。」
「それじゃ次に、シフトはどのくらい入れそう?」
「はい、しばらくはこの街に滞在させていただく予定ですので、空いているシフトがあるのならいつでも入れます。」
はっきりいって今は金がとにかく必要だからシフト入れまくらないとヤバいのである。
「すごいやる気だね、てか滞在ってことは、どっかから出稼ぎに来てるの?」
「あぁ、自分はこう見えて勇者でして…ちょっと手違いでお金が底をついてしまい~…」
あいつらまじでどうしてくれようかと思いつつ話していく。
「勇者もバイトする時代とか世も末だね~。」
「…それじゃ最後の質問だけど、勇者に聞くのも野暮かもだけどさ、戦闘ってできる?」
「…はい?ここって居酒屋ですよね…?」
「そうなんだけどさ、ウチは魔物の肉も提供してるからさ、狩人が必要なんだよ。」
「そういうのって飲食店がやる仕事じゃなくないですか!?」
「だってそんな仲介業者ないんだもん」
てんちょうの 冷静なツッコミ!
「てk…そもそもですが、なんで魔物の肉そこまでして提供しようとおもったんですか?」
「いややっぱ話題作りって大事じゃん?おかげさまでウチもまあまあ繁盛してるし、別に狩人だけやらせるわけじゃないからさ!」
「まぁ…それなら…」
勇者は飲食店というものの凄さを改めて知った。
「それじゃ面接終わりにするね!言うまでもないけど合格だから、明日からシフト入ってくれる?」
「はい!もちろん入れます!」
「いきなり狩りの仕事で悪いけど、先輩に教わりながらやって欲しい!」
(まじかー…)
「了解です!」
嘘だろという感情が表に出ないよう精一杯笑顔で固定しながら答え、店を後にした。
なんかもう、構造は浮かぶのになんか書く気になれないってのが半年続きました本当にすみませんでした。
次回も頑張って書きます。来年までに出せたらいいな()