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第六話 ナルシストの流儀

「ほぉ…言うじゃねえか。でもな?上がお留守だぜ!」

先ほど壁を作る際、同時に作った五つの手を自身の回りへ振り下ろす。


辺りに土埃が舞い、次のクナイは狙いが逸れ隣の木へ刺さる。

そしてバカナルシは今、飛んでくるクナイを目で捉えた。いや、正確に言えばクナイの形をした空間が土埃を通過するところである。


「なるほどな、テメーの魔法はものを透明にするってとこだな。こんな一瞬で見破られちまっていいのかよ?」


「洞察力に優れた人間だな…だが気をつけた方がいいんじゃあないか?透明になるということは、もう既にお前の後ろにいるかも知れないぞ?」

背中に深くクナイが刺さる。


「ジャンボリー・パンチ・ファスト…っ!」

一瞬で拳を生成し背後へと放つ。だが手応えは無い。

「へっ、そんなクナイばっか投げる地味な攻撃じゃ戦いも盛り上がんねえな。俺みたいに派手にやれよっ!」

土で作った拳を自身の周囲へと放つ。しかし依然として手応えが無い。


「ふむ。貴様のいうとおりだな。戦いはやはり楽しまなくてはならん。」

土煙の中から何か明るいものが足下に落ちてきた。それは今にも辺りを光で満たそうとする丸い爆弾であった。


「ちょっ…マジかよっ!」

咄嗟に作った拳で爆弾を弾き飛ばし、逃げようとする。だが爆風をもろに背中に受け吹き飛ばされる。

幸い草むらに着地したお陰で叩きつけられなかったが、背中からは大量の血が流れる。


「くっそ、このままじゃジリ貧だ。…俺が今取るべき最善策!逃走だぁぁぁ!」

足がぐるぐるになりそうなスピードで逃げていく。背中の痛みはこの際感じなかった。


逃げる背後から、ヤツが追ってくる音がする。俺の狙いはこれだ。どんなにヤツが上手く姿を隠せたとて、こちらを追う際は少なからず気配を晒さなければならない。


「どうした?お前の強みは隠れることじゃなかったのか?そんな気配ダダ漏れじゃ狙ってくださいって言ってるようなもんだぜ!」

木の葉の音が鳴る。

逃走しながら密かに作っていた拳を、その方向に向け全力でぶっ放す。


「やっ…ただろ流石に!」

「残念ながら、答えはNOだな」

左足へとクナイが刺さる。


「これでもう無駄な逃走はしなくて済むだろう。お前の頭の回転力は見事だったが、最後まで俺の方が上だったわけだ。」


斜めに食い込んだクナイを抜き、足を引きずり、木に寄りかかりながら逃げようとする。


「無駄な足掻きをするな。傷は深い。大人しくしていれば楽に死ねるぞ。」


それでもバカナルシは足を止めない。クナイを手や背中に食らっても、それを抜きながら歩き続ける。

だが三分ぐらいして限界がきた。俺は地面に倒れ込む。

「ようやく倒れたか。その粘り強さは評価してやろう。」


「ありがとな、粘り強さだけが俺の取り柄何でな。

…そしてそのお陰で、お前をぶちのめせるぜ!」


「!?」

「ジャンボリー・パンチ!」

バカナルシの周囲の木々が次々に倒れだす。

「俺がなぜ逃げ回ってたかお前に分かるか?!俺はぐっとぐるぐると回りながら、拳に木を掴ませていった!そしてお前はまんまと渦の中心までやってきた!これで終わりだぜ!」


「きっ、さまぁぁぁ!」


土煙の中に、誰かが倒れ込んでいる。バカナルシは杖を構えながらそいつへ近づく。

そいつは黒い忍者の服に黒パーカーを羽織った黒髪の男であった。


「見事だな。」

「あんたも俺ほどじゃないが流石の敵だったぜ。名残惜しいが、お別れだ。」


「…だが、やはり俺の方が上だ。俺はいつでも、お前の上だ。」

上を見ると、空高くから落ちてきたであろう火のついた爆弾が落ちてくる。


「ちっ…またかよっ!ジャンボリー・パンチ!」

爆弾を拳で覆い込み、爆風を打ち消してダメージを最小限に抑えた。


だがヤツは既に遠くまで逃げている。

「今回は貴様の勝ちにしてやる!次会ったときを楽しみにしているぞ!」



「残念ながら、次はねえぜ!」

背後から轟音が聞こえる。だが後ろを振り返っても何も見えない。いや、何かがうっすらと見える。

「バカな、透明の攻撃だと!?」


ヤツは見えない攻撃に押しつぶされる。

「空気は目に見えねえ、透明でやられたら、透明でやり返すのが筋ってもんだろ?最後はかっこよく決めるのが俺の流儀なんでな!」


「この…俺が…こんなあっさり…負けるなど…断じて……ありえ…ない………」

男はそう言うと、力なく地面へ倒れ伏した。


それを見たバカナルシは、荒い息づかいのまま、倒れた木に寄りかかり眠ってしまった。



その頃、1号は遠くから聞こえてきた木々の倒れる音に耳を傾ける暇は無かった。

「あっちはずいぶん派手にやってるっすな~。

ま、こっちもこっちでたのしむんだけどな~。」

1号は先ほど竜に放ったものよりも一回り大きい火の玉の幻想を放つ。それは実体化し、回りの木々を燃やしながら敵へと向かう。


「早速派手に来るっすな~。こっちも負けないっす![メーリ・ゴランド]!」



「ふぅむ、あの竜だけで終われば良かったんじゃがの。勇者?動けるか?」

「動けなくても動かなきゃ死ぬだろ…」

勇者は右腕を抑えながら立ち上がり、上を見上げる。そこには漆黒の竜と、もう一つ何かが空中で止まっている。


「勇者…であってるのかなこいつが。まあとりあえず…君を殺せって命令だからさ。」


「わしももう年なんじゃがな…仕方ない。

老眼鏡が割れん程度にはやってやろう。」

爺さんが老眼鏡をかけると、彼は研究者から一人の戦士へと変わった。

ご視聴ありがとうごさいました(っ´ω`c)

今回から後書きに[勇者の魔物ート]を書いていきます。


~勇者の魔物ート~

ジェネ・ドンシー 

[使用魔法]フォー・スリースリー(投げた物を透明にする魔法)


忍者のような服装に、黒いパーカーを羽織った姿をしている。パーカーはフード付きのものをあえて被らないのが彼流のオシャレらしい。最近左手が疼くらしく、眼帯の購入を検討しているらしい。


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