第二話 変な役立たずとすごい役立たず
「急にキレるやんこいつ…」
門番たちは困惑している!
「俺だって好きで連れてんじゃねえよぉ!」
勇者は子どもが駄々をこねるようにわめく。
「わ、分かった。なら何者か名乗ってくれ。」
勇者は落ち着きを取り戻し、息を整えながら答える。
「俺は勇者タカヒラだ。そしてこいつらは…」
言葉に詰まった。なぜなら正直に魔族のシンキーズですと答えようものなら自分もろともぶっ倒されるからだ。
勇者タカヒラは早速鬼門を迎えた。
「えーっと、魔族使いと…戦士とぉ……後は、盾使い…です」
勇者は最後の一つが思いつかなかったので、とりあえず盾使いと答えた。
「そ、そんな見た目してるのに本当か?まさか嘘をついていることはあるまいな?」
勇者は焦って後ろのシンキーズたちにそれっぽい動きをしろと囁く。
シンキーズたちは一生懸命杖で魔法を打ってるジェスチャーやシャドーボクシング、盾を構えてるような動きでごまかす。
彼らでもまずい状況だというのは分かるらしい。
「な?こいつらは正真正銘俺の仲間だよ。だから通してくれません?」
目が泳いで声が上ずりながら懇願する。
「いや、だったら杖とか盾とか買ってやれよかわいそすぎるだろ」
門番Aはツッコんだ!
「ま、まあこいつらまだ見習いなんでね?街に着いたら買ってやるって話してたんですよ?」
門番たちは心配そうだが、別に危険そうではないと判断し、彼らを街へと招き入れた。
街へ入ると、すぐに美しい海を望める大通りへと出た。それを堪能する暇もなく周りがガヤガヤする。
当たり前だ。勇者と一緒にこんな変なのが入ってきたら誰だってそうなる。
恥ずかしいので下を俯きながら、まっすぐ船着き場へと向かう。視界の端でシンキーズたちが暴れているのが見える。
そして彼らは料金を払い、やっと冒険の始まりを迎えた。船に乗り込んだ勇者はイスに腰掛けるとようやく一息ついた。間もなくして船内アナウンスが流れる。
「本日はシズーム号にご乗船くださいまして、誠にありがとうごさいます。当船は間もなく出航いたします。」
アナウンスが終わると同時に、ポーという警笛が鳴り、船がゆっくりと動き出す。
そして気づけばあのシンキーズたちがいない。
勇者はやっと解放されたと潮風を感じながら思う。上の展望デッキの辺りがガヤガヤしているが見たくもない。
船の波の音が勇者を心地よく眠りへと誘う。
そして目を閉じた瞬間、警笛が鳴り響く。
そして展望デッキの方が先ほどよりもガヤガヤし、悲鳴も聞こえる。勇者は嫌な感情を抑えながら駆け上がる。
そこで見えたのは慌てふためく動きをするシンキーズ…
そして巨大なタコの形をした魔物であった。
船の横に現れたその魔物は、高速で動いているはずの船へとにじり寄ってくる。
「おいシンキーズども!お前ら呪い殺せるんだろ!あいつ呪ってみろよ!」
勇者がそう言うと、シンキーズたちは全力で首を横に振る。
役立たずどもと思っていると、タコの魔物は巨大な足を高く上げ、今にもこの船を叩き潰そうとしていた。
その時、
「ジャンボリー・パンチ!MAX!」
その声と共に、タコの真上には巨大な拳の形をした海水の塊ができ、その拳はタコの魔物へと直撃し、大きな波と共に沈んでいった。
「あれ?俺なんかやっちゃいました?」
声の聞こえた後ろへ振り向くと、そこにはあの魔法を使ったであろう、オレンジ髪のいかにもナルシストそうな男が立っていた。
その男に話しかけようと思ったが、辺りが影に覆われる。振り向くと、そこにあったのはさっきの戦いで起こった大波である。
「ちょっと待って、まじでなんかやっちゃ」
ナルシスト男が言い終わる前に、勇者一行は船ごと波に巻き込まれた。
ご視聴ありがとうごさいました!(っ´ω`c)
次回も頑張って作って参ります!
最近暑くなって来ましたね、熱中症対策していきましょう(;゜д゜)アチィ