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第一話 冒険の始まり…かっこよく決めたかったのになんだこいつ

 ここはタヤマニの街、他の大陸へと繋がる大客船の発着する、潮風香る大きな港街である。


 橙のレンガ調の石造りの建物の数々は壮大な冒険の始まりを思わせ、これまで数々の勇者たちが魔王を討ち取るためここから旅立ち、そして散っていった。


―そして、そんな街に新たな勇者が訪れようとしていた―


「また勇者か、どうせ無駄だってのに王もよく送るよ。俺らの税金を無駄にすんなっての。」勇者が乗るという話を聞いた船員たちは口々に文句を言う。

 やがて港への大通りがざわめき、船員たちはまたかという侮蔑の目を向ける。

 

 そこにいたのは木の剣を携えた険しい顔の勇者…と後ろでチューチュートレインをする全身が黒に覆われ、白い画面を被った異質というより場違いな雰囲気を放つ謎の生物。

 船員たちは皆あんぐりした表情で固まり、思考が追いつかない。


 謎の生物たちはボックスやナルト走りをしながらちょこまかと勇者の周りでキモく暴れながら船の前までやってきた。


船員は戸惑いながらもマニュアル通りに話す。 「え、っと、料金をいただきます」

 勇者は下を俯きつつ50Gを手渡す。


船員はすかさず問う。

「あの、後ろの三、人?がたは」

「えーっと、魔法使いと戦士と盾使いです」

船員の困惑は加速する。こんなのが勇者の仲間とは到底信じられない。


勇者はそわそわと落ち着かない様子だ。

「あっすいません…料金あと150Gですね。」

 勇者は財布をひっくり返し、残りの150Gを取り出し手渡す。

こんな冒険の始まりになるはずじゃ…勇者はため息をつきながら過去を振り返る。


~オオリコトの森~

「はぁ~、結局二つ返事で受けちゃったけど帰りてえよぉ~、家でゴロゴロしててぇよ~」


 弱音をマシンガンのように吐きまくりながら、巨木に覆われ、舗装もまともにされていない道を進んでいく。


 夏真っ只中だが、森の中は木の影に覆われ、薄気味の悪い肌寒さを感じる。


 そんな森を進んでいくと周りよりもより暗く濃い影の落ちた草陰がざわざわと揺れていた。


「何だ?もしかして何かかっこいい動物とか?やっぱ旅には相棒が必須だもんな!なんかどっかの昔話でも動物と鬼倒してたし!」


 楽観的な考えで母親から貰った非常食の魚肉ソーセージを手に持ち、甘い猫なで声で呼びかけながら近づいていく。


 枯れ葉を踏む音と共に、草陰からは動物とは言い難い黒い三体の謎の生物が飛び出してきた。


 彼らは勇者を取り囲み、不思議な、キモい舞をしている。勇者は状況が飲み込めないが、自分が襲われそうになっていることだけは把握し、王様から渡された心許ない木の剣で黒い生物に斬りかかる。


 だがその攻撃は、まるでそれが蜃気楼であるかのようにすり抜け、木の枝に足を引っかけ転んでしまう。


 膝を擦り剝き、ヒリヒリとした痛みを感じる。土まみれになった顔を起こすと、カバンから転げ落ちた魔物についての本があった。

 タカヒラは敵と戦うならまず敵を知らねばと悠長に調べ始めた。


シンキーズ [使用魔法] 不明

黒い姿に白い仮面をつけた姿をした人型の生物。獲物を見つけるとその周りで舞を踊り、対象を呪い殺す。まだ分かっていないことが多いが、魔法や剣などの攻撃が通らず、聖剣でしか払うことが出来ないとされている。


「…聖剣って確かオカフク大陸の果てにあるとされるすっごい剣だよね。

 …はぁ!?それでしか倒せないとかバカか!んなもん持ってるわけねえよ!てか呪い殺すの?俺の冒険ここで終わりとかやだ!まだポナンの最新話みてないのにぃ~!」

 

 騒ぐ勇者を、気づけば既に無慈悲にも舞いながら囲んでいたシンキーズ。

死を確信するとこんなにも時間の流れは遅くなるのか、勇者は死までの時間を果てしなく長く感じた。

 

 …勇者の体感では1秒が永遠に感じていた。そしてその永遠がずっと繰り返されている。いつまで経っても呪い殺される気配がない。心なしかシンキーズたちには困惑と疲れが見える。


「あのー、大丈夫ですか?疲れてそうだし休んだ方がいいんじゃ」

それを聞くと、シンキーズたちは木に寄りかかり息を整えている。

それを見た勇者は冷静に思考を行う。そして自分は今死にかけたと気づき、一目散に逃げ出した。


 気づくと森を抜け、目的地の港町タヤマニが見えていた。美しい海を見て一息つき、歩き出そうとすると肩を後ろから叩かれたような感覚がした。

 

 勇者が後ろを振り返ると、目の前に広がるとは一面の白と吸い込まれるような黒い穴のような目であった。

勇者は声にならない声を上げるが、既に気づけば囲まれている。


…今度こそ死を確信した。

 頭には薄っぺらい走馬灯が流れ、自分の駄目さを嫌というほど思い知らされる。

 だが、またしても死なない。

「おかしいな。確かにあの本には呪い殺すって…」


 とにかく自分は死なないということがはっきりと分かり、彼らを無視して歩き始めた。

 これで諦めてくれればと思い、魚肉ソーセージを床に置き、その場を後にする。

 だが、彼らは執拗に勇者に踊ったり組体操をしたりしてアピールする。


 最初の頃はいちいち反応していたが、途中から面倒くさくなってきた。自然と早足になり、早くどっか行けと思いながら無視して進む。

 

 そうしていると、港街タヤマニに着いた。

門番は彼らを見るや否や、槍を構えこちらへ問いかける。

「貴様ら!何者だ!特に後ろの黒い変な奴ら!」


   勇者はありったけの声量で答えた。


     「こっちが聞きてえよ!」

ご視聴ありがとうごさいました!(っ´ω`c)

次回作も頑張って作って参ります。

投稿は不定期になりそうです。申し訳ありません。(-ω-;)

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