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ある雪の日に

半分ほど書き上げていますので、9月中完結を目指します。

 しんしんと雪が降る。昼頃から降り出した雪は夕方になるとその勢いを増し、周囲を白く染めていった。普段は浮浪者やゴロツキが闊歩するこの貧民街でも、今日はさすがに人っ子一人いない。静かに天から落ちてくる花は、汚く澱んだ裏道を白いベールで覆い隠し出している。


「だいぶ積もってきたな。」


 男は今日の依頼を終えたばかりだった。やっと案件が片付いたと思ったら、この天気である。とっととずらかろう、と思っていたそのとき、常人よりも優れた聴覚を持つ男の耳に、微かな物音が届いた。


「ん…?」



 音は木箱が乱雑に積み上げられた一画からする。どうせ猫だろ、と思いつつも気になって近づいた男が目にしたのは、


「赤ん坊…!?」


 おくるみに包まれた赤ん坊だった。弱々しく動く赤ん坊は、このままだと確実に命を落とすに違いない。しかし、ここではこんなこと日常茶飯事、強い者しか生き残れない。踵を返そうとしたその時、


 パチリ


 暗闇に濃紺の煌めきが、輝いた。意外と力強く、だが庇護を求めるようなその瞳を、男は一瞬惚けたように見つめた。貧民街で育ち、山ほど人を殺めてきた男だ。当然、一時の情に流されるような人間ではない。しかし、なぜだかその時男は「この子を置き去りにはできない」と運命を感じたのだ。こんなこと、後にも先にもこの時だけだった、とのちに男は語っている。

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