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一緒にお茶はいかがですか?

ついに彼女が登場です!


 マナーレッスンしたり、魔法で野菜作ったり工作したりしたらあっという間に2カ月・・・ついに、本日お茶会です!


 くそっ、恨めしいまでに晴天とかいじめか!?澄み切った快晴の空がお茶会日和すぎるわ!!あぁ〜胃がキリキリする・・・。

 というか今日の為にって新しい服を仕立ててくれたメリー達には大変申し訳ないけど、正装って本当に動きづらい!!いやまだ女の人のドレスよりかは遥かにマシなんだろうけど!

 みんな良く平気な顔して着てるよ、慣れてるんだろうな。俺も慣れなきゃいけないのか・・・。



「オルステッド殿下、お顔が強張っておりますが大丈夫ですか?緊張しております?」

「メリー・・・。うん、だって知らない人とたくさん会って話さなきゃだし・・・マナーも、失敗したらって思うと、こわくて・・・」

「まぁ・・・大丈夫ですわ殿下、今日まで頑張ってこられたではありませんか。今も所作がとても美しいですよ。ですからそのままに、普段通りにしていれば良いのです。それに・・・」

「それに?」

「お兄様方がご一緒ですし、私もずっとお側におりますから、ね?」


 にっこり笑って手を握ってくれるメリーが女神に見える。

 普段は体は5歳で精神は18歳な俺だけど、今は体も精神も5歳児な状態かもしれん。不安で仕方ない中でメリーの存在がマジで安心する、ありがとう!

 そうだよな、俺1人じゃないんだ。大丈夫、やれる!!





●●●


●●






 ・・・な〜んて、思ってた時もありました。


「・・・ぎもぢ、わるい・・・」

「オルステッド殿下、大丈夫ですか!?レモン水をお持ちしました!!さぁ、どうぞ」

「うぅ・・・ありがと、メリー・・・」


 しっかり冷やされたレモン水が体と心に染み渡る。


 うん、やっぱり無理でした!

 人酔いでダウンでございます!


 今日茶会に招かれているのは俺たち兄弟を除いて20組。

 基本的に招待客が1人で来るなんて事は有り得なくて、家族や婚約者、更に付き人っていう風に複数人でやって来る。だから茶会の会場である庭園に大体100人くらい集まった訳で。


 そのほぼ全員が大人!たまに子どももいるけど大体が年上!!つまり、自分よりでっかい人間が100人!!

 どこを見ても大きい人達の群れ、群れ!群れ!!


 ルーカス兄上もジークもすごいな。隣で見てたけど全然余裕そうだった。まぁジークは婚約者が来てたからそれもあって張り切ってたんだろうけど。

 俺は無理でしたよ。いやもう・・・やばかったよ、人の圧が。



 そんな訳でひと通りの挨拶が終わって、数組ほど話をして、ギブアップ。

 ただいま庭園の隅にあるガゼボに避難中なのであった。


「申し訳ありません、私がもう少し早くに休憩をとお声かけすべきでした。あぁこんなにもお顔色が白くなって・・・」

「大丈夫だよ。人混みになれなくて、ちょっと気持ち悪くなっちゃっただけだから」


 メリーがオロオロと心配してるけど、実際本当にちょっと酔ったのと人見知りで気疲れしちゃっただけ。

 実は俺が怖いと思っていた1番の理由が思ったより少なかったから、精神的なダメージはあんまりないんだ。



 1番怖いと思っていたのは、みんなが俺をどういう目で見てくるのかってところ。



 超有能な王妃を死なせた原因である俺。

 母さんが育てた優秀な人達のおかげで国は大丈夫だと、ルーカス兄上は言っていたけど・・・。それでも内政も外交も行なっていたという母さんが抜けた穴はとてつもなくデカい筈だ。親父は本気で無能みたいだし。



 だからーー・・・怨まれている、かもしれない。



 そう思って、敵意を向けられるのを覚悟して茶会に来たんだけど。意外な事にそういう視線は少なかった。

 むしろ多かったのは親父から厄介払いとして離宮に放置されてるのを憐れむ視線かな。

 あと何人かに


『放置された環境下でありながらこんな立派に育ってぇぇぇぇ!!』


って感じで泣かれた。特に今回の茶会全体を警護してくれている騎士団の人達に多かった気がする。

 多分母さんの生徒さん達かな?

 母さんって本当に慕われてたんだなぁ、しみじみ。


「オルステッド殿下、この後どうされますか?ひと通りのご挨拶は済ませましたし。今ならご退出されても大丈夫ですよ?」

「ん〜、そうだなぁ。あとちょっと休んだらもう少しだけ参加して帰るよ。兄上達にプレゼント渡せてないし」

「承知いたしました。ですが、どうかご無理はなさらないでくださいね?」

「は〜い」



 10分ほど庭園の見事な薔薇を眺めてから、俺は茶会に参加し直そうと戻る。


 だけどその途中で



「ーー・・・うぅっ・・・ヒック・・・」



小さな泣き声が聞こえた。


「オルステッド殿下?」

「メリー、だれか泣いてる」


 そう言って俺は泣き声に導かれるように庭園をフラついて・・・割とすぐに声の主を見つけた。


「お嬢さん、大丈夫ですか?」

「えっ!?!」


 俺の呼びかけにびっくりして振り向いたのは長い黒髪と銀色の瞳が美しい美少女だった。

 茶会での挨拶で見た子だ。大人は多くて全く覚えられなかったけど、子どもは大体覚えている。何だかんだで少なかったしね、この子のように同世代は特に。

 で、この子の名前は確か・・・。



「リディアナ嬢、ですよね?ガーディア侯爵家の」


 怖がらせないように、にっこり笑って訊ねると一瞬ぽかんとしてから女の子ーリディアナーは慌てて立ち上がって淑女の礼を取った。


「お、オルステッドでんか!?このようなおはずかしところをおみせして、もうしわけございません!」

「えぇ!?だ、大丈夫ですよ!気にしないで楽にして!!」

「で、ですが・・・」


 まだ子どもらしい辿々しい声と仕草で、淑女らしく、お行儀良くしている感じがすごく可愛い。頑張ってるんだなぁ。

 多分、俺も周りからこんな感じで見られてたから一部でめっちゃ微笑ましいって感じの視線もらってたんだろうなぁ。


 ま、それは置いといて。

 それよりも今はリディアナ嬢だ。

 泣いていた理由は多分手に持ってる物。小さい子あるあるだけど、多分コレ、俺がどうにか出来ると思うんだよね。


 本当は兄上達のいる方に戻らなきゃなんだけど、子どもを泣かせたままでいるのは絶対に嫌だな。

 なら、俺がやる事は一つだ!!


 そう決めた俺はまだちょっとオロオロ涙目のリディアナ嬢に今日1番と言えるほど気合を入れた動作で手を差し伸べる。



「リディアナ嬢、良ければ僕と一緒にお茶はいかがですか?」





ここまで読んでくださってありがとうございます。

誤字脱字ありましたら、知らせていただけると大変助かります。


少しでも面白いと思っていただけたら↓から評価、感想コメントなどをいただけると嬉しいです。

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